イギリスで女性が選挙権を手にしてから、2018年で100年を迎えた。
100年と言えば、人類の歴時の中ではつい最近のことだと言えるのではないだろうか。
イギリスでは20世紀の初め、“サフラジェット”と呼ばれた多くの女性たちが、男性だけではなく自分たちにも参政権を手に入れるため、まさに命を懸けて戦い続けたのである。
この記事では、イギリスでの女性参政運動について調べていきたいと思う。
サフラジェット「テロリストと呼ばれた女性たち」
サフラジェットとは、19世紀末から20世紀初頭にかけて「参政権」を主張する女性団体のメンバーである人々のことを指す。
当時のイギリスでは女性の参政権について「男性に扶養されているのに、どうして参政権を与える必要があるのか」という考え方が当たり前のようにまかり通っていた。
女性たちはその考えに異論を唱え、男女は等しく社会や政治に関われるようになるべきだと主張した。
そんな中、「女性政治社会連合(通称:WSPV)」が発足。
合言葉を“言葉より行動を”とし、各地で集会の開催やチラシの配布、国会への嘆願書の提出などを行っていたが、常に法案は否決され続けていた。
1905年、自由党の集会にてWSPVのメンバー2人が、「女性らしからぬ」態度で集会を妨害したとして逮捕される。
その後も、警察によるメンバーへの暴力行為が続き、WSPVのメンバーたちはもはや直接行動しかないと考えるのである。
抗議活動の一環として、投石やハンガーストライキ、郵便ポストの爆破、放火や器物棄損などを行った。
そのことにより、彼女らは“テロリスト”とまで言われてしまうのである。
女性も、男性と同じように政治に参加し、共に社会を作っていきたいと願っている女性たちが、テロリストの烙印を押されてしまうとは、なんとも不本意なことである。
彼女らの戦いの様子は、映画『未来を花束にして』で描かれている。
(映画『未来を花束にして』予告編)
命を懸けたサフラジェット エミリー・デイヴィソン
エミリー・デイヴィソンは、過激な戦略を行うことで知られたサフラジェットの一人である。
抵抗活動により9回逮捕され、収容中もハンガーストライキ(断食を行うストライキ)などの方法で抗議を続けた。
このことによりエミリーは49回もの強制摂食を受けた。
その方法はかなり惨いもので、全身拘束されながら口や鼻からチューブを入れられ、液状の食物を無理やり流し込まれるというものだった。
あらゆる懲罰に屈しなかったエミリーだが、命をかけた最大の抗議活動を行う。
1913年6月4日に行われたエプリムダービーにて、エミリーはレースの途中、当時のイギリス国王の馬・アンマーの走路まで飛び出していくと、馬の前に立ちはだかった。
馬はそのままエミリーを跳ね飛ばし、彼女は地面に叩き落された。
そのまま病院に搬送されたが、数日後に亡くなった。
エミリーは奨学金で大学へ行き、子どもたちを教える仕事に就いていた、未来ある女性だった。
彼女の葬儀には多くのサフラジェットのメンバーが参列し、墓碑にはサフラジェットのスローガン、“言葉ではなく行動を”が刻まれている。
その後、イギリスは第一次世界大戦へと突入することになるが、その間も女性たちは休むことなく抗議活動を続けた。
女性参政権の獲得 そして、国際女性デー
1918年、イギリスでは「戸主、または戸主の妻である30歳以上の女性」に対して選挙権を与えることを決定した。
この時、21歳以上のすべての男性に普通選挙権が与えられていたので、まだ男女の間に格差があったと言える。
男女ともに21歳以上から普通選挙権が与えられるようになったのは、その10年後の1928年からであった。
1979年にはイギリスで初めての女性首相マーガレット・サッチャーが誕生し、2016年に2人目の女性首相テリーザ・メイが就任している。
このことを見ると、イギリスは世界の中でも比較的男女平等が進んでいるかのように思えるが、女性が政治に関わることを許されてから、まだ100年しか経っていないのである。
そして世界中の女性の権利獲得運動を受け、国連は1975年、3月8日を“国際女性デー”とした。
現在は、国際連合事務総長が女性の充分かつ平等な社会参加の環境を整備するよう、加盟国に呼びかける日になっている。
最後に
この記事では、20世紀初頭に行われたイギリスの女性参政権運動について調べてみた。
日本でも大正デモクラシー以降、婦人参政権運動がさかんに行われたが、実際に女性に参政権が与えられたのは1945年、アメリカによる日本占領政策としての一環としてであった。
サウジアラビアでは、女性が選挙権を得たのはなんと2015年のことである。
世界各国の女性たちが参政権を勝ち取るまでの道のりには、大きな苦難があり、たくさんの犠牲があった。
現代にはまださまざまな男女格差の問題があり、決して完全には平等になっていない世の中であるが、現代では女性にも当たり前のようにある選挙権を戦って手に入れてくれた女性たちが居たことを、忘れないでいたいと思う。
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