
画像 : 台湾島 public domain
中国は、台湾を自国の不可分の領土と見なしており、「一つの中国」原則を国際社会に強く主張している。
この原則に基づけば、台湾が独立を宣言したり、外部勢力(特に米国や日本)が台湾の防衛に積極的に介入したりする行為は、中国の主権と領土保全に対する重大な侵害と解釈される。
中国政府が台湾有事に際して軍事行動を起こす際、それは国際法上の侵略行為ではなく、「国家の分裂を防ぎ、領土を保全するための自衛権の行使」であると強硬に主張するだろう。
この「自衛権」の論理は、台湾への武力行使を正当化する上での法的・政治的な前提条件となる。
台湾海峡の現状変更を試みるのは「外部勢力」と「独立派」であり、中国の行動はそれに対する受動的な対応である、というレトリックを用いることで、国際的な非難をかわす狙いがある。

画像 : 習近平 CC BY 3.0
自由への渇望と武力統一
台湾の人々が長年培ってきた民主主義と自由への渇望は、中国の武力統一の目標と真っ向から対立している。
台湾は独自の政府、選挙、そして言論の自由を有しており、その生活様式は中国本土の共産党の一党統制とは根本的に異なる。
中国共産党にとって、台湾の民主的な成功例は、自国の統治体制に対する潜在的な脅威と見なされる。
武力統一は、中国にとって「核心的利益」であり、国内政治的な正当性を維持するためにも譲れない一線である。
しかし、台湾の抵抗に加え、外部勢力、特に米国が関与する可能性がかなり高いとされている。
中国が自衛権の論理を貫き、迅速な統一を達成しようとするならば、米国やその同盟国の軍事力の排除、または無力化が不可欠となる。

画像 : 台湾の衛星写真public domain
日本の平和と標的の拡大
台湾有事において、日本の果たす役割は極めて大きい。
地理的に台湾に近接する南西諸島(沖縄、先島諸島など)には、米軍基地や自衛隊の拠点が集中しており、これらは台湾防衛における米軍の前方展開拠点、および後方支援拠点となる。
中国の軍事戦略から見れば、これらの拠点は、台湾への武力行使を成功させるための重大な障害となる。
中国が「自衛権」行使の範囲を拡大解釈した場合、日本本土、特に米軍基地や自衛隊の主要な指揮・通信拠点も軍事的な標的となる可能性が極めて高い。
中国のミサイル戦力は、これらの固定目標を射程に収めており、有事の初期段階で日本の基地を機能不全に追い込むことで、米軍の介入を遅らせ、台湾有事の既成事実化を図るだろう。
具体的には、在日米軍の嘉手納基地や横田基地、そして自衛隊の那覇基地などが、中国の「主権侵害」に対抗するための「自衛的反撃」の口実の下、攻撃対象となる危険性を常に内包している。
日本政府は、この連動するリスクを認識し、米国の抑止力に依存するだけでなく、独自の防衛能力と国民保護の体制を抜本的に強化する必要がある。
台湾有事は、日本にとって対岸の火事ではなく、自国の存立に関わる深刻な危機であると認識すべきだろう。
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部
























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