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日本最古の神社の一つである大神神社(三輪明神)に行ってみた

日本には数多くの神社がありますが、その中でも日本最古級の神社の一つとされているのが、奈良県桜井市に鎮座する大神神社(おおみわじんじゃ)です。

今回は大神神社の由来や歴史、さらに別称である「三輪明神」の「明神」とは何を意味するのかご紹介いたします。

大神神社の概要

画像:大神神社の拝殿 筆者撮影

大神神社の由来は『古事記』や『日本書紀』に記されており、神話の時代から伝承されている日本最古級の神社の一つです。

一般の神社では、本殿・幣殿・拝殿が一体となって構成され、ご祭神は本殿に祀られています。
そして人々は拝殿、またはその前から本殿の神に祈りを捧げます。

しかし、大神神社には本殿がなく、拝殿の奥にそびえる三輪山そのものを御神体として拝むという、古代の神祀りの形が今も守られています。

これが、大神神社が日本最古の神社の一つとされる理由の一つです。

『古事記』や『日本書紀』の伝承によると、大国主神の別の御魂として大物主大神(おおものぬしのかみ)が顕現し、三輪山に鎮まられたと伝えられています。

大神神社の主祭神は、この大物主大神です。

大物主大神は国造りの神として、農業・工業・商業などあらゆる産業の発展をはじめ、方除け、病気平癒、造酒、製薬、交通安全、縁結びなど、人々の暮らし全般を守護する神として広く信仰されています。

画像 : 三輪山(神体山)と大鳥居 Saigen Jiro CC0

ご祭神が鎮まる三輪山は、奈良盆地でもひときわ形の整った円錐形の山で、標高は約467メートル、周囲はおよそ16キロメートルに及び、豊かな樹々に包まれています。

古来よりこの山には神霊が宿るとされる磐座(いわくら)が点在し、それらが信仰の中心となってきました。

古い縁起書によれば、三輪山の山頂の磐座に大物主大神が、中腹の磐座に大己貴神(おおなむちのかみ)が、そして麓の磐座に少彦名神(すくなひこなのかみ)が鎮まるとされています。

そのため、主祭神は大物主大神ですが、配祀神として大己貴神と少彦名神も祀られています。

神霊が鎮まるご神体とは?

画像 : 三輪山山上に現れた天の川 PhotoAC

先に述べたように、大神神社のご神体は三輪山であり、その山中に点在する磐座(いわくら)と呼ばれる岩石です。

このご神体は神そのものではなく、神が宿り、鎮まる場所であり、「依り代(よりしろ)」や「御霊代(みたましろ)」とも呼ばれています。

古代の信仰では、神は自然物に依りつくと考えられており、大神神社の三輪山のほかにも、福岡県の宗像大社における沖ノ島、和歌山県の熊野那智大社における那智の滝などが、その代表例として知られています。

やがて社殿が建てられるようになると、自然物ではなく人工のご神体が本殿内に安置されるようになりました。

こうしたご神体には、祭祀で用いられる御幣(ごへい)や、太陽神である天照大御神を象徴する鏡などがよく用いられています。

皇室関連の神社では、伊勢神宮では「八咫の鏡」、熱田神宮では「草薙神剣」、皇居内の神殿には「八尺瓊勾玉」といった三種の神器がご神体として安置されています。

大神神社の別名「三輪明神」にある明神とは?

大神神社は、古くから別名で「三輪明神(みわみょうじん)」とも呼ばれてきました。

この「明神」という言葉は、霊験あらたかな神を敬って用いられる尊称です。

平安時代以降になると、日本の神々は仏が衆生を救うために姿を変えて現れたものとする「神仏習合」の考え方が広まり、この「明神」という呼称も仏教的な意味合いを帯びて用いられるようになりました。

中世には大神神社も広く「三輪明神」と称されましたが、明治時代の神仏分離政策を経て、現在の正式名称である「大神神社」に改められました。

大物主大神の化身の「白蛇」が住むという巳の神杉

画像 : 大神神社 巳の神杉 z tanuki CC BY 3.0

拝殿に向かって右斜め前には、「巳の神杉(みのかみすぎ)」と呼ばれる大きな杉の木がそびえています。

この杉の木には、大物主大神の化身とされる白蛇が住むと伝えられており、そのため「巳の神杉」と呼ばれるようになりました。

杉の前には、蛇の好物とされる卵やお酒が供えられており、木の根元には大きな空洞があります。そこから白蛇が姿を現すことがあるとされ、それを見た人は幸運に恵まれると伝えられています。

その伝承にちなみ、大神神社の周辺では白蛇をかたどった置物などの縁起物が数多く販売されています。

画像:白蛇の置物 筆者撮影

大神神社の境内摂社・末社や見どころ

拝殿から北の方角へ向かうと、三輪山の山裾に沿って「くすり道」と刻まれた石碑が立つ小道があります。

この道を進むと、大神神社の摂社であり、大物主大神の荒御魂(あらみたま)をお祀りする狭井(さい)神社にたどり着きます。

狭井神社は古くからご神威が強いとされ、特に病気平癒の神として多くの人々の信仰を集めています。

画像:狭井神社の拝殿 筆者撮影

狭井神社の境内右手には、三輪山への登拝口があります。

社務所で登拝料を納めると、白いたすきを受け取り、これを肩から掛けて神聖な三輪山に登ることができます。登拝は往復でおよそ2時間ほどかかるとされています。

狭井神社から少し戻り、ため池沿いの道を進むと、「大美和の杜展望台」と名付けられた小高い丘への登り口があります。階段状の道を登ると、三輪の街並みを一望できる美しい眺めが広がります。

近くには大神神社の象徴ともいえる大鳥居が見え、春にはソメイヨシノや枝垂れ桜が咲き誇り、花の間から絶景を楽しむことができます。

さらに展望台の反対側の坂道を少し下ると、久延彦(くえひこ)神社があります。

ここには『古事記』に「世の中のことをよく知る神」と記されている久延毘古命(くえひこのみこと)が祀られています。

高台に位置するため、この神社からも展望台と同じく美しい景色が望めます。

展望台からは木々の枝に遮られて見えにくい大鳥居も、ここからははっきりと見ることができます。

画像:久延彦神社からの眺望 筆者撮影

大神神社は、三輪山そのものを御神体とする原初の信仰を今に伝える、たいへん貴重で荘厳な神社です。

古代の神祀りの姿を肌で感じることができる場所として、ぜひ多くの方に訪れていただきたいと思います。

大神神社(おおみわじんじゃ) 基本情報

・所在地:〒633-8538 奈良県桜井市三輪1422
・電話番号:0744-42-6633
・参拝時間:境内自由参拝(24時間開放)
・授与所・受付時間:9時~17時(宝物殿など一部施設は異なる)
・主祭神:大物主大神(おおものぬしのおおかみ)
・配祀神:大己貴神(おおなむちのかみ)、少彦名神(すくなひこなのかみ)
・ご神体:三輪山(みわやま)そのもの
・アクセス:
JR三輪駅から徒歩約5分
JR桜井駅北口2番のりばから「二の鳥居前」行きバスで約20分(土日祝運行)
・駐車場:参拝者用無料駐車場あり(約590台)
・公式サイト:https://oomiwa.or.jp/

参考 : 『古事記』『日本書紀』『大神神社公式サイト』他
文:撮影 / 草の実堂編集部

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草の実堂編集部

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草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

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