目次
カクテルの歴史
酒類をそのまま飲むストレートに対して、氷や器具を使って冷やしながら数種類の酒や飲料、果汁などを混合して作った飲み物(ミクスト・ドリンク)、あるいは温かい飲みものと酒を混ぜたりしたものを総称してカクテルと呼びます。よく知られているものでも3000~5000種類もあると言われています。
そのカクテルの歴史について調べてみました。
カクテルの語源
カクテルという呼び方が使われるようになったのは1700年代とも1800年代ともいわれています。
カクテルの語源については色々な諸説があります。
メキシコ編
メキシコのユカタン半島のカンペチュという町の酒場で、雄鶏の尻尾に似た木の枝でミクスト・ドリンクを作っていた少年がいました。これを見たイギリス人がその名を訪ねたところ、少年は木の枝の呼び方を聞かれたと勘違いして「コーラ・デ・カジョ」と答えました。
これを英語に訳した「Tail of Cook」がもとになり「Cook Tail」になったと言われています。
アメリカ編
アメリカの独立戦争のさなか、ニューヨーク市北部のイギリスの植民地のバーで、女主人は半独立派の大地主の館から雄鶏を盗んでローストチキンを作り、独立軍の兵士に振る舞いました。
その雄鶏の尻尾はミクストした酒の瓶に差して提供しました。独立軍の兵士は雄鶏が独立反対の地主の持ち物であったことに気づき「Viva cock’s tail!(雄鶏のしっぽバンザイ!)」と叫びました。以後この店のミクストドリンクは「コックテール」と名付けられ、カクテルの語源となったと言われています。
フランス編
ニューオリンズの薬局では病人用にラムをベースにした卵酒がはやっていました。フランス人はこれを「コクチェ」と呼びました。
病人以外でもこのコクチェがはやり、いつしか混ぜ物をした飲み物が「コクテール」と呼ばれたと言われています。
カクテルが初めて登場した文献
1748年のロンドンで出版された小冊子「The Squire Recipes」に「Cocktail」とは「ある酒に別の材料を混ぜて、新しい味を作り出した飲み物」という記述があります。
カクテルという言葉が掲載された文献で最古のものは、1806年のアメリカのニューハドソン地区で発行された週刊新聞「The Balance and Columbian Repository」で、5月6日付の紙面に「民主党候補者がcock tailを飲んで選挙戦を頑張っている」と報じています。
市民からどんな飲み物かという問い合わせに対し5月13日に回答し、日本ではそれにちなみ5月13日が「カクテルの日」になりました。
古代から存在したカクテル
古代ローマではワインを水で薄めたり、スパイスなど混ぜ物をして飲んでいました。
古代エジプトではビールにハチミツやショウガを加えて飲んでいたそうです。
紀元前640年ごろの中国の唐では、ワインに馬乳を入れた乳酸飲料を飲む習慣がありました。
古来よりお酒に飲み物や食材を混ぜて飲むことが行われていました。昔はは酒の製造技術が劣っていたためにお酒はストレートで飲むには値しなかった、また風味の補正とともに劣化を防止するための手段であったと言われています。
9世紀ドイツでは白ワインに果物、砂糖、薬草を加えて飲まれました。
中世(12~17世紀)ヨーロッパではワインやスピリッツなどに、薬草を入れて温めて飲むホットドリンクが流行しました。
パンチボウル
1630年ごろ、現代でも飲まれているドイツのカクテルボーレに似たカクテルがインド人によって発明されました。これがパンチです。
蒸留酒のアラックをベースに砂糖、ライム、スパイス、水の5つの材料を大きなパンチ・ボウルに入れてミックスし、注ぎ分けて飲むものです。パンチの語源は「5つ」というインド語の「Panji」が英語に転訛されたものだと言われています。
このパンチがインド在住の東インド会社のイギリス人(1658年に彼らが考案したという説もあり)に好まれてイギリス本国へと伝わります。ベースの酒をワインやラムに変えたり、レモンやライム、そのほかスパイスなどのアレンジを加えられます。インドよりも寒いイギリスではホット・パンチが流行します。
製氷機の発明
蒸留酒の製造技術が発達すると様々なレシピが増え、社交界でカクテル浸透します。が、この当時使われた氷は川や湖の氷でした。
現代のような器具を使って氷で冷やして作るミクスト・ドリンクの形態は1879年の製氷機の発明が寄与しました。氷が容易に手に入るようになるとシェイクやステアという技術と結びついて、現在スタンダードと言われるカクテルの多くが19世紀半ばから20世紀初頭に誕生しました。
カクテルの急速な発展
アメリカ人によって発明されたカクテルは、19世紀後半からはマンハッタンやマティーニが人気となります。が、禁酒法の時代(1920~1933年)に入ると官憲から逃れて地下のもぐり酒場の営業に嫌気がさしたバーテンダーたちがヨーロッパに渡ります。第二次世界大戦が終わるころにはヨーロッパでも盛んにつくられるようになり、イタリアではベリーニ、フランスではキールなどのカクテルが生み出されました。
1950代以降カクテルは急速に発達します。アメリカで氷を使ったフローズン・カクテルが流行ります。ウオッカ・トニック、ワイン・クーラーなど甘みがありながらもライト感覚な風味が人気となります。
70年代はホワイト・レボリューションが起こります。ウオッカ、ジン、ラム、テキーラなどのホワイトスピリッツをベースにした口当たりの良いカクテルが主流となります。
80年代はヘルシーでダイエットに特化した、社会風潮と結びついたジュースやソーダ割りなどの、よりライトはカクテルが流行します。
90年代は流通の発達とともにフレッシュ・フルーツを使ったカクテルや、新しいタイプのフルーツ・リキュールも生まれ、フレッシュでフルーティーなカクテルが世界的に流行します。
21世紀の現代はフレッシュでフルーティーなカクテルと共に、スタンダード・カクテルも好まれ、多彩で多様なカクテルを味わえる時代と言えます。
日本におけるカクテルの歴史
日本に初めてカクテルが渡来したのは明治初期で、このころは鹿鳴館や横浜などの海外渡航船が出入りする港町のホテルなど、限られた場所や人たちに出される特別なお酒でした。
一般市民の間でカクテルが知れ渡るようになったのは大正元年です。
昭和に入り東京、大阪などの大都市にバーは続々と登場しますが、口にできるのは富裕層でした。その後、太平洋戦争によってバーは一時期消え去ります。
戦後の1950年、トリス・バー(爆発的な人気を呼んだ庶民的なバー)が誕生しカクテルが注目されるようになります。それからカクテルのファンは拡大します。
60年代半ばになると飲酒を楽しむ女性も増え出し、カクテル人気は高まります。
70年代は海外旅行ブームも相まって、トロピカルカクテルが多く紹介されました。
80年代以降、スタンダードカクテルと共に、ソーダやトニック、ジュース割りなどのシンプルなカクテルが人気となります。
90年代後半になると流通の拡大でフレッシュ・フルーツを使ったカクテルも多く広まり、多彩な風味を満喫できるようになります。
カクテルの分類
飲み干す時間による分類
ショートカクテル
シェイクやステアをして、主にカクテルグラスに氷を入れないで注がれます。時間をかけないでできるだけ冷たいうちに味わいます
ロングカクテル
タンブラーやロックグラスに氷を入れた状態で味わるコールドタイプと、お湯割りなどのホットタイプのカクテルがあります。ショートタイプに比べてゆっくり味わうタイプです。
ロングカクテルのスタイルによる分類
・サワー : スピリッツにレモンジュースとシロップを加えたもの
・フィズ:スピリッツやリキュールにレモンジュースとシロップを加えタンブラーに注いでソーダで割ったもの
・コリンズ:フィズと同じ作り方だが、容量が大きなグラスにそそぐためソーダの割合が多い。
・スリング:スピリッツにレモンジュースとシロップを加え、水やソーダを注いだもの。お湯で割る場合もある
・トデイ:シロップを入れたグラスにスピリッツを入れ水を加えたもの。お湯で割る場合は香辛料を加える
・リッキー:スピリッツにライムやレモンを絞り入れソーダ水を加えたもの。
・オンザロックス:オールドファッショングラスに大き目の氷を入れスピリッツを注いだもの
・フラッペ:クラッシュアイスに甘口のリキュールを注いだももの
・プースカフェ:数種類の比重の異なるリキュールを混ざらないように何層にも重ねて注いだもの。ストローで飲みます。
・パンチ:ワインやスピリッツベースにリキュール、ジュース、フルーツを加えてパンチボウルにたっぷり作るもの
カクテルのベース
カクテルのベースとなるお酒です。
ベースのお酒にカシスやカンパリといったリキュールや果汁などを混ぜてカクテルは作られます。
ジン
大麦、ライムギ、ジャガイモなどを原料とした蒸留酒。ジュニパーベリー(ねずの実)の上に流すことで独特の香りづけがされる。
代表的なカクテル:ジントニック
ウオッカ
40度近くあるがクセのない蒸留酒。オレンジ、グレープフルーツ、アップルなどのジュースなどとも相性が良い
代表的なカクテル:スクリュードライバー、ブルドッグ
ラム酒
サトウキビで作られた蒸留酒、独特の甘い香りと味がある。色によりホワイトラム、ゴールドラム、ダークラムと分類される
代表的なカクテル:ラムコーク、XYZ
テキーラ
メキシコのハリスコ州でアガベと呼ばれる竜舌蘭から作られる蒸留酒。
代表的なカクテル:マルガリータ
ウイスキー
大麦、ライムギ、トウモロコシなどの穀物を麦芽の酵素で糖化、発酵させて蒸留したもの。
地域の違いでスコッチ、アイリッシュ、カナディアン、バーボン、ジャパニーズと分類される
代表的なカクテル:ゴッドファーザー、アイリッシュコーヒー
ブランデー
果実酒を蒸留して作ったお酒の総称。主に白ワインを蒸留して樽にいれ、熟成して製造します。ワインから作られるほかにアップルブランデーやチェリーブランデーなどもある
代表的なカクテル:アレキサンダー、サイドカー
カクテルに使用する道具
グラス
カクテルグラス、シャンパングラス、ゴブレット、リキュールグラス、サワーグラス、タンブラー、オールドファッショングラス、コリンズグラス
ツール
ジガー、バースプーン、シェイカー、ミキシンググラス、ストレイナー、ミキサー、
バーテンダーフレンド、スクイザー、ビターズボトル、
カクテルの作り方
カクテルの代表的な作り方は一般的に4つの技法があります。
ビルド
直接グラスに作ります
シェイク
シェイカーを振って作ります
ステア
バースプーンで手早くかき混ぜて作ります
ブレンド
ミキサーで混ぜて作ります
世界の人気カクテルランキング(2020)
3000~5000種類以上あると言われるカクテル。
その中でもイギリスのDrinks Internationalが発表する世界のバーにおける人気カクテルランキング「The World’s Bestselling Classics 2020」の中からTOP12を紹介します。
12位 ギムレット
ジンの王道のショートカクテル
ジン45ml、ライムコーディアル15ml
11位 モスコミュール
日本でも人気の定番ウオッカロングカクテル
ウオッカ45ml、ジンジャーエール適量、ライム
10位 アペロールスプリッツ
イタリアの定番食前酒「アペロール」のポピュラーな飲み方のロングカクテル
アペロール1/2、プロセッコ(スパークリングワイン)1/2
9位 モヒート
日本でも人気の程よい甘さに低アルコールなロングカクテル
ラム30ml、ライム・ミントの葉・砂糖・ソーダ適量
8位 マンハッタン
カクテルの女王と呼ばれるウイスキーの定番ショートカクテル
ウイスキー2/3、スイートベルモット1/3、アロマティックビターズ1dash、チェリー
7位 マルガリータ
世界的に最も有名なテキーラのショートカクテル。グラスの縁にあしらわれた塩が味を引き締めます
テキーラ1/2、ホワイトキュラソー 1/4、ライムジュース 1/4、塩
6位 エスプレッソマティーニ
近年人気を集めるコーヒーカクテルの火付け役となったショートカクテル
ウオッカ20ml、コーヒーリキュール20ml、アイスエスプレッソ20ml、砂糖1tsp
5位 ウイスキーサワー
伝説的なバーテンダー、ジェリー・トーマスが1862年に著書で公開したサワー系ショートカクテル
ウイスキー45ml、レモンジュース20ml、砂糖1tsp、オレンジ、チェリー
4位 ドライマティーニ
「カクテルの王様」と称される日本でも人気の高いジンのショートカクテル
ジン4/5、ドライベルモット1/5、オリーブ
3位 ダイキリ
文豪ヘミングウェイが愛したラムベースのショートカクテル
ラム3/4、レモンジュース 1/4、砂糖1tsp
2位 ネグローニ
世界的なジン人気に押され、6年連続2位のイタリア生まれのジンベースのロングカクテル
ジン30ml、カンパリ30ml、スイートベルモット30ml
1位 オールドファッションド
近年のウイスキーカクテル人気で6年連続1位のロングカクテル。基本的にはアメリカンウイスキーで作るのが王道。
ウイスキー45ml、各砂糖1個、アロマティックビターズ1dash、オレンジ、レモン、チェリー
バーテンダーとソムリエの違いって?
お酒の専門職のバーテンダーとソムリエ、その違いは何でしょう?
「バー」は酒場、「テンダー」が優しい相談者、バーテンダーはこの2つの言葉の造語です。
「バーテンダー」とはお酒を提供して、優しく話し相手になってくれる人を指す言葉です。
それに対して「ソムリエ」とはレストランなどで客の求めるワインの相談にのって提供する専門職を指します。ソムリエは食事とワインに関することでしか相談相手になってくれませんが、もしかしたらバーテンダーなら人生の相談にも乗ってもらえるかもです。
雰囲気の良い素敵なバーでバーテンダーと小粋ない会話もよいものです。
若しくは、自宅にスピリッツやリキュール、グラスやツールを揃えて、大事な人とカクテルタイムを楽しむの一興かもしれませんね。
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