国際情勢

イスラエル・イラン衝突が呼ぶ“世界危機” ~米中の出方が命運を握る

2025年6月13日以降、イスラエルとイラン間の軍事衝突が急速にエスカレートしている。

イスラエル軍は、イランの核関連施設や軍事拠点を標的に大規模な空爆を実施し、イラン革命防衛隊の高官を殺害した。

これに対し、イランは報復としてドローンや弾道ミサイルでイスラエルを攻撃し、双方の応酬が続いている。
この状況は中東地域全体の不安定化を招き、国際社会に深刻な懸念をもたらしている。

特に、トランプ政権の強いイスラエル支持と、イランが米軍基地を攻撃した場合のリスクが、大規模な戦争を引き起こす可能性を高めている。

さらに、中国がこの混乱を台湾への軍事侵攻の好機と捉える恐れがあり、地政学的リスクが複雑に絡み合っている。

米国が関与することになれば、中東で大戦争のリスク

画像 : イスラエルのネタニヤフ首相 CC BY-SA 3.0

イスラエルによる攻撃は、イランの核開発計画に対する「先制攻撃」として位置付けられている。

イスラエル軍は戦闘機を動員し、ウラン濃縮施設や弾道ミサイル拠点を攻撃した。
イランの最高指導者は報復継続を宣言し、テルアビブ近郊などで死傷者が発生するなど、対立は一層激化している。

この衝突は、2023年10月のハマスによる奇襲以降、イスラエルがイランをハマスやヒズボラの背後勢力と見なし、その軍事能力の削減を進めてきた流れの中で起きた。
過去の直接衝突は単発的だったが、今回の規模と継続性は異なり、全面衝突のリスクが高まっている。

トランプ政権はイスラエルへの強い支持を明確にしている。
米国はイランが発射したミサイルの迎撃支援を行い、軍事的な関与を深めている。

しかし、イランが報復として湾岸諸国の米軍基地を攻撃した場合、米国は直接的な戦争に巻き込まれる可能性がある。

これは中東全域を巻き込む、大規模戦争に発展するリスクを孕む。
イラン関連の組織が過去に米軍関連施設を攻撃した実績があり、今回の衝突がエスカレートすれば、同様の行動に出る可能性は否定できない。

米国がイスラエルを支持し続ける限り、イランとの直接対決は避けられないシナリオとなり、石油施設への攻撃やホルムズ海峡の封鎖など、エネルギー市場や国際経済に深刻な影響を及ぼす事態が予想される。

米国の関与で、中国が台湾侵攻を進める恐れ

画像 : イラン最高指導者ハメネイ氏 CC BY 4.0

一方、この中東の混乱は、中国にとって台湾への軍事侵攻を進める好機と映る可能性がある。

米国が中東での戦争にリソースを割かれ、アジア太平洋地域への対応能力が低下すれば、中国は台湾海峡での軍事行動を加速させるかもしれない。

中国は近年、台湾周辺での軍事演習を強化しており、2025年にはさらなる緊張の高まりが予想される。
中東での紛争が米国の関与を長期化させれば、中国は台湾への圧力を強め、軍事侵攻を現実的な選択肢として検討する可能性があるだろう。

これはアジア太平洋地域の安全保障に深刻な影響を及ぼし、米中間の直接対決を引き起こすリスクを高める。

国際社会は、イスラエルとイランの衝突拡大を抑えるため、自制を求める声を強めている。
しかし、双方の強硬な姿勢とトランプ政権の明確なイスラエル支持により、外交的解決は困難を極めている。
さらに、中国がこの状況を地政学的な機会と捉えれば、複数の地域での同時多発的な危機が起こるかもしれない。

中東での戦争リスクとアジアでの緊張の高まりは、国際秩序に未曾有の試練をもたらすだろう。

今後、米国の戦略的対応と国際社会の調停努力が、事態の収束に向けた鍵となる。

文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部

アバター

エックスレバン

投稿者の記事一覧

国際社会の現在や歴史について研究し、現地に赴くなどして政治や経済、文化などを調査する。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. インドカレー店がなぜ多いのか調べてみた【法務省も関与していた!?…
  2. エンスラポイド作戦【ナチス親衛隊No.2暗殺作戦】
  3. シャネルの創設者、ココ・シャネルについて調べてみた
  4. 台湾の外国人労働者について解説 「高齢化社会で海外労働者の需要急…
  5. ツリーマン症候群 〜全身が樹木になる謎の奇病 【全世界で症状は数…
  6. 中国による一帯一路「氷上のシルクロード」を考える 〜中国の北極航…
  7. 【売春婦からファーストレディへ】 アルゼンチン大統領夫人・エビー…
  8. フィジー共和国の真の姿と、幻の島「タバルア島」

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

『尹前大統領 内乱事件』の初公判と、今後の日韓関係の展望

2025年4月14日、韓国の尹錫悦前大統領に対する内乱事件の初公判が開かれる。これは、202…

アメとムチ【漫画~キヒロの青春】㊺

年末年始ずっと忙しかったですが、やっと少し落ち着いてきました。一緒に住んでい…

豊臣秀長について調べてみた【豊臣政権を支えたナンバー2】

豊臣秀吉の片腕、豊臣秀長血縁関係というものは時に残酷で時に頼もしくもある。特に戦国時代は後継…

「中国で発見された最も古く高い銅像」 青銅大立人とは ~三星堆遺跡

三星堆遺跡の出土品三星堆遺跡(さんせいたいいせき)とは、四川省三星堆で発見された長江文明に属する…

新選組隊士たちの恋人について調べてみた

新選組といえば、江戸時代末期、京都にて尊王攘夷派の弾圧のため活動した剣客集団のことである。…

アーカイブ

PAGE TOP