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人間の光と闇を突き詰めた「北欧サスペンス」の面白さ 【※オススメ3選】

ひとつの事件にまつわる謎を紐解ながら真相解明に迫るサスペンスドラマは、衝撃の展開と事件解決までの人間模様が見所でもある。

事件に使用されたトリックの謎を推理する要素が強く描かれたものはサスペンスドラマではなく、『ミステリードラマ』と分類されるが、そこに恐怖感や緊張感の描写が存在するのであれば、全てサスペンスドラマと位置付けられている。

北欧サスペンス

警察の車 Pixabay

日本だけでなく、海外で制作されたサスペンスドラマを好きな時に視聴できる昨今は、人間の心理戦を忠実に描いた「北欧サスペンス」というジャンルに注目が集まっている。

コメディー要素が全く描かれることもなく、ドラマの登場人物全員が終始、心痛な面持ちで謎に満ちたストーリーを進めていく流れも、新しいサスペンスドラマのスタイルといえる。

ダークな演出と舞台設定にこだわる「北欧サスペンス」の趣旨について考える

海外ドラマを配信するコンテンツの普及により、世界各国のコンテンツを好きな時間に楽しむ日常が習慣化している人々も多いだろう。

「北欧サスペンス」の存在も配信コンテンツでの放送を切っ掛けに、知名度が広がった。

日本において数々の「北欧サスペンス」を視聴し続けている人なら、北欧独特の演出や特徴について幾つかの共通点に気づいているかと思う。

特に「北欧サスペンス」で印象強いと感じる点は、薄暗い映像の演出だ。もちろん、北欧諸国の美しい風景を場面の切り替えシーンに使用する場合もあるが、事件に関わる登場人物が抱える葛藤や疑惑、苦悩、裏切りを表現するために薄暗い映像を演出する「北欧サスペンス」が圧倒的に多い。

次に注目する点が、ひとつの事件が起こる場所の設定だ。

「北欧サスペンス」では、小さな村や島といった生活する人々も限られてくる狭い空間を、事件の舞台と設定する特徴がある。それは、子供や両親の長期休暇を利用して参加するサマースクール(サマーキャンプ)であったり、離島に所有した別荘で一定期間、家族で過ごすといった北欧の文化や生活習慣がドラマに反映されているからだ。

北欧サスペンス

また、長い年月が経過した未解決事件を主題とする「北欧サスペンス」では、現在から過去の自分自身に戻る人々の心境を、訪れる場所ごとに応じて変化させる特徴がある。

村や島に訪れたことで巻き起こる不穏な再会、事件発生当時から同じ場所に住み続ける人々の秘密、奇妙な人間関係といった過去の事件に結び付く真実や、忘れかけていた記憶を蘇らせる要素として村や島は、ドラマの趣旨に活かしやすい場所とも取れる。

人間の心理描写が謎を深めていく「北欧サスペンス」

人間誰もが内面に秘めている嫉妬、怒り、歪んだ正義を根底に描く「北欧サスペンス」では、事件解決に奔走する主人公として、刑事の他に心理学に特化したプロファイラー(犯罪心理分析官)を登場させる傾向がある。

ドラマの回を増すごとに、事件の真相に関わる登場人物も増えていくため、微に揺らぐ人間の心理や、そこに渦巻く人間模様を引き出すには、プロファイラーの見解が必要となるからだ。

北欧サスペンス

事件が解決に至るまでに、短いケースで全3話、長いケースで全10話と作品によっては長期戦となる「北欧サスペンス」は、真犯人との長期的な心理戦をゆっくりと描くことで、ドラマ全体の緊迫感を視聴者に届けているのである。

予め、ドラマの冒頭部分で真犯人を視聴者に公開し、真犯人の正体に辿り着くまでの過程を描くプロファイラー目線の「北欧サスペンス」も人気が高い。

オススメ北欧サスペンスドラマ

・『凍てつく楽園』

スウェーデンのリゾート地を舞台に巻き起こる難事件を捜査する大人気シリーズ
https://www.wowow.co.jp/release/005731

・『ダークネス:ゾウス・フー・キル』

デンマークの少年犯罪に挑む刑事とプロファイラーの活躍を描いたドラマ
https://www.wowow.co.jp/detail/116880/004/01

・『チェスナットマン』

事件解決の手掛かりとなる小さな人形『チェスナットマン』を巡り、翻弄される人々の姿を描いたデンマーク発のサスペンスドラマ
https://www.netflix.com/jp/title/81039388

人間の光と闇を突き詰めた「北欧サスペンス」の面白さ

「北欧サスペンス」は、事件解決という結末を迎えても尚、事件に関わった登場人物たちが沈鬱な表情のまま幕を閉じることが多いため、言葉にならない余韻が視聴者側に強く残る瞬間も多々ある。それは、事件を解決する側の細かい心理状態までもを「北欧サスペンス」の要素に取り入れているからこそ、感じることだ。

刑事やプロファイラーという立場を離れ、過去の痛みを克服できない苦悩や、思わず犯人に同情してしまう想いなど、一人の人間としての心情が垣間見れる部分が、やり場のない切なさと悲しみを演出し、人間が抱える『光と闇』の部分を強調させている。そんな「北欧サスペンス」で描かれる複雑な人間の心情は、時には正義を貫き、時には悪に対して目を瞑る結果を招くことに繋がっていくが、そこもまた視聴者の予想を上回る展開が待ち受けている面白さでもある。

「北欧サスペンス」が、ダークで独特な雰囲気を放ち続けるのも、『人間の中に生まれた歪んだ正義は、最期の時まで冷淡な現実と向き合い続けることに値する。』という北欧の思想と、『感情のみで決断を下す人間の心理』という二つの矛盾が入り混じる内容が色濃く描かれる特徴があるからだと思う。

その矛盾点が深く描かれている内容ほど、返って視聴者は感情移入しやすく、「北欧サスペンス」の魅力に心を奪われていくのである。

 

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草の実堂編集部 新井弘樹

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草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子

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