ハリウッドスターの一人であるニコラス・ケイジは、1995年~2011年の収入が1億5,000万ドルに上ったという。
1ドル110円として約166億円だ。当時、ハリウッドでもトップレベルのギャラが支払われる俳優だった。
しかし、最近までほとんどスクリーンで彼の姿を見ることはなかった。それは破産寸前だったためだ。
なにが彼の人生を狂わせたのだろうか?
ニコラス・ケイジ のデビュー作
ニコラス・ケイジ(英: Nicolas Cage, 1964年1月7日ー )は、俳優であると同時に、映画監督、映画製作も手掛けている。
カリフォルニア州ロングビーチで、イタリア系の父とドイツ系の母親との間に生まれたが「ケイジ」の名は芸名であり、本名は「ニコラス・キム・コッポラ」。コッポラ姓はイタリア系の父のものだ。
親日家でもあり、日本語学校に通っていた経験があるため、日本語もある程度話せる。そのため、映画でもしばしば披露する他、来日時には日本語で挨拶することもあった。
1981年にニコラス・コッポラとして『初体験/リッジモント・ハイ』でデビュー。その後、現在の芸名に変更した。芸名の「ケイジ」の由来はマーベル・コミック社のコミック「パワーマン」の主人公ルーク・ケイジから取っている。
ハリウッドの頂点へ
※アルカトラズ刑務所
彼の名を一躍有名にしたのは、1995年公開の『リービング・ラスベガス』だった。脚本家であったアルコール依存症の男をリアルに演じ、アカデミー主演男優賞を受賞。オスカー受賞後は、芸術的な映画に留まらず、大作映画にも積極的に出演するようになる。
日本での知名度が高まったのもこの頃だ。
『ザ・ロック』では、テロに巻き込まれながらも戦う博士を、『コン・エアー』では、正義感が強い囚人を、そして『フェイス/オフ』ではジョン・トラボルタとのW主演により、正義と悪という一人二役を演じ、実力派俳優としての地位を確立した。
その後も様々な話題作に出演したが、まるでカメレオンのように、自然にその役柄と同化する演技はさらに磨かれていった。そして、映画1本のギャラが約15億円といわれるようになったのである。
浪費癖が仇になる
しかし、彼のプライベートは順風満帆というわけにはいかなかった。
結婚と離婚を繰り返し、時には泥酔して逮捕されたこともある。何より問題なのは、彼が「浪費家」であり「コレクター」だということだった。
もともと車好きで、フェラーリの現行車種を全車種(限定車のエンツォ等含む)所有したり、イランのモハンマド・レザー・パフラヴィー元国王が所有していたランボルギーニを所有していたこともある。この趣味と関係があるのだろう、アンジェリーナ・ジョリーの出世作にもなった『60セカンズ』では、カーマニアの窃盗犯を演じている。
その他にも、古城、高級車、恐竜の化石や骨、コミックコレクションなどを派手に購入していた。アメリカンコミック好きでも知られ、自身の芸名は元より、息子のカル=エルにまでアメコミキャラクターの名を付けるほどである(カル=エルはスーパーマンの本名)。
彼のコミックコレクションをオークションにかけた際に出品された400品目の中には、『アクションコミック』1号や『ウィズコミック』1号、『ディテクティブコミック』38号、『オールスターコミック』3号等のレアアイテムが目白押しで、総落札額は160万ドルに達した。
さらに豪邸を何軒も所有するなど、いささか、いや「かなり」浪費が酷かった。
これがニコラスの人生を狂わせる。その浪費癖から財政難になってしまったのである。
膨らむ債務
浪費癖により、2009年8月には200万ドル(日本円で約1億8000万円)の債務不履行で銀行から訴えられているほか、2007年と2008年分の未納分税金や延滞分利子および罰金などで630万ドル(約5億6700万円)を滞納していることが明らかになった。
また、ニコラスは元ビジネス・マネージャーのサミュエル・レビンの不適格なアドバイスが財政難の原因と釈明し、彼を相手取って2000万ドル(約18億円)の訴訟をおこしたが示談が成立している。
このように多額の債務を抱えていたため、契約していたロールス・ロイスのリース料も払えなくなり、これも契約違反でリース会社から合計24万2000ドル(約2180万円)の損害賠償を求める訴えを起こされた。
結局は所有していた複数の豪邸や車のコレクションも手放さざるを得なくなったという
。100億円以上も稼ぎながら、あらゆるものを手放さなくなったということは、上記以外にも様々な負債があったと思われる。
叔父は破産までしていた!
※フランシス・フォード・コッポラ
興味深いことに、彼の叔父も今までに財政難に直面している。
映画好きにはよく知られていることだが、ニコラス・ケイジの叔父こそ、『ゴッドファーザー』や『地獄の黙示録』で有名な映画監督フランシス・フォード・コッポラである。
若いニコラスは、オーディションを受けるたびに、叔父のことを話に出されるのが嫌で、コッポラを名乗らなくなった。
しかし、フランシスの債務も凄い。彼は1980~90年代のたった8年間に3度もの自己破産を申し立てている。その大きな原因となったのは、映画『One From The Heart』(1982年)の失敗だ。制作費2700万ドルに対して、400万ドルしか興行収入がなかった。1992年の3度目の破産では、負債は9800万ドルに膨れ上がっていた。
最近では娘ソフィア・コッポラ監督の『The Bling Ring』(2013年)の製作総指揮を務めたほか、2010年にカリフォルニア州ナパバレーにオープンしたワイナリーの経営で、大きな利益を手にしている。
ニコラスとは債務の内容は全く違うが、いつ人気が落ちるか分からない俳優の仕事でも浪費を続けたニコラスと、破産しながらも映画を取り続けたフランシス。ギャンブラーな性格は血筋なのかもしれない。
最後に
しかし、2017年1月に公開された『パシフィック・ウォー』では、主演として久々にスクリーンのセンターにカムバックを果たした。それ以前にもアメリカでは映画出演はあったものの、今回のような大作はおよそ10年ぶりになる。
そのため破産の危機は免れたようだが、今後は質素な生活をしてほしいものだ。
ニコラス・ケイジの出演作はたくさんあるような気がしますが…
借金を返すために数えきれないほど多くの映画に出演なさっていると思っていたのですが、違うのでしょうか…