
画像 : トランプ大統領 public domain
2026年に入り、世界情勢はトランプ政権の予測不能かつ過激な軍事介入によって激変している。
1月初旬、米国はベネズエラにおいて「アブソリュート・リゾルブ(絶対的決意)作戦」を敢行。
ニコラス・マドゥロ大統領を電撃的に拘束し、米国へと連行するという前代未聞の事態を引き起こした。
さらに、その熱狂が冷めやらぬ2月末には、イランに対しても「エピック・フューリー(壮絶な怒り)」作戦を発動。最高指導者ハメイニ師を排除するという、かつての「外交」や「封じ込め」という概念を根本から覆す強硬策に出た。
これらの作戦に共通しているのは、国家間の全面戦争を避けつつ、AI技術と精密誘導兵器、そして圧倒的な情報戦を駆使して「国家の首」だけをピンポイントで刈り取る「斬首作戦」の徹底である。
トランプ大統領は、イラク戦争のような泥沼の地上戦を嫌う一方で、自国の利益や安全保障を脅かす独裁者に対しては、躊躇なく「死」という直接的な回答を突きつけているのだ。
金正恩が抱く「明日は我が身」の恐怖

画像 : 金正恩(2025年) President of Russia CC BY 4.0
この連続する衝撃を、最も切実な危機として見つめているのは北朝鮮の金正恩総書記に他ならない。
金正恩にとって、ベネズエラのマドゥロやイランのハメイニの失脚は、決して遠い世界の出来事ではない。
ホワイトハウスは、金正恩との「無条件対話」は開かれていると公言しているが、イランの場合も対話の姿勢を見せながら、その裏で攻撃の準備を整えていたことが明らかになっている。
北朝鮮が長年、核ミサイル開発に執着してきた最大の理由は「体制保証」である。
リビアのカダフィ大佐やイラクのサダム・フセインが、核を放棄した、あるいは持たなかったがゆえに悲惨な末路を辿った教訓を、金正恩は骨の髄まで刻んでいる。
しかし、現在のトランプ政権が示す「斬首作戦」は、たとえ核を保有していても、その発射ボタンを押す前に「指導者個人」の命を奪うことが可能であることを実証しつつある。
核の盾と「地下要塞」への籠城
金正恩の思考は今、二つの方向に引き裂かれているはずだ。
一つは、核の抑止力が不十分であると判断し、さらなる技術的高度化、特に米本土を確実に焦土化できる能力を誇示することで、トランプに「斬首」を思いとどまらせること。
もう一つは、軍事的な挑発を一時的に抑え、トランプの個人的な虚栄心を満足させるような「ディール」に持ち込み、時間を稼ぐことである。
しかし、米軍のAIを用いた偵察能力や、通信網を瞬時に無力化する電子戦能力は、北朝鮮が誇る地下施設や秘密基地の優位性を剥ぎ取りつつある。
金正恩が最近、軍部への視察を強化し、警護体制を異常なまでに厳重にしているのは、自身の居場所が常に捕捉されているという強迫観念の表れだろう。
トランプ流「新しい世界秩序」の行方

画像 : 2019年6月30日、韓国・板門店の非武装地帯(DMZ)で会談したトランプ米大統領と金正恩氏 public domain
トランプが再定義しようとしている世界秩序は、多国間協調や国際法に基づいたものではない。
圧倒的な武力と、それを振るう決断力を背景にした「恐怖による統治」である。
ベネズエラ、イランと続いたこの流れが、次に平壌へと向かうのか、あるいは北京やモスクワへの強力な牽制として機能するのか。
金正恩は今、平壌の地下深くで、トランプという「予測不能なディールメーカー」が投じる次のカードを待ち構えている。
それが握手のための手なのか、あるいは自らの命を刈り取るための刃なのか。
東アジアの緊張は、トランプの気まぐれ一つで、一気に限界点を超える危険性を孕んでいる。
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部

























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