仕事のスキルアップを目的として、このたび建設業経理事務士の資格に挑戦してみました。
この資格を取得することで、建設業の経理事務に携わる上で必要な初歩的スキルを身につけることができます。
いわゆる建設簿記というジャンルです(簿記には大きく商業・工業・建設分野が存在、工業と建設分野は概ね同じ)。
建設業経理事務士には3級と4級があり、2級以上になると「建設業経理士」と名前が変わります(事務が抜けて、経理の専門性が高まる模様)。
ただ名前が変わるだけではありません。建設業経理士資格の保有者がいると、その企業は経営審査の評価が高まり、公共工事の入札などでも有利になるのです。
そのため、建設業経理士については就職・転職に活かせることはもちろん、会社によっては資格手当の支給対象にもなっているため、非常に人気の高い資格となっています。
とは言え、千里の道も一歩から。筆者が今回挑戦したのは初歩中の初歩である建設業経理事務士4級。
これだけだと就職に際しては何の評価にもならず、中には「せめて3級から挑戦しろよ」と思われた方もいるでしょう。
しかし、何事も基本が大事。ここを疎かにしてしまうと、後々(特に3級受験勉強時)につまづきやすくなります。
(筆者は現時点で日商簿記の3級を持っていますが、その下の初級をしっかり勉強したことで、3級の受験勉強もスムーズに行きました。急がば回れとはよく言ったものです)
そこで今回は、建設業経理事務士4級について
(1)試験対策
(2)当日出題された問題と解き方
(3)受験データ(試験日程、受験料など)
を紹介。あくまで個人の感想・体験談ですが、皆さんがスキルアップを目指す参考として、お役立ていただければと思います。
(1)建設業経理事務士4級の試験対策
建設業経理事務士4級の試験対策に必要な勉強期間は、約2週間から1ヶ月あれば足りるでしょう。
日商簿記の3級または初級(程度の簿記知識)を持っている方であれば、1週間もあれば十分かと思います。
(そもそも日商簿記の3級を持っているなら、最初から3級に挑戦してもいいでしょう。不安であれば3級と4級の併願も可能)
教材は過去問集を1冊、これを1巡(7回分)すれば合格できるイメージです。
勉強法については皆さんそれぞれあるかと思いますが、個人的には「最初に解答を見て『なぜそうなるのか』を逆算する」のがおすすめ。
ここでの目的は、そもそも簿記とは何なのかを知ることより、試験に受かることのはず。
繰り返し解答を見て「なぜそうなるのか」という共通点(法則)を身体に教え込むような感覚でしょうか。
理論的・観念的なことは後から自然と理解できるようになるので、まずは基本の繰り返しが大切です。
(2)当日出題される問題とその解き方
さて試験当日。過去問を1~2巡された方であれば、ほぼそのままの問題が出て来ます。
今回の試験は5問、その内容は以下の通りでした。
第1問:仕訳(しわけ)
ある取引ごとに、貸借を仕訳していきます。例えばこんな問題。
例1)現金1,000,000円を元手に商売を始めた。
答1)
現金(資産) | 1,000,000 | 資本金(資本) | 1,000,000 |
例2)銀行から2,000,000円の融資を受け、利息20,000円を差し引いた金額が当座預金に振り込まれた。
答2)
当座預金(資産)
支払利息(費用) |
1,980,000
20,000 |
借入金(負債) | 2,000,000 |
……といった感じで、借方(かりかた。仕訳の左側)と貸方(かしかた。仕訳の右側)かを仕分けます。
勘定科目(現金、資本金、当座預金、借入金、支払利息など)について、資産・負債・資本(純資産)・収益・費用のどれに属するのか、そしてどのように仕訳すべきかをしっかり暗記する必要があります。
資産……プラスなら借方(左)、マイナスなら借方(右)
負債……プラスなら貸方(右)、マイナスなら借方(左)
資本……プラスなら貸方(右)、マイナスなら借方(左)
収益……プラスなら貸方(右)、マイナスなら借方(左)
費用……プラスなら借方(左)、マイナスなら貸方(右)
でも、慣れてしまえばそんなに難しくありません。例えば現金は資産なので、現金がからむ取引であれば、先に現金の位置を決めてしまえば後は反対側に置くだけです。
例3)現場作業員の賃金250,000円と、本社事務員の給料180,000円をそれぞれ現金で支払った。
答3)
労務費(費用)
給料(費用) |
250,000
180,000 |
現金(資産) | 430,000 |
この場合、現金(資産)が減少しているので貸方(右)に合計金額の430,000円を記入し、空いている借方(左)に労務費(現場作業員の賃金)と給料(本社事務員の給料)をそれぞれ記入すれば仕訳が完了します。
とまぁそんな具合に、ひとつずつ勘定科目の属性を覚えていけば大丈夫です。
第2問:穴埋め(簿記概論)
そもそも簿記とはどういうものであるか、短い文章の虫食いに言葉を入れていきます。
例えば……
簿記には記入方法によって単式簿記と複式簿記がある。
貸借対照表は、ある一定時点(普通は年度末)での財政状態を示すものである。
貸借対照表の借方(左側)には資産、借方(右側)には負債と資本(純資産)が記載されている。
損益計算書は、ある一定期間(年度始めから終わりまで)の経営成績を示すものである。
損益計算書の借方(左側)には費用、貸方(右側)には収益が記載されている。
……こんなことがあちこち虫食いになっているので、適宜埋めて下さい。仕訳をマスターしていれば、簡単に解けるでしょう。
第3問:穴埋め(損益)
こちらも穴埋めですが、今度は表の数値が虫食いになっています。
3年度分の期首データ(資産・負債・資本)、期末データ(同じく)、収益と費用、そして最終的な損益が並んでいるので、虫食い部分を埋めて下さい。
ここで「資産=負債+資本」「損益=期末資本-期首資本」という式を覚えておけば、簡単に埋められるでしょう。
ただ、慌てていると足すべきところと引くべきところを間違えることもあるため、スイスイ解けても必ず見直して下さい(実際、筆者は見直しで勘違いに気づきました。危ない危ない)。
第4問:試算表
月途中まで記入された合計試算表と、月後半の取引データを統合して合計残高試算表を作成せよ、という問題が出ました。
これだけ聞いても何のこっちゃと思う方もいるでしょうが、勘定科目ごとに仕訳を行い、それを整理してまとめていきます。
百聞は一見に如かず、回答を見ていけば基本的に足し算と引き算だけなのですぐ理解できるでしょう。
第5問:精算表
試算表が完成したら、精算表で年間収支を締めくくります。
これも最初は「理屈はいいから、とにかく写せ」を繰り返すうちに法則が見えてくるもの。
どうでもいいですが、左下にある「当期( )」という欄のカッコ内に黒字を意味する「純利益」と書きこむとき、ちょっと嬉しくなります(ちなみに逆は純損失。年間の赤字を意味します)。
……以上で試験は終了です。試験時間は1時間30分、慣れれば30分くらいで終わるので、30分かけてゆっくり見直しするといいでしょう。
いくら早く終わっても、試験開始1時間後までは退室できません。また、試験終了10分前~試験終了までも退室できません。
試験終了まで残っていれば、問題用紙と計算用紙の持ち帰りができるので、よほど急ぐ方以外は持ち帰って答え合わせしてもいいですね。
(3)受験データ(試験日程、受験料など)
建設業経理事務士(3、4級)の試験は年に1回、たいてい3月ごろに実施されます(1~2級については上半期にもう1回実施)。
申込時期は前年の11月中旬から12月中旬、忘れたころに受験票が届く感覚でした。
試験会場は以前だとけっこう選択肢があったのですが、コロナ禍の影響により会場が減少。ちょっと不便になっています。
ちなみに令和3年度の試験データは以下の通りです。
【試験日】令和4年(2022年)3月13日(日)
【時間割】
1時限目:
9:30~11:00……1級(財務諸表)、4級
2時限目:
12:00~13:30……1級(財務分析)
12:00~14:00……3級
3時限目:
14:40~16:10……1級(原価計算)
14:40~16:40……2級【合格発表】令和4年(2022年)5月12日(木)
【受験料】
1級(1科目受験)……8,120円
1級(2科目同時受験)……11,420円
1級(3科目同時受験)……14,720円
2級……7,120円(3級との同時受験は12,620円)
3級……5,820円(4級との同時受験は10,220円)
4級……4,720円
※いずれも税込み
その他詳細については公式ホームページをご参照願います。
また、情報が随時更新されることもあるため、実際に受験する際はご確認下さい。
終わりに
以上、建設業経理事務士について紹介して来ました。
試験についてはすべて解けたし、見直しして勘違い部分も修整できたので合格は間違いなしでしょうが、やはり合格通知が来るまではソワソワしてしまいますね。
次回(来年)は、コロナ禍で中止にならなければ3級に挑戦したいものです。
皆さんも、もし建設簿記について興味が湧いたらチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
※公式ホームページ:
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