台湾の原住民
台湾には現在16族の原住民が住んでいて、その総数は約58万人となっている。
参考記事 : 台湾にも原住民がいた 【政府認定16民族】
https://kusanomido.com/study/overseas/56641/
彼らは台湾全土に広がっており、中には東南アジアをルーツに持つ民族も存在する。
それぞれの民族には独自の言語や文化があり、食文化も日本とは違った珍しいものが多く、とても興味深い。
筆者が台湾に在住していた時、近所にアミ族の奥さんが住んでいた。
ある日、筆者の家に大きなネズミがキッチンの網戸を破って侵入してきた。
筆者はその時2階にいて、1階の大きな物音で気がついた。ネズミはキッチンにあったクッキーをたらふく食べて動きが少し遅くなっており、食器棚の後ろに潜んでいた。
筆者は恐怖に怯えてガクガクしていた。自分ではどうしようもなかった筆者は、アミ族の奥さんに電話をかけてみた。
すると奥さんは「すぐに行く!」と言って来てくれたのである。
奥さんは、食器棚の隅からちょろっと出ているネズミのシッポの長さを見て「田んぼによくいる田鼠だわ」と教えてくれた。
田鼠は、日本でいうとドブネズミくらいのサイズである。
その後、アミ族の奥さんは衝撃的な言葉を発した。
「ゴム手袋はない?私、掴めるから!」
思わず私は、
「いやいや!掴まなくていい!追い出してくれるだけでいいから」
と返答した。
しかし奥さんはゴム手袋をつけた手で、ネズミを余裕の表情で掴んだのだ。
掴み方もとても小慣れていて、ネズミの背中部分の皮をギュッと持って身動きできないようにしていた。
ネズミの目が飛び出るほどギュッと持って、そのまま外の溝に投げ捨てたのである。
後になって聞いてみると、アミ族はその巨大ネズミを食べる習慣があるという。
小さい頃は田んぼで捕まえるのが日常だったというのだ。
飛鼠,田鼠
アミ族についてはこんな言葉がある。
「阿美族人取了天上的飛機,路上的車子,水裡的潛艇不吃,其他基本上會被吃掉」
訳すと
「アミ族は空を飛ぶ飛行機、道を走る車、水の中の潜水艦は食べない。それ以外のものはなんでも食べる。」
とにかく色々食べるという。
前述した田鼠は、しょうがやバジルをしっかりと効かせて料理する。そして砂糖と醤油でしっかり煮込む。
保存食として乾燥させて、食料がない時期に少しずつ食べるのである。
燻製も作る。
ネズミのお腹を開いて内臓を処理する。そして頭を大きな包丁で叩きつぶして、砂糖を塗って醤油と調味料で味を調整する。
それから木炭で燻製にするといった工程である。
飛鼠も食べるという。
飛鼠にはいくつか意味があり、モモンガを指す場合もあるが、アミ族が食べるのは「巨大コウモリ」のことである。
このコウモリは、私たちが想像するサイズよりかなり大型だ。
コロナ関連の報道でも、コウモリを食べたことで感染したというものがあった。その真偽は定かではないが、アミ族の人たちは昔から日常的に食べていた。
もちろん中毒を避けるために、しっかり加熱したり塩漬けにして殺菌している。
現在では食べる人が少なくなったというが、食べ方は田鼠と大差ない調理方法となっている。
かなり珍しい食べ方もある。
コウモリの腸を生で塩をつけて食べるのである。これは胃腸の健康を保つために良いという。
なぜならこのコウモリは、地上に降りてくることはなく木の上の柔らかい葉っぱしか食べないので、腸の中に悪い成分がないという。
人体に害を及ぼすものはないという認識だ。
とは言え、生の腸は深い緑色をしていて写真を見るとなんともグロテスクな感じである。
アミ族以外の民族にもコウモリを食べる習慣がある。
台湾の原住民たちの間では、コウモリの小腸の中に存在する特定の菌や酵素が、人の消化を助ける効果があることが知られているようだ。この特殊な成分は、胃腸の調子を整えるのに役立つと言われている。
驚くべきことに、実際に現在に至るまで、コウモリを食べた人々が胃腸の不調を訴えたという記録はないという。これは、コウモリの消化に関与する菌や酵素が、人の体内でも同様に効果を発揮している可能性を示唆しているのだろう。
コウモリを食べる際には、その他の部位も無駄にされることはない。
「コウモリのしっぽ」は丁寧に処理され、乾燥させられた後、綺麗に仕上げられ、なんとマフラーとして使用されるのだ。
こうした風習は一部の地域に限られているものの、中国や台湾などの一部の地域では今でも残っている。
筆者も中国、台湾と在住して色々と変わったものを食べてきたが、コウモリやネズミは今でもさすがに抵抗がある。
それでも、地域によって異なる食文化や習慣が存在することを理解し、尊重する必要があるだろう。
コウモリは食べません。オオアカムササビと台湾モモンガです。