地理

なぜ山中に「塩」のつく地名が多くあるのか?

塩は人間の生命活動において、必要不可欠なものである。

日本においても古代から塩は重要視され、「」のついた地名も数多くある。そして塩の主要産地は沿岸部である。

しかし、なぜか山中にも「塩」のついた地名は数多くあるのである。

一番不思議なのは長野県である。

なぜ山中に「塩」のつく地名が多くあるのか?

※長野県 塩尻市

長野は海がない県であるが、なんと長野県が「塩」の地名が一番多くある県なのである。

地図検索で「長野県 塩」と入力すると、塩尻、塩田、塩野、塩川・・など多くの地名が表示される。

なぜ山中に「塩」のつく地名が多くあるのか?

長野県以外でも、栃木、山梨、岐阜などの海なし県でも「塩」のつく地名が多いのである。

それは一体なぜなのだろうか?

塩の道

なぜ山中に「塩」のつく地名が多くあるのか?

塩尻宿 wiki c

これには日本人の食生活が大きく影響しているようである。

日本の国土は主に山岳で、日本人の主食は古来より米である。しかし米には塩分は含まれておらず、塩を沿岸部から内陸の山間部へ輸送する必要があった。

そのために、古代から「塩の道」が発達していったのである。

つまり、山間部についている「塩」の地名は、かつては「塩の通り道」だったということを伝えているのである。

例を上げると、四国の讃岐山脈北側には「塩入」という集落があり、そこはかつては讃岐沿岸部でとれた塩を阿波の山間部に運ぶための入り口だったとされている。

長野県の「塩尻」は、かつては「塩の道」の終点であったころから、この地名がついたとされている。

他の説

他にもいくつか説がある。

長野県大鹿村の鹿塩温泉では「山塩」がとれる。ただし温泉(塩泉)からとれる塩なので、全国的な例は多くなさそうである。

また、土地の形などから「しぼんだ、しおれた」という意味合いでつけた地名に「塩」という当て字がつけられた、という説や、内陸部の人間は「塩」に対する憧れが強かったために「塩」という地名を多くつけたという説もある。

ただ、現在の長野~新潟間の千国街道は、かつては信濃で「糸魚川街道」越後で「松本街道」と呼ばれており、江戸時代は、信濃の松本藩が日本海産の塩を運ばせた主要ルートであったことがわかっているので、「塩の道」説がやはり正しいようである。

参考文献 : 地理の話大全

 

アバター

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. アバター
    • 名無しさん
    • 2022年 6月 21日 6:01pm

    愛知県の山奥に塩津と云う集落があります。その昔鉱泉に塩が入りかなり賑わいをみたそうです。現在も温泉があり近くに塩田と呼ばれる所があります。集落も過疎には勝てず数軒のみですが温泉旅館は二軒営業しています。

    2
    0
  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 【夜を統べる月の神】 月読命の謎 「なぜ三貴子の中で全く存在感が…
  2. おせんべい(煎餅)の歴史について調べてみた
  3. 3万年前の航海を徹底再現!旧石器時代について調べてみた
  4. 戦国大名の家紋について調べてみた
  5. 平家が壇ノ浦の戦いで滅びたというのは本当なのか
  6. 【飛鳥・奈良時代の日本】 なぜ唐を意識せざるを得なかったのか?
  7. 重陽の節句について調べてみた
  8. 【スエズ・パナマ】 世界の運河について調べてみた

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

【ナチス・ドイツ狂気の全貌】ホロコーストについて調べてみた

ホロコーストとは=ナチスドイツがユダヤ人達に組織的に行った大量惨殺の事である。ナチス…

【ローマ屈指の令嬢の悲劇】 ベアトリーチェ・チェンチはなぜ斬首されたのか?

約400年前、ローマ屈指の名門貴族の令嬢が斬首の刑に処されました。彼女の名はベアトリ…

直江状とは? 「なぜ上杉景勝は徳川家康と対立したのか」

軍神「上杉謙信」の後継者と目されながらも、上杉景虎との家督争いを征することでようやく越後の大名となっ…

『6人の女の城』 シュノンソー城 ~女城主たちの数奇な運命を刻んだ優美な名城

まるでファンタジーかおとぎ話の世界に迷い込んだかのような美しいヨーロッパの古城。そんなお…

八丈島で天寿を全うした武将・宇喜多秀家

秀吉の一門衆へ宇喜多秀家(うきたひでいえ)は、豊臣政権では五大老の一人も務めた戦国大名で…

アーカイブ

PAGE TOP