宗教

イスラム教における来世と「ジハード」の本来の意味

イスラム教とは

イスラム教は、2010年の時点で16億人の信徒があるとされており、キリスト教に次いで世界で2番目の多くの信者を持つ宗教である。

世界にはイスラム教を国教としている国もあり、他宗教の崇拝を禁じている。現在でも信者は増えておりイギリスではすでに国内第二位の信者数を有する宗教となっている。

イスラム教は唯一絶対の神アッラーを信仰し、神が最後の預言者を通じて人々に下したとされるクルアーン(コーラン)の教えを信じ従う一神教である。

「イスラーム」はアラビア語の「自身の重要な所有物を他者の手に引き渡す」という意味をもつアスラマという動詞の名詞形であり、神への絶対服従を示している。

ジハード

イスラム教徒の頒布図

ムハンマド

創始者はアラブの宗教的、社会的、政治的指導者であるムハンマドである。ムハンマドはイスラム教の教義では預言者であり、神が使した最終預言者であるとされる。

西暦570年にアラビアの都市メッカで生まれたムハンマドは、40歳の時、洞窟に身を潜めて祈りの時を過ごしていた時に天使ガブリエルの訪問を受け、神からの最初の啓示を受けたとされる。

その後、彼は自身を預言者と宣言した。

ジハード

天使ガブリエルの訪問を受けるムハンマド

ムハンマドは世俗的な意味においても世界史を塗り替えた人物である。

数々の争いの後、アラビア半島を統一してイスラム帝国の基礎を築いた。世界帝国とまではいかないが、その初期段階としての国家組織と軍隊を生前に確立しており、世界宗教の創始者としては他に例がない。

彼は生涯26回も自ら信徒を率いて戦い多くの戦いで先手をとり、何度も不利な戦いで勝利するなど優れた軍事指導者でもあった。

イスラム教における来世

来世、つまり死後どうなるかについて各宗教の教えは大きく異なっている。イスラム教における来世の教えはこうである。

人は生前の行いによって最後の審判がなされ、その後、天国、高璧、火獄の三箇所に振り分けられる。

天国 信仰を貫いたものだけが死後に永生を得る。天国では決して悪酔いしない酒や果物、肉などを好きなだけ楽しむことができるとされている。過激派組織が自爆テロの人員を募
集するのに天国の描写を用いている場合が多く、問題視されている。

高壁 善悪どちらでもない者の行き場であり、天国と火獄を隔てる高い壁として存在する。その住人は天国には入れないが地獄にもいかず、快楽も苦痛もない中庸の生活を送る。

火獄 不信仰者が永遠に責め苦を受ける場所とされる。火獄の住民はザックームという地獄に生える樹木になるアッダリという苦い果物を食わされる。この果物は悪魔の頭のような形をしている。罪人たちの口の中がいっぱいになると、ザックームは腹の中で燃え盛る油のように暴れ回るという。

ジハード

ジハードという言葉は、多くの人が耳にしたことがあるであろう。

一部のテロ組織がテロ行為をこう呼んでいることから、イスラム教はとても狂信的な宗教というレッテルが貼られてきた。
ジハードはアラビア語の語源から派生した動詞の動名詞で本来は「宗教のために努力する、戦う」という聖戦を意味している。

「大ジハード」が個人の信仰を深める内面的努力を示す(個人の心の中にある悪、不正義、欲望、自我、利己主義と戦う)一方で、「小ジハード」は異教徒に対しての戦いを示す。

一般的にジハードは後者の意味で使われることは多く、実際のアラビア語のジハードには「聖」の意味はないとされている。

コーランを見てみると「神の道のために奮闘することに努める」という句の中の「奮闘する」に相当する語を語源としており、本来「神聖」「戦争」の意味は含まれない。

しかし、時にジハードはその人の置かれた社会において不正または抑圧に対する戦いという意味を持つこととなり、「聖なる戦い」を繰り広げる事で、正しい社会を作らなければならないという考えと結びつくのである。

この場合、外部の不義との戦いとなり、外へのジハード、暴力的なジハードとなるわけである。

ジハード

それはジハードなのか?

一部の過激なイスラム教とが「聖戦」を名乗り、非人道的な行為に至っている。

この団体を日本では「ISIL : イスラム国」と呼んでいる事についても誤解を招く表現として警告がなされた。

実際にはこのISILの活動により平和を重んじるイスラム教の宗教名を汚すとされている。つまり風評被害である。

一部のイスラム教徒の行為をイスラム教の理念のように捉えることは非常に危険で誤解を招きかねない。宗教の名の元に卑劣な行為を繰り返している団体に、様々なやむを得ない状況で参加している若者達の事を考えると、胸が痛む次第である。

 

アバター

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 【畿内の大五芒星】東西の結界について調べてみた
  2. 【神社に祀られる神様を知る】海上安全・商売繁盛なら「住吉さま(す…
  3. ギガス写本「悪魔に魂を売って書かれた聖書」について調べてみた
  4. 空海はどれくらい天才だったのか調べてみた
  5. 円空とはいかなる人物か「生涯仏を彫り続けた僧」
  6. 十八地獄について調べてみた 「そもそも地獄とは一体なにか?」
  7. 明治神宮はなぜ作られたのか?
  8. パワースポットで買ったお守りの扱い方について

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

モンゴルのトゥス・キーズと韓国のポジャギ 「母の愛を改めて知るアジアの装飾文化」

その国の装飾文化を伝える手法といわれる刺繍や伝統技法には、色彩で表現される美しさや、良縁や健…

【三笘アシスト!】 18歳が躍動したブライトンの変化とは? 【今週末、日本代表はドイツ戦】

9月2日(土)から9月3日(日)にかけて、プレミアリーグ第4節が開催されました。三苫薫が所属…

堀江六人斬り事件とは ~「女狂いのクズ男が嫉妬で6人メッタ刺し」

明治38年、大阪。夜が明け始めた頃、一人の男が警察署に自首しました。男の名は中川萬次郎。…

坂上田村麻呂について調べてみた【武の象徴として軍神になった征夷大将軍】

忠臣として名高い 坂上田村麻呂征夷大将軍と聞くと思い浮かぶのは鎌倉幕府を開いた源頼朝、室町幕府を…

「臨死体験?」死ぬ瞬間、脳内には300倍の「ガンマ波」が発生する 【米の神経科学者が研究発表】

「死ぬ瞬間」の科学的研究はほとんど進んでいない「死」は、誰もが避けて通れないにもかかわらず、…

アーカイブ

PAGE TOP