神話、伝説

聖書に描かれた怪物たち:ベヒモス、レヴィアタン、四騎士…不気味な黙示録の予言

画像 : 新約聖書 public domain

聖書といえば、キリスト教文化圏において長く読み継がれてきたベストセラー書籍であり、その発行部数は正確な集計こそ困難とされるものの、ギネス世界記録では「史上最も売れた本」として紹介されている。

聖書には、人知を超えた恐るべき怪異や怪物が数多く登場している。

しかし、それらの存在は名前こそ有名である一方、聖書に由来する存在であることが十分に知られているとは言い難い。

今回は、そうした怪物たちと、聖書内で語られるエピソードをあわせて紹介していく。

大地と海の怪物

画像 : ベヒモスとレヴィアタン public domain

聖書に記される怪物といえば、やはりベヒモス(Behemoth)とレヴィアタン(Leviathan)は外せない存在である。

ともに旧約聖書の『ヨブ記』において言及される、神の被造物の中でも、ひときわ強大な存在として描かれている。

ベヒモスはベヘモット、ベヒーモスとも呼ばれ、陸に生きる巨大な生物として描写されている。
その肉体はきわめて強靭で、骨は青銅、手足は鉄の棒のようだと形容されている。

その頑丈さはあらゆる攻撃を防ぎ、創造主である神を除いて、ベヒモスを傷つけられる者はいないとされる。
ゾウ・カバ・サイなどの大型動物が、そのモデルとなっていると考えられている。

一方、レヴィアタンは「リバイアサン」の名でも知られる、海に棲む巨大な怪物である。

心臓は石のように硬く、鱗は陶器の破片や盾を重ねたように堅固で、刃も通さぬ存在として語られる。

口からは火がほとばしり、鼻からは煙が立ち上り、その息によって炭が赤熱するなど、ベヒモス以上に神話的で恐るべき存在として描かれている。

その正体はワニやクジラなどが、怪物として描かれたものだと考えられている。

知られざる空の覇者

画像 : 陸のベヒモス 海のレヴィアタン そして空のジズ public domain

ベヒモスとレヴィアタンは比較的有名だが「空」の怪物についてはあまり知られていない。

旧約聖書の『詩篇』には、次のような一節が記されている。

「わたしは山の鳥をことごとく知っている。野に動くものはすべて、わたしのものだ」
「林の猪はこれを荒らし、野の獣がこれを食い尽くす」

これらの表現に見られる「野に動くもの」は、本来は野生の生き物全般を示す一般的な表現であった。

しかし、後世のユダヤ教伝承や解釈の中で、この表現が巨大な鳥の姿をした存在と結び付けられ、ジズ(Ziz)と呼ばれる単独の怪物として語られるようになった。

伝承上のジズは、ベヒモスやレヴィアタンと並び称される存在とされ、翼を広げれば太陽を覆い、地に立てば頭が天に届くほどの巨体を持つと語られている。

また、これら三体の怪物が終末の時に人類の食料となるという説も存在する。

不気味な黙示録の予言

画像 : 黙示録の仔羊 一説によるとこの怪物はイエス・キリストの化身だという public domain

新約聖書には『ヨハネの黙示録』と呼ばれる、終末と神の最終的勝利を描いた書が収められている。

そこでは、悍ましい異形や災厄が次々と描かれ、読者に強烈な印象を残す地獄絵図のような光景が展開されていく。

黙示録の冒頭で重要な役割を果たすのが、「仔羊(Lamb of God)」と呼ばれる存在である。

7つの角と7つの目玉を持ち、この目玉は神の霊的なパワーを司っているという。
そしてこの仔羊が「封印」を解除したのを皮切りに、恐るべき怪物たちが世に解き放たれることになるのだ。

それでは、順番に見ていこう。

封印が解かれると、まず現れるのが「4人の騎士」として知られる存在である。
彼らは白・赤・黒・青白い馬に乗り、征服、戦争、飢饉、死といった災厄をもたらすという。

続いて登場するのが、7人の天使による「7つのラッパ」である。
天使がラッパを吹くたびに、世界には段階的に災厄がもたらされる。

第1のラッパが吹かれると、雹と火が血と混じって地上に降り注ぎ、地の3分の1と木々の3分の1、そしてすべての青草が焼かれる。

第2のラッパでは、燃え盛る大きな山のようなものが海に投げ込まれ、海の3分の1が血となり、海の生き物と船の3分の1が失われる。

第3のラッパが鳴ると、「ニガヨモギ」と呼ばれる星が天から落ち、川や水源の3分の1が苦くなり、その水によって多くの人が命を落とす。

第4のラッパでは、太陽、月、星の3分の1が打たれ、昼と夜の光がそれぞれ3分の1失われる。

第5のラッパが吹き鳴らされると、底知れぬ所からイナゴの群れが現れ、それらを治める存在として「アバドン」と呼ばれる王が登場する。

第6のラッパでは、ユーフラテス川のほとりに封じられていた4人の御使が解き放たれ、人類の3分の1が命を落とす。

最後に第7のラッパが鳴り響くと、天では神の支配が宣言され、世界の終局が近いことが示される。

画像 : ウィリアム・ブレイク作『巨大な赤い龍と太陽の衣をまとった女』public domain

黙示録の地獄はまだまだ続く。

次に姿を現すのが、赤い竜(Red Dragon)である。
7つの頭と10本の角を持ち、それぞれの頭には王冠が載せられている。

その力は凄まじく、尻尾で天空の星々の3分の1を掃いて集め、それを地上に投げつけることが可能であるという。

悪魔、すなわち「サタン」と同一の存在として描かれており、神と人類に敵対する存在として位置づけられている。

これら怪物たちの攻勢により世界は焦土と化すが、最終的にはキリストが再臨し、裁きを経て、新天地への道が開かれる。

黙示録における怪物たちは、世界の終末に向かう混沌そのものを体現する存在であり、人類が直面する試練や恐怖を、極端なイメージによって可視化したものといえるだろう。

参考 : 『ヨブ記』『詩篇』『ヨハネの黙示録』他
文 / 草の実堂編集部

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草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

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