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奈良観光・春日大社『若宮十五社』を巡ってみた ~夫婦におすすめ「夫婦大国社」

春日大社の創建は、奈良時代初期に遡ります。

平城京の鎮護を目的として、鹿島神宮から武甕槌命(たけみかづちのみこと)を御蓋山(みかさやま)の山頂に迎えて祀ったことが始まりとされています。

その後、768年に称徳天皇の勅命により、現在の場所に社殿が造営されました。

この際、香取神社から経津主命(ふつぬしのみこと)を、さらに大阪府の枚岡神社から天児屋根命(あめのこやねのみこと)と比売神(ひめがみ)を招き、四柱の神がご祭神として祀られるようになりました。

画像:春日大社本殿 筆者撮影

この回廊に囲まれたご本殿には、毎日多くの参拝者や観光客が訪れています。

しかし、春日大社には本殿だけでなく、その周囲の神域に霊験あらたかな神々が祀られている摂社・末社が合わせて62社も存在します。

その中でも特に有名なのが、若宮を中心に据え、周囲に十五社の摂社や末社を祀った「若宮十五社」と称される神域です。

本記事では、実際に巡った感想を含め、この若宮十五社についてご紹介したいと思います。

「若宮十五社」を巡ってみた

春日大社は、世界文化遺産「古都奈良の文化財」の8つの構成資産の一つですが、その神域に点在する「若宮十五社」は多くの人々に忘れられており、参拝者が少ないのが現状です。

若宮十五社は、「人の一生における安泰を祈願する場所」として知られ、心を込めて参拝することで、生涯の安寧を願うことができます。

春日大社を訪れる際には、この若宮十五社も合わせて巡拝することが推奨されています。

第一番納札社 若宮

画像:若宮 筆者撮影

若宮十五社の第一番納付社は「若宮」であり、ここには天押雲根命(あめのおしくもねのみこと)が祀られています。

その御神徳は「正しい知恵を授けてくださる」とされています。

春日大社の祭礼としてよく知られている、12月15日~18日にかけて行われる「春日おん祭」は、正式には「春日若宮おん祭」と呼ばれ、この若宮のための祭礼です。

若宮は朱塗りの立派な社殿を持ち、その格式と歴史の重みを感じさせる神社です。

二番以降の納札社

第二番以降の納付社をまとめてみます。

第二番
三輪神社
御祭神 : 少彦名命(すくなひこなのみこと)
御神徳 : 子孫の繁栄、子供の無事成長をお守りくださる神様

第三番
兵主神社
御祭神 : 大己貴命(おおなむちのみこと)
御神徳 : 延命長寿をお守りくださる神様

第四番
南宮神社
御祭神 : 金山彦神(かなやまひこのかみ)
御神徳 : 金運のご守護をくださる神様

第五番
広瀬神社
御祭神 : 倉稲魂神(うかのみたまのかみ)
御神徳 : 衣食住をご守護くださる神様

第六番
葛城神社
御祭神 : 一言主神(ひとことぬしのかみ)
御神徳 : 心願成就、一つの願いを叶えてくださる神様

第七番
三十八所神社
御祭神 : 伊弉諾尊(いざなぎのみこと)、伊弉冉尊(いざなみのみこと)、神日本磐余彦命(かむやまといわれひこのみこと)
御神徳 : 正しい勇気と力を授けてくださる神様

第八番
佐良気神社
御祭神 : 蛭子神(ひるこのかみ)
御神徳 : 商売繁盛、交渉成立をお守りくださる神様

第九番
春日明神遥拝所
御祭神 : 春日皇大神(かすがすめおおかみ)
御神徳 : ひらめきを授けてくださる神様

第十番
宗像神社
御祭神 : 市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)
御神徳 : 諸芸発達をお守りくださる神様

第十一番
紀伊神社
御祭神 : 五十猛命(いたけるのみこと)、大屋津姫命(おおやつひめのみこと)、抓津姫命(つまつひめのみこと)
御神徳 : 万物の生気、命の根源をお守りくださる神様

第十二番
伊勢神宮遥拝所
御祭神 : 天照坐皇大御神(あまてらしますすめおおかみ)、豊受大御神(とようけのおおみかみ)
御神徳 : 天地の恵みに感謝する所

第十三番
元春日枚岡神社遥拝所
御祭神 : 天児屋根命(あめのこやねのみこと)、比売神(ひめがみ)
御神徳 : 延命長寿をお守りくださる神様

第十四番
金龍神社
御祭神 : 金龍大神(きんりゅうおおかみ)
御神徳 : 開運財運をお守りくださる神様

第十五番
夫婦大国社
御祭神 : 大国主命(おおくにぬしのみこと)、須勢理姫命(すせりひめのみこと)
御神徳 : 夫婦円満、良縁、福運守護の神様

これらの摂社・末社は、小さなお社のみのものや、鳥居とお社が併設されたもの、さらにはしめ縄で仕切られた伊勢神宮や枚岡神社への遥拝所など、多彩な形をしています。

第一番から第十五番までは一直線に並んでいるのではなく、少し折り返したような順路となっています。

格式の高い若宮以外で、特に人気があるのは第十五番の夫婦大国社です。

画像:夫婦大国社 筆者撮影

この夫婦大国社は、日本で唯一、大国主命(おおくにぬしのみこと)と、その姫神をお祀りした神社です。

ちなみに姫神は、須勢理姫命(すせりひめのみこと)といいます。

平安時代に出雲大社のご神霊を迎え、二体のご神像を彫刻したことから始まったとされ、以来900年にわたり良縁・夫婦円満を願う参拝者で賑わっています。

建物は社務所も兼ねており、少し神社らしさに欠けるかもしれませんが、若い女性の参拝者が多く、水みくじで運勢を占い、可愛らしいハート形の絵馬に願いを書いて奉納する光景が見られます。

画像:夫婦大国社のハート形の絵馬 筆者撮影

若宮十五社の正式な巡拝の手順は、夫婦大国社で初穂料1,500円を納め、玉串札を受け取ることから始まります。

次に、夫婦大国社の向かい側にある手水所で手と口を清め、第一番から第十五番まで順次参拝します。
最後に、再び夫婦大国社の社務所に戻り、満願の奉告をして御朱印とおしるしを受け取ることになっています。

もちろん、正式な作法にこだわらずとも、心を込めてお参りすることで、心の安寧を得てご利益が得られるものと思います。

筆者はご本殿にお参りした後、南へ進んで道の両側に立ち並ぶ摂社・末社を巡拝し、そのまま高畑エリアへ抜けました。

この巡拝中、外国人観光客の姿は全く見られず、わずかに数名の参拝者がいくつかの社にお参りしているのみでした。
本殿内の喧騒とは全く異なる静寂に包まれ、心が清められる思いがしました。

画像:宗像神社周辺の順路風景 筆者撮影

高畑エリアについて

高畑エリアは、比較的大きな住宅や、住居を改装したカフェや食事処が点在する静かなエリアです。

このエリアには、志賀直哉旧邸や、その隣にはかつて文化人が集った庭園カフェ「高畑茶論」があり、文学の香りを感じることができます。

画像:志賀直哉旧邸 筆者撮影

また、十二神将像で有名な新薬師寺や、奈良・大和路の風景を撮り続けた写真家・入江泰吉を記念して建てられた奈良市写真美術館も見どころの一つです。

この美術館は建築家・黒川紀章氏による設計で、建物自体も一見の価値があります。

画像:奈良市写真美術館 筆者撮影

おわりに

今回は、春日大社の「若宮十五社」を巡拝した内容をご紹介しました。

奈良観光のリピーターは、この若宮十五社の巡拝と高畑エリアを組み合わせた「大人の散策」ともいえる観光を楽しむのもおすすめです。

参考 : 『春日大社 HP
文 : 撮影 / 草の実堂編集部

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草の実堂編集部

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草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

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