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『アメリカの殺人老婆』 ドロシア・プエンテ 「デスハウス(死の館)で9人殺害」

ドロシア・プエンテ

画像:シリアルキラーとして有名な切り裂きジャック(ジャック・ザ・リッパー) piblic domain

シリアルキラーとは?

シリアルキラーとは、異常な心理的欲求のもと、複数の殺人を繰り返す連続殺人犯のことです。
一定期間を置いて犯行を行い、その期間は数ヶ月から数年、あるいはそれ以上に及ぶこともあります。

シリアルキラーの動機は、性的な欲望を満たす場合もありますが、それだけに限らず、権力欲や支配欲、復讐心など、様々な心理的欲求が関与しています。

シリアルキラーと呼ばれる犯人は、猟奇殺人や快楽殺人を犯す場合が多く、残忍性や計画性が伴います。自らの犯行であることを示すため、犯行現場に手口やサインを残す傾向があります。

またシリアルキラーは特定の人間に執着する傾向があり、被害者には外見や職業、性別などに共通点があるのも特徴です。

今回の記事では、9人を殺害したシリアル・キラーである、ドロシア・プエンテの犯行手口を見ていきたいと思います。

アメリカを震撼させた連続殺人犯、ドロシア・プエンテ

ドロシア・プエンテ

画像 : ドロシア・プエンテ wiki c

ドロシア・プエンテは、1929年にカリフォルニア州のレッドランズで生まれました。彼女の生い立ちはとても不幸なものでした。両親はアルコール依存症で、父親は子供たちの前で自殺すると脅迫し、母親は性労働者でした。

プエンテは孤児院で性的虐待を受けるなど、トラウマになるような幼少期を送りました。この経験がのちに彼女が嘘をついたり、自分の利益のために他人を支配するようになる原因になったと考えられています。

10代で兵士と結婚して2人の娘をもうけましたが、夫は彼女を捨て、プエンテはシングルマザーとなりました。その後、複数の男性と結婚(離婚)を繰り返し、偽名を使ったり宗教に傾倒したりと、波乱に満ちた人生を送ったのです。

この時期の彼女はすでに犯罪に手を染めており、小切手偽造や売春、詐欺などで度々逮捕されています。

サクラメントの下宿屋経営

プエンテは、サクラメント(カリフォルニア州の都市)で下宿屋を経営するようになります。アルコール依存症やホームレス、精神障害者の支援し、地域に貢献する人物として知られるようになりました。

しかし、その裏では入居者たちを薬物で支配し、社会保障給付金を横取りしていたのです。

入居者の中には、アルコール依存症から回復した人や精神的な問題を抱えた人もおり、プエンテは彼らの信頼を得ることで、自分の犯罪を隠蔽することができました

9人の犠牲者と犯行手口

※イメージ画像

1982年から1988年までの間に、プエンテによって殺害された犠牲者は9人になります。

犠牲者の中には高齢者や障害者など、社会的に弱い立場の人たちが多く含まれていました。プエンテは入居者たちに薬物を過剰摂取させ、中毒死させる手口を使ったり、盗んだ薬物を入居者に飲ませて自殺に見せかけたりしていました。また犠牲者の社会保障給付金を自分の口座に振り込ませて、多額の利益を得ています。

1988年11月、警察がプエンテの家を捜索したところ、裏庭から複数の遺体が発見されました。しかしプエンテは警察の目をすり抜け、一時的に逃走します。

このときメディアは「女殺人鬼が逃走中」と報じたため、アメリカ全土に彼女の名前と顔が知れ渡ります。

その後、プエンテはロサンゼルスで逮捕されました。

裁判結果は…

プエンテの裁判では、彼女の犯行を裏付ける証人や証拠が多数提出されました。その結果、3件の殺人で有罪となり、その他の6件は評決がまとまらず、無罪となりました。

裁判ではプエンテが被害者を殺害した後、遺体を裏庭に埋めたり、川に捨てたりしていたこと、犠牲者の社会保障給付金を横取りしていたことなどが明らかになりました。

プエンテは終身刑を宣告され、刑務所内で2011年に亡くなりました。

刑務所での彼女は、やはり模範囚とは言えず、他の受刑者や刑務官に嘘をついたり、自分の支配下に置こうとしたそうです。

彼女の犯罪はアメリカ中で知られ、さまざまなメディアで取り上げられました。

メディアでの注目と影響

プエンテの犯罪は、アメリカで広く知られるようになり、ドキュメンタリーや映画、演劇など、さまざまなメディアで取り上げられました。彼女の犯罪に焦点を当てた作品も数多く制作され、プエンテの複雑な人生や心理を分析する試みもなされています。

プエンテの犯罪は、犯罪心理学や社会福祉の分野における研究対象となりました。

またプエンテが経営していた下宿屋は「デスハウス(死の館)」と呼ばれています。「ゴーストアドベンチャー」などのテレビ番組から取り上げられ、超常現象が起こると噂されました。

不幸な生い立ちから連続殺人犯となったプエンテの人生は、人間の複雑さと闇に満ちた物語として、人々の興味を引き続けています。

彼女の犯罪は、社会の脆弱な立場にある人々を支援することの重要性を浮き彫りにし、アメリカの福祉制度や犯罪防止対策にも影響を与えました。

参考文献:ピーター・ヴロンスキー(2017)『シリアルキラーズ 女性篇 − おそるべき女たちの事件ファイル』(松田和也訳)青土社

 

村上俊樹

村上俊樹

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“進撃”の元教員 大学院のときは、哲学を少し。その後、高校の社会科教員を10年ほど。生徒からのあだ名は“巨人”。身長が高いので。今はライターとして色々と。
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