海外

台湾外国人労働者の現状 「約72万人の海外労働者」

外国人労働者の直面する問題

台湾では2020年3月の調査によると、71.9万人の外国人労働者が働いている。
前回の記事でも述べたように、インドネシア、フィリピン、ベトナム、タイからの外国人労働者が多い。

職種は介護、工業、漁業など様々である。コロナの制限が緩和され自由に行き来できる様になると、ますます外国人労働者が増加すると見込まれている。

少子高齢化で人手不足が叫ばれている中、外国人労働者の需要は増えていくばかりだ。

それと同時に外国人労働者が増えれば、様々な問題が発生するのも必至である。

今回は、雇い主から見た問題と、外国人労働者から見た問題について紹介する。

雇い主からみた問題

台湾外国人労働者の現状
筆者の知人は今年91歳になる。ご主人は7年前に脳梗塞になり、ほぼ寝たきりである。
夫婦揃って91歳である。奥さんはしっかりしていて歩行は少し困難であるが元気である。しかし家事をするのは困難なため外国人労働者を雇う必要がある。

申請のためには、政府と仲介業者とのやりとりが必要だ。

友人の家にはもともと外国人介護者がいたのだが、急に帰国してしまった。契約として3年間のサインをしているが、家族が病気で帰国してしまったのである。契約があるからといって外国人を強制的に引き止めれば人権問題となってしまうので、仕方なく帰国させたという次第である。

とはいえ、91歳の老夫婦だけでの生活は難しい。幸い友人にはしっかりとした息子がいたため、外国人介護者がいない間もなんとか乗り切れた。

それに加えてコロナ禍である。別の知人は台湾人のヘルパーさんを活用しながらなんとか半年間を乗り切った。その期間は本当に大変だったようだ。
仲介業者もよく選ばないと、外国人労働者と結託して詐欺を働くそうである。
友人はフィリピン人を希望しており「フィリピン人以外は雇いたくない」とまで言っていた。それには理由があるそうだ。

インドネシア人はイスラム教なので豚肉を食べない。料理をするのに不便が多いのである。

ベトナム人は台湾の文化に馴染みやすいという。それならベトナム人が良いのではないかと思うが、馴染むのが早い分、賢く副業を始めてしまうそうだ。もちろん何人がどうとか一概には言えないが、そういう傾向があるという。

高齢化が進む台湾社会において、外国人介護者はもはや必須な存在である。しかし仲介者とやり取りをしても、雇い主は外国人を選ぶことはできない。家に実際に家に来るまで、どんな人が来るのか分からないという。

仲介業者と結託していた場合「クレームを入れれば帰国させる」と半ば脅される例もあるという。

このように、文化の違いや悪質な仲介業者などの問題がまだまだあるようだ。

外国人労働者からみた問題

台湾外国人労働者の現状

●言語と文化の違いに適応できない

台湾を訪れる外国人労働者の中には、人生で始めて外国へ行くという人もいれば、台湾という国さえ知らなかった外国人もいるそうだ。

台湾政府は彼らの言語習得のために中国語講座を用意しているが、まだまだサポートは十分といえない状況のようである。

介護従事者は高齢者を相手にするわけだが、高齢者は中国語(いわゆる北京語)が話せない人もいる。閩南語や原住民の言葉を話す高齢者もおり、コミュニケーションを取るのがそもそも難しい。

高齢者に痴呆などの症状がある場合は、さらに難しくなる。

途中で投げ出して帰国する外国人も多いそうだ。

●外国人労働者の保障や人権の確保

政府は雇い主に対して、外国人労働者の安全や保障、休暇などの福利について一定のレベルで保証するよう求めている。外国人労働者は台湾経済にとってなくてはならない存在であり、広い視野で見ると彼らの存在は台湾の発展に必要不可欠である。

外国人労働者はそれぞれの事情を抱えて台湾へやってくる。幼い子供を本国に残して出稼ぎにやってくる人もいる。ある母親は1歳の子供を本国に残し出稼ぎにやってきた。しかし仕事の契約を終えて国に帰ると、子供は彼女を母親として認識しなかったという。

外国人労働者については、台湾以外でも世界各国で社会問題となっている。

雇い主にとって雇いやすく、労働者にとっても働きやすい、そうした環境作りが世界的に必要な時代となってきている。

関連記事 : 台湾の外国人労働者について解説 「高齢化社会で福祉施設での海外労働者雇用」

 

アバター

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. アジアの女性人生ドラマが支持され続ける理由 「東京タラレバ娘、3…
  2. 【2500人の多重人格】で父の虐待から生き延びたジェニ・ヘインズ…
  3. 人皮装丁本 ~人間の皮で作られた本が世界で100冊以上存在する …
  4. ロシア帝国の歴史とロマノフ朝について調べてみた
  5. 【北朝鮮】金正恩体制におけるカネと権力について調べてみた
  6. 中国の貧富の差について調べてみた 「近代の中国経済発展」
  7. 【王国・帝国・公国】国の呼び方の違いの意味を調べてみた
  8. 【無音の音楽】「4分33秒」の作曲家・ジョン・ケージについて調べ…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

【曹操vs袁紹】天下分け目の官渡の戦い

後漢の方向性を決定付けた 官渡の戦い三国志で赤壁の戦いとともに有名なのが官渡の戦い(かん…

『夜の営みの回数を日記に記録』 小林一茶の絶倫すぎる夫婦生活

近年、晩婚化が進んだことで、40歳、50歳を超えて結婚する人も珍しくなくなってきました。最近では…

【魔術の女王】美人奇術師・松旭斉天勝 ~客を狂わせた「流し目」の魔力

魔術の女王・松旭斉天勝とは明治、大正、昭和と三つの時代を通じて「魔術の女王」と称された女…

「君が代」を最初に作曲したのはイギリス人だった

「君が代」は日本人なら誰もが一度は歌ったことがあるだろう、日本の国歌である。作詞者名…

アイオワ級戦艦【アメリカ海軍史上最大にして最後の高速戦艦】

空母機動部隊との随伴アイオワ級戦艦は、アメリカ海軍の歴史上最大にして最後に就役した戦艦で…

アーカイブ

PAGE TOP