海外

亡くなった台湾のパンダ 「団団(ダンダン)」

パンダ外交

中国は、長年パンダを国際外交の道具として使ってきた。

1972年、アメリカ合衆国ニクソン大統領が中国を訪問した際に1組のパンダが送られ、アメリカ国民もパンダのその可愛さに魅了された。

そこで中国はすかさず「パンダは使える!」と、その後10年にわたって様々な国にパンダを送ってきた。イギリス、日本、フランス、ドイツ、スペイン、メキシコなど世界各国へパンダが平和の使者として派遣され、各国でその可愛さを振りまいたのである。

1961年にはパンダの「姫姫」がWWFのロゴマークに採用され、自然動物保護の象徴になった。
1980年代中期には中国は国の発展のため、パンダビジネスを開始し始めた。

1984年中国は「10年レンタルシステム」を始めた。一頭のパンダに毎年100万ドルを要求し、生まれたパンダは必ず中国に返還すると言う規定を設けた。

日本においても、パンダの一挙一動はニュースになる。赤ちゃんが生まれたとなれば大きな話題となり、全国から名前を募集したり、パンダブームが再熱するのだ。
パンダが病気になった時も多くの人の注目を集める。

筆者が住んでいた台湾においても同様である。

台北市立動物園のパンダ「団団」日本語読みすると「ダンダン」だろうか。

実は最近、脳に異常が発見され、11月19日に亡くなった。

心配なダンダン

亡くなった台湾のパンダ

写真 : ダンダン

2022年8月、18歳のダンダンが癲癇を発症した。そして脳の検査すると異常が発見されたのである。

10月16日には後ろ足に力が入らなくなり、食欲も落ち、運動量も日に日に低下した。

その後の検査で脳に悪性の腫瘍が見つかった。

腫瘍はだんだん大きくなっていたようで一度回復に向かったが再度悪化した。パンダが脳腫瘍の手術をした例はなく、獣医の中でも悲観的な意見が多かった。

MRIをとる際にも麻酔を打たないといけないが、その麻酔ですらダンダンの体力を奪ってしまうので、何度も検査して危険にさらすことはできなかったという。

台湾は中国のパンダ医師団に相談したが、前例のない症状のため有効な治療法はなく、痛みを緩和し、病状の進行を遅らせる薬物治療が良いのではないかと言うことになったそうだ。

亡くなった台湾のパンダ

画像 : ダンダン頭部のMRI

亡くなった台湾のパンダ

画像 : MRIを受けるダンダン

中国と台湾は難しい関係にある。中国は台湾の返還を求めているし、台湾は中国からの独立を目指している。

中国人にとってもパンダは国の宝であり、台湾に派遣したパンダが前代未聞の病気になり、亡くなったことは大きな話題となった。

パンダの寿命は平均して20年くらいである。人工飼育のもとでの30年生きるパンダは30頭もいないそうだ。

薬物治療を続けていたが、11月17日に4度のてんかん発作を起こし、その後も断続的に発作が続いた。医療チームは最終的に治療を断念して麻酔で眠らせ「団団」は同日午後1時48分に心肺停止により亡くなった。

 

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 【ロシアを擁護するトランプ】中国は台湾に侵攻する意欲を増強させる…
  2. フラダンスの効果 「健康治療法としても関心が集まる」
  3. 「パンダが日本から消える?」外交官となった神獣の数奇な歴史 〜パ…
  4. 昔強かった国を調べてみた【モンゴル,スペイン,オーストリア,アル…
  5. 【50年連続で不自由な国ランクイン】 中国の身分証における監視社…
  6. 『トランプ関税』日常生活への影響はどこまで? ~4人家族の負担は…
  7. 台湾の「人気インフルエンサー」が起こした愚かな事件
  8. 台湾の新型コロナウイルス対策方法 「買い物の実名登録制度、感染者…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

なぜ中国はウクライナ戦争で沈黙を続けるのか?裏にある計算とは

2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、国際社会に大きな衝撃を与えた。多くの国…

【共通点が多いのに正反対?】 加藤清正と藤堂高虎の対照的な人生

戦国時代の築城名人といえば、加藤清正・黒田官兵衛・藤堂高虎である。その中でも歳が近く(6歳違…

新幹線とその経済効果について調べてみた

新幹線 による交通網の発展(出展URL http://www.ashinari.com/20…

【笑い死にから憤死まで】歴史に残る「変な死に方」8選

人間だれしも、最後に行きつくところは「死」である。ある人は病床で眠るように、またある人は自宅…

纏足(てんそく)から解放された女性たち 【女性の足を小さくする中国の奇習】

纏足で命を落とした人たち ~台湾前回の記事 : 纏足(てんそく)とはなにか 【女性の足を…

アーカイブ

人気記事(日間)

人気記事(週間)

人気記事(月間)

人気記事(全期間)

PAGE TOP