ミリタリー

シークレットサービス 【大統領を守る特別捜査官】服装、年収は?

シークレットサービス

アメリカ合衆国の歴代大統領の隣には、いつも彼らの姿があった。

ビジネススーツに黒いサングラス、無線用イヤホンを着用し、いざとなれば大統領の盾ともなる存在。

アメリカ合衆国シークレットサービスである。

しかし、設立当初の彼らの任務は要人警護ではなかった。創設から2001年まで財務省の傘下にあった彼らの仕事とはどのようなものなのだろうか?

警護・警備はやはり重要任務

現在のシークレットサービスの任務として広く知られているのは大統領を中心とした要人警護である。

アメリカ合衆国正副大統領とその一家、次期大統領候補者とその配偶者、過去10年以内の大統領経験者の警護などが重要な任務といえる。

シークレットサービス

しかし、その他にも訪米中の各国元首や高官などの要人警護、外国で特別任務を行う公式代表者の警護など、その守備範囲は広い。
さらに警護についての管理業務もある。つまり、大統領がワシントンを離れるときは訪問先の自治体、地元警察、軍などとスケジュールやプランの調整をして、協力を求めるのも彼らの仕事なのだ。

もちろん、エアフォースワン(大統領専用旅客機)内でも彼らは任務を行う。場合によってはメディアの人間も同乗するため気を抜けない。

特別捜査官のファッション事情

シークレットサービスのイメージといえば先述したようにダークなビジネススーツが基本だが、サングラスをかけるのにも意味がある。

警護の任務にとって重要なのは「事件から対象者を守ること」ではなく「未然に防ぐこと」なのだ。そのため彼らは目立たず、しかし威圧感を与える服装でなくてはならない。それが、スーツとサングラスというわけだ。しかも、サングラスを着用していれば、周囲からどこを見ているのか判別できない。群衆の中に怪しい動きをする者を発見しても、相手に気付かれずに監視できる。

シークレットサービス

しかし、これは式典など観衆の集まる行事の場合で、実際にはTPOに応じて服装は変えている。大統領の行動に合わせて、パーティーにはタキシード、スポーツにはジーンズやスポーツウェアなどその場所に溶け込める服装を選ぶのだ。

どこまで本気か?意外な任務

シークレットサービスは、大統領と共に行動するような直接的な任務ばかりではない。大統領は彼らに対してあらゆる任務を命じる権利があるからだ。

ビル・クリントンが大統領だったとき、彼の日課はジョギングだった。シークレットサービスにとって、それまではいざというときのために待機するのが職務だったが、このときばかりは銃と無線を持ったまま、大統領と一緒に最長3~4マイル(5~6.5キロ)走らなければならなくなった。もちろん、ジョギングの後も職務は続くので体力勝負である。

シークレットサービス

次のジョージ・W・ブッシュ大統領はジョギング走者ではなく、本格的なランナーだった。

1マイル当たり6分のペースで通常3マイル走るため、大統領と一緒に走れる護衛官はクリントン大統領のときよりもさらに少なくなった。幸いにもブッシュ大統領は公共の場を走ることがなかったため、警護が楽だったが過酷な職務には違いない。

その他にも歴代大統領の中には、「無くしたブーツを探せ」「都合の悪い写真を撮られないように守れ」「愛人との密会があるから、妻を近づけさせるな」などなど、別の意味で過酷な命令もあったのだ。

制服もある?!意外な部署

1930年にシークレットサービスへ統合される形で誕生した制服部隊は、儀礼服と呼ばれる警察官のような服装をしている。

制服部隊の職務は、ホワイトハウス一帯・副大統領官邸・財務省(ホワイトハウスの敷地内の部署)・ワシントンD.C.内の在外公館の安全を担っており、大統領に同行することはない。

シークレットサービス
※制服部隊に演説するオバマ大統領

しかし、カウンタースナイパー(対狙撃ライフル部隊)の支援部隊や、爆発物探知犬部隊、金属探知機による検査を行うなどその任務は幅広い。

現在のシークレットサービスは、アメリカ合衆国国土安全保障省の下位組織として、6500人以上が大統領とホワイトハウスを守っている。

シークレットサービスの年収

気になる年収だが、2017年あたりは給与と残業合わせて上限が年間16万ドルだったが、同年18万7000ドルへと上限が引き上げる法案が協議されている。

日本円で言えば、少なくとも1500万円以上の年収となる。ただし残業過多で厳しい状況であるようだ。

アメリカ初の国内諜報機関

では、最後にシークレットサービスの創設秘話に迫ってみよう。

1865年7月5日、財務省に「Secret Service Division(秘密捜査部)」が誕生する。これはアメリカで初めての国内諜報機関であり、その任務も特殊なものだった。
時代は南北戦争の終わり、通貨偽造の横行に対する防諜・捜査機関として創設されたのである。

1901年、マッキンリー大統領が無政府主義者による狙撃により暗殺、その後は副大統領であったセオドア・ルーズベルトが大統領となった。アメリカでは大統領が在職中に死亡した場合や職務を遂行できない場合には、自動的に副大統領がその職を継ぐことになっている。


※マッキンリー大統領暗殺事件

マッキンリー大統領暗殺事件後、連邦議会は大統領の身辺警護の問題に取り組んだ。

1901年秋には非公式だが、シークレットサービスに大統領の身辺警護を行うよう求め、1906年には議会が正式にシークレットサービスを「大統領の身辺警護に当たる機関」として承認された。
このことにより、シークレットサービスは財務省の職員でありながら、大統領の警護を専門とする組織となったのである。

最後に

シークレットサービスが現役で働けるのは4~5年と言われている。
24時間睡眠なしで食事はとらず、夜中でも雨に打たれながら数時間で外に待ち続けることもある。
家族と記念日を祝うことも出来ないほど多忙な仕事などだ。そのために肉体的に燃え尽きてしまう。

しかし、退職した彼らは後悔したことはないという。それほど誇りのある仕事に就けるというのは羨ましい。

 

gunny

投稿者の記事一覧

gunny(ガニー)です。こちらでは主に歴史、軍事などについて調べています。その他、アニメ・ホビー・サブカルなど趣味だけなら幅広く活動中です。フリーでライティングを行っていますのでよろしくお願いします。
Twitter→@gunny_2017

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. プリンス・エドワード島の魅力 「カナダで一番美しい島 赤毛のアン…
  2. 第一次世界大戦とは何かについて調べてみた
  3. 【イタリア観光】永遠の愛が生き続けるジュリエットの家
  4. イランの最大の脅威はイスラエルではない?政権が本当に恐れる存在と…
  5. 【世界で最も悲しい写真】オマイラ・サンチェスの悲劇「人災が招いた…
  6. 加熱不足のベーコンが原因か? 男性の脳にブタの寄生虫が見つかる
  7. 『天国にいちばん近い島』 ~ニューカレドニアの魅力
  8. 北朝鮮の建国の歴史 【金日成 ソ連の生み出した怪物】

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

【自殺か暗殺か?】オーストリア帝国の皇太子ルドルフの儚い生涯「うたかたの恋」

その美しさと悲劇的な最期で知られるオーストリア帝国の皇后エリザベートは、夫フランツ・ヨーゼフ1世との…

【関ヶ原の戦い】名将・大谷吉継の首はどこにいったのか?「唯一自害した大名」

1600年の「関ヶ原の戦い」は、天下分け目の戦いとして知られている。一般的には徳川家…

宇宙の果て について調べてみた 「470億光年離れた場所?」

宇宙の果てはどうなっているのか?それは、人間誰しもが一度は考えることだ。どうなっているのか?…

日本の夏は昔と比べてどれくらい暑くなったのか? 【1875年以降の気温をグラフ化してみた】

近年温暖化が進んでいると言われています。それが本当かどうかはともかく、最近の日本の夏…

日本の探査機「ムーンスナイパー」が月面着陸に成功 「電力供給の問題とは」

日本の探査機「ムーンスナイパー」が月面着陸に成功したが、電力供給の問題が発生している。…

アーカイブ

人気記事(日間)

人気記事(週間)

人気記事(月間)

人気記事(全期間)

PAGE TOP