生活

「本籍地」は自分で自由に決められる!転籍手続きをやってみた

日本人なら、誰でも本籍地が設定されています。

日常生活にはあまり影響がないものの、自分のアイデンティティを構成する一要素として、本籍地を重視している方もいるでしょう。

この本籍地、実は自分で決める(変える)ことが可能です。

現地に住んでいなくても、例えば富士山を本籍地にしたり、日本固有の領土である北方領土や竹島を本籍地にしたり……日本国内で住所さえあれば、どこを本籍地にしても構いません(※富士山の頂上は住所がないため不可)。

何なら東京タワーやディズニーランド、国会議事堂や皇居を本籍地にすることも可能です。

かく言う筆者も諸事情から本籍地を変更(転籍)する機会があったので、今回はその手続きやポイントなどを紹介したいと思います。

本籍地を変更する機会はあまりないと思いますが、何かの参考や話題のタネにでもなれば幸いです。

転籍手続きは紙一枚で

転籍届

転籍(てんせき)手続きは、自治体(※)の役所へ転籍届を提出するだけで完了します。

(※)自治体は現在の本籍地でも、転籍先(新しい本籍地)でも、現住地でも構いません。

転籍届の用紙は役所窓口でもらったり、自治体によってはHPからダウンロードできるところもあるので活用しましょう。

ちなみに転籍手続きは本庁舎だけでなく、支所でも可能です。

手数料は必要ありません。転籍届に必要事項を記入し、署名押印したものを提出しましょう。

この署名押印は戸籍の筆頭者と、配偶者がいればそちらも合わせて必要です。面倒だからと言って、届出者が配偶者の分まで代筆して(させて)はいけません。

提出した転籍届に不備がなければ、1週間ほどで転籍が完了し、新しい本籍地が登録されます。

転籍手続きのポイント

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・持ち物は転籍届のみ(身分証明書の提示を求められるケースもあり)

・転籍手続き自体には手数料がかかりません(役所の駐車場代などは別途)。

・提出者は誰でもOK(委任状は必要ありません)

・ただし届出の名義は戸籍筆頭者か配偶者に限る(子供などが自分の名義では出せない)

・受付は年中無休(ただし閉庁時間は警備室などへ提出)

・内容に不備(※記入もれや、実在しない本籍地など)がある場合は修正が必要

ちなみに戸籍謄本は広域交付の対象です。例えば沖縄県在住の方が北海道に本籍地を置いた場合、遠隔で戸籍謄本の取り寄せができます。

ただし手続きに時間がかかったり、現地でないと交付できない書類もあったりするため、転籍前に確認しておきましょう。

転籍の注意点

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このように、転籍手続きは簡単に出来てしまいますが、その前に注意しておくべきことも確認しておきましょう。

①転籍前に除籍された人は連れていけない(一緒に転籍できない)

転籍手続きをするより前に亡くなったり結婚・離婚したりして除籍(戸籍から除かれること)した方については、転籍先の戸籍には記載されません。

既に除籍された方の謄本(除籍謄本)が必要な場合は、最新(転籍後)の戸籍謄本と別に請求することとなります。

ただし戸籍筆頭者が転籍前に亡くなっていても、その名前は変更されません。

②住所異動記録がリセットされる

戸籍の附票(ふひょう。住所の異動履歴)については、転籍後の住所からしか記録されません。つまり転籍前の異動履歴がリセットされてしまうのです。

過去の住所履歴が必要な場合は、転籍前の本籍地で除附票(除籍の附票バージョン)を請求してください。

③相続手続き時の手間が一つ増える

相続が発生すると、被相続人(相続される人=亡くなった人)の出生から死亡まで、除籍を含むすべての戸籍を用意しなくてはなりません。

つまり、相続手続きの手間が一つ増え、手数料(コスト)がちょっとかさむことになります。

④運転免許証やパスポートなども変更届が必要

運転免許証やパスポートなど、本籍地を届け出てある公的書類については、転籍後すみやかに変更届を出さなければなりません。

※ただしパスポートについては都道府県単位で管理しているため、同一都道府県内なら変更届は不要だそうです。

転籍手続き自体は簡単ですが、公的な証明である以上、少し手間が増えてしまうのは致し方ないところでしょう。

転籍と分籍の違いは?

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基本的に転籍は戸籍の全員が行わなければならず、一部だけで転籍することはできません。

しかし諸事情から、筆頭者とは戸籍を別にしたい、独立したいという方もいるでしょう。

そういう方には分籍(ぶんせき)という手続きがあります。

分籍手続きも転籍の時と同じく、現在の本籍地か新しい本籍地、または現住所での届出が可能です。

提出書類は分籍届のみ、手数料は不要であるほか、細かいところは転籍に準じます。

分籍に際しての注意点もチェックしておきましょう。

・分籍する本人が成人していること(18歳未満は分籍不可)

・戸籍の筆頭者および配偶者でないこと

・分籍は当人のみ(例えば兄弟一緒での分籍などは不可)

・原則として一度分籍したら、元の戸籍には戻れません

こうした点も考慮した上で、分籍すべきかを検討することをおすすめします。

終わりに

今回は戸籍の本籍を変更する転籍手続きについて紹介してきました。転籍理由として多いのが結婚する時で、離婚はそれに次ぐようです。

結婚する時の転籍先としては、①新居を構える自治体の役所、②二人の思い出深い場所、③どちらかの実家(生家)……などが多く選ばれていると言います。

本籍地がどこであろうが、日常生活においてほとんど何の影響もありません。それでもやはり自分がどこの人間であるか、どこの土地とつながっているのかを実感することは、アイデンティティを形成する上で大切な要素と言えるのではないでしょうか。

文 / 草の実堂編集部

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草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

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