日本のアニメがヒットを連発するようになったのは最近のことです。
特に2016年公開の「君の名は。」は、「秒速5センチメートル」など繊細な作風が特徴の新海誠監督の名を日本中に広めました。それまでも新海監督の作品は海外でも評価が高く、「サマーウォーズ」などで有名な細田守監督と共に、次世代を担うアニメ映画監督として注目されてきましたが、あくまで「アニメ業界」という枠の中での話です。
国民規模での知名度と人気という点では、「宮崎駿監督」「スタジオ・ジブリ」というとても大きな壁がありましたから。
では、なぜ今になって日本のアニメはヒットを連発するようになったのでしょうか?
アニメ だけはヒット連発!
「メガヒットが生まれない時代」だと言われるようになって何年も経ちます。
CDの売り上げもネット配信が主流になり、いわゆる「ミリオンセラー」が生まれることはありません。そのような中で、大人向けの劇場版アニメは着実にヒットを生み続けています。
ここ数年を調べただけでも、2011年には「けいおん!」が興行収入19億円、2013年には「魔法少女まどか☆マギカ」が約21億円、2015年には「ガールス&パンツァー」が24億円、「ラブライブ!」が28億円と驚きの数字ですね。
ちなみに2014年の邦画興行収入ランキングトップ10では、2位の「STAND BY ME ドラえもん」の83億円を始め、5作品がアニメ映画でした。もっとも、「ドラえもん」や「名探偵コナン」などはキッズ向けジャンルですから、ヒットして当たり前という要素があります。でも「けいおん!」などは、アニメファンである大人向けにテレビで放送されていた作品ばかりです。
アニメは儲かるの?
アニメ映画の世界は長いことスタジオ・ジブリの独壇場でした。大人も子供と一緒に楽しめたり、子供の頃に観た映画を大人になってまた見返したり、まるでディズニー映画のようです。
でも、スタジオ・ジブリ、特に宮崎駿監督作品の公開は数年間隔なので「ヒットの連発」にはなりません。さらに宮崎監督が突然、長編映画からの引退を宣言しました。そこに世代交代とばかりに公開されたのが「君の名は。」だったわけです。
そのあまりの人気ぶりに「なぜアニメ映画がヒットしているのか?」という考察が多く観られるようになりました。でも、そのほとんどがカルチャーや娯楽という面からのアプローチばかりです。
私が気になったのは「ビジネスとしてアニメ映画は儲かるの?」という疑問でした。だって、多くのアニメは深夜に放送されていて、視聴率だって低いはずだし、アニメを作るスタッフのお給料はとても低いと聞いてましたから。
不快感のないストーリー
そこで2016年からヒットしているアニメ映画を調べてみました。
「君の名は。」の興行収入248億円がトップなのはもちろん、「この世界の片隅に」、「聲の形」、「ソードアート・オンライン」など20億円を超えるヒット作ばかりです。どれも「ドラえもん」や「名探偵コナン」のようにメジャーな作品ではなく、完全オリジナルかコアなアニメファン向けの「最初は知名度が低い」作品ばかりでした。
こうしたヒット作の内容を見てみると「不快感がない」「安心して楽しめる」という共通点があります。「この世界の片隅に」はちょっと悲しいお話ではありますが不快感はありません。そして、どの作品も「アニメなのに共感できるキャラクター」と「アニメだからこそ表現できる世界観」を持っています。でも、このくらいの考察は他でもしているでしょう。
そして、ここからが私が調べた「ヒット連発の理由」です。
SNSが人気を後押し!
SNSの普及でアニメの情報も多く目にするようになりました。Twitterのハッシュタグでもアニメ関連のものが上位にあったりと、もう大人がアニメの話をしても恥ずかしくない時代になっているわけです。話題にしやすい、と言い換えてもいいでしょう。それは学生も同じです。例えばクラスメイトが日常的な会話の中にアニメを取り上げているのも珍しくありません。
さらにSNSなら公開初日から「この映画は面白い!」という情報をリアルタイムで拡散してくれます。つまり「良い作品を作っても埋もれてしまう」状況から「良い作品を作ればヒットさせることができる」という構図に変化したわけです。
それまでの深夜アニメの映画化は、ファンが本放送終了後にBDやDVDなどを購入して、その売り上げが映画化に繋がるかどうかの指標になっていました。だから、いくら人気のある作品を映画化したくても「テレビからすぐに劇場版へ!」というわけにはいきません。ましてや、テレビ放送もしていないオリジナル作品ならなおさらです。
それが、一度映画を観てもらって面白いと思ってもらえれば、あとは一過性ではない口コミを発信し続けてくれるような環境になったということです。
これが新しいビジネススタイル!
理由はSNSの普及だけではありません。
動画サイトで手軽に観れるPVが増えたことも大きいでしょう。映画を観て面白いと思った人がSNSで情報を発信し、それに興味を持った人が動画で内容をすぐに確認できるようになったわけです。そこで、さらに「面白そう!」と感じた人が実際に映画を見てSNSで発信する。
こうした循環が新しいビジネススタイルを確立したということです。
また、映画館など企業側の努力により、条件付で料金が安くなったというのもあります。レイトショーやモーニングショーはもちろん、auユーザーでスマートパスというサービスに加入していれば、毎週月曜日はTOHOシネマズでの料金が大人1,100円となっています。どれも、正規料金の半額に近い金額ですから「それだけ安いなら観ようかな」と思うわけです。
まとめ
一部のビッグコンテンツを除き、今までのアニメ映画とは制作者にとっては賭けみたいなものでした。でも、今の業界は制作者が作品をヒットに導けるようになりました。新しい風が吹き始めたわけです。
それが「良い作品を作ればヒットする」という新しいビジネスモデルの確立です。あらかじめヒットを予測できれば、多少制作費が高くてもクォリティーが向上してより多くの観客を呼べるという循環も生まれるということ。これからは、ニッチだった作品が映画になることがもっと増えるでしょう。
皆さんも、トレンドに乗り遅れないためにはSNSだけでなく、動画も合わせてシッカリと情報を集めてくださいね!
関連記事:映画
「全財産を失ったニコラス・ケイジの素顔【血は争えない!?】」
この記事へのコメントはありません。