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台湾に座礁するクジラやイルカたち 「2022年には144頭もの鯨やイルカが座礁」

台湾と鯨

筆者が在住している台湾は、豊かな海に囲まれた島国である。
様々な生態系を観察することができて大変興味深い。

台湾の最南に位置する屏東県のケンティンという場所には国立海洋生物博物館がある。
筆者は最近、国立海洋生物博物館が主催したイベントに参加した。

国立海洋生物博物館は台湾の海域の生態や歴史を研究しており、その知識を広め、環境保護を訴える活動を精力的に行なっている。

今回の展覧会では、海洋生物の化石が展示されていた。同時に、鯨と台湾の関わりについて歴史を通して学ぶことができる内容だった。

台湾に座礁するクジラやイルカたち

画像 : 台湾での捕鯨の様子

台湾は日本統治時代に捕鯨を行っており、そのノウハウや道具などは全て日本人が伝えたという。

現在では、環境問題や生態系保護の観点から捕鯨は行われていない。

座礁する鯨たち

台湾海洋保育署の調査によると、2022年には台湾で144頭もの鯨やイルカが座礁し、その中の多くが命を落としてしまったという。

座礁したものの中には、絶滅危惧種に認定されているスナメリ(背びれを持たない小型のイルカ)もいた。

画像 : スナメリ wiki c ori2uru

日本でも時折りニュースになるが、座礁した鯨やイルカが発見されると元の生態区域に戻すために多くの人が尽力する。だが、そのほとんどは失敗に終わる。

なぜなら、彼らには元々かなり精巧なナビ機能がついており、本来人の手を必要としない。

座礁する鯨やイルカたちは、多くの場合病気や怪我を負った個体たちであり、体のナビ機能を正確に使えなくなったことから座礁している。
つまり、人間の手で元の生態区域に戻したとしても、結局また座礁してしまうのである。

その他、環境破壊などによる生態系の変化なども原因の一つと考えられている。

台湾では、座礁した鯨やイルカを発見した場合、118(台湾国内電話)にかけると、専門家がすぐに駆けつける仕組みになっている。

座礁した鯨やイルカから学べること

118に通報があった鯨やイルカの多くは病気や怪我をしているが、彼らの状態から、海洋の環境変化や汚染状態を知ることができるという。
また、残念なことにすでに死んでしまった個体からも、多くの情報を得ることができる。

座礁した鯨やイルカは政府の機関や海洋博物館で解剖され、その標本は博物館などに寄贈されて多くの人に公開される。

2020年、台湾の台東に一頭の鯨が打ち上げられた。発見されて118に通報があった時、すでに死んでいた。

専門家の調査の結果、この個体は「シロナガスクジラ」であることがわかった。

台湾に座礁するクジラやイルカたち

画像 : 打ち上げられたシロナガスクジラ

シロナガスクジラは、世界で最も大きな動物である。

大きな個体は30メートルを超え、その体重は180トンもの重さになるという。
この時、打ち上げられた個体も20メートルを超える大きさであった。

調べてみると、個体の顎の下部に「太いナイロン製の縄」がかかっていた。
この個体は縄のせいで口を上手に開けることができず、正常な食事ができなくなってしまったことから、次第に弱って死んでしまったということが分かった。

DNA鑑定の結果、この個体はとても若く、死後数ヶ月経過しており、海面を長い間漂流した後に台東の砂浜に打ち上げられたことも判明した。

そのため、主な筋肉は漂っていた期間に微生物や小さな魚たちによって分解されて残っていなかった。通常、彼らの皮膚の下には水温の差から体を守るために分厚い脂肪があるのだが、この個体の脂肪はとても薄くなっていた。

この個体の標本は、ケンティンの国立海洋生物博物館にて展示される運びとなった。
この個体の貴重な情報は一般にも知られることとなり、海洋生物の保護や研究に寄与することが期待される。

座礁した鯨やイルカの姿を見るといたたまれない気持ちになるが、彼らの生態や調査の重要性が広く認識されることは、未来の海洋生態系の保護につながるだろう。

 

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草の実堂編集部

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草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

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