海外

「#MeToo運動」とは何か? ~台湾の女優、モデルが被害を公表

#MeToo運動とは?

画像 #Me too運動 イメージ

#MeTooミートゥー」とは、セクハラや性的暴行などの性犯罪被害を受けた人たちが、その体験を告白・共有する際にSNSで使われるハッシュタグである。

アメリカの市民活動家タラナ・バークが、2006年に若年黒人女性を支援する非営利団体「Just Be Inc.」を設立。そして、家庭内で性虐待を受ける少女からの相談を受けたことをきっかけに、2007年に性暴力被害者への支援を促進するために「Me Too」運動を提唱したことが始まりである。

私も被害者です」という意味のミートゥーをハッシュタグをつけて投稿することで、性暴力被害を公表し、抑止力にしようというものだ。

そして性暴力事件についての実態を明らかにする目的もあった。#MeToo運動は85を超える国で広がっていったのである。

今回は、筆者が在住する台湾における「#MeToo運動」について解説しよう。

台湾におけるMeToo運動

今年の5月下旬頃から、台湾のメディアでは毎日と言っていいほど「女性へのセクハラ問題」が取り上げられている。これは芸能人だけではなく、政治家なども含まれている。

台湾の女優・Wさんが、プロデューサーから性的被害を受けていたという。5年前の話だというが、その当時彼女は売り出し中で、名前が知られるにはコネクションが必要だった。しかし当時は仕事への影響や報復を恐れて、話す勇気がなかったという。

告発するきっかけとなったのはNetflixのあるドラマだった。そのドラマの主人公である女性は、仕事場でセクハラを受けている女性に「名乗り出て事件を明らかにしなさい」と励ました。そしてその女性は勇気を出してセクハラを訴えるというストーリーだった。

そのドラマが放送されてから数週間後、台湾の数人の女性たちが立ち上がったのである。

画像 : イメージ

政治家、社会運動家、大学の教授などの知識階級、そして芸能界に至るまで、セクハラ加害者の名前が次々と明るみに出ることとなった。
こうして、100件以上のセクハラ事件の実態が晒されたのである。

政治の世界だけでなく、芸能関係の人物が訴えられた事は、さらに多くの人の注目を集めた。

今年6月19日には、台湾のモデル・Amber Changが、フェイスブックで一人のタレントから10年以上にわたってセクハラを受けていたと公表した。(※参考 https://mothership.sg/2023/06/nono-break-showbiz/

ただし彼女は該当の人物については詳しく触れる事はなかった。だが、事件の内容について詳しく記述したため、ネット上で「誰が犯人なのか?」と話題となった。

そして、ある一人の有名芸能人が浮かび上がってきたのだが、あっさり認めるわけもなく知らぬ存ぜぬで通そうとした。
そこで、被害者のモデルはメディアにさらに呼びかけることにした。

すると20人以上の女性が彼女に連絡を取って「該当人物に自分もセクハラ行為をされた」ということを告白したという。
同月21日、該当芸能人は謝罪と芸能活動の休止を発表した。

この幾人かの勇気ある女性による#Metoo運動は、台湾社会にも大きな影響をもたらしている。

過去にも多くの女性がこういった問題において沈黙し、自分の過去を無かったものにしようともがいてきた。

画像 女性たちのHELP イメージ

このMeToo運動によって、社会のセクハラ問題についての見方が少しずつ変わりつつある。

勇気を出して立ち上がった女性たちを支持できる場面が多ければ多いほど、多くの女性が長年心に持ち続けてきた苦痛を解放できる機会が増える。

SNSやメディアが支持し、加害者を糾弾することが抑止力となり、社会の意識へと変わりつつある。
人と人とが関わる中で、多くの摩擦が生じることは避けられない。だが、性別や社会的地位によって上位のものが下位の者を抑え付けるという事はあってはならない。

それぞれが、快適にストレスのない社会生活を送るためにも、一人一人が貢献者または監視者としてお互いを保護しあう必要がある。

 

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 近年の中東における「中国」の存在感を振り返る ~日本にとって脅威…
  2. なぜオランダには風車がたくさんあるのか?
  3. シンガポールはライオンがいないのに、なぜ「獅子の街」なのか? 【…
  4. 兵馬俑で「エアジョーダン」が出土した!?
  5. 【ナチズムに反旗を翻した芸術家】 ハンス・ベルメールとは
  6. 州史上最悪の虐待を生き延びた「Itと呼ばれた子」 ~10日間の絶…
  7. 意外と知らないオルゴールの歴史 「スイス発祥、日本での広がり」
  8. トランプ政権のイラン空爆が「台湾有事」にも波及? 〜緊迫する2つ…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

実体験【首こり 肩こり】を解消する薬&グッズ 6選

首こり、肩こりに効果があったコスパが良いものを紹介します自分は長年とんでもない肩こりと、…

イギリスの国旗の歴史について調べてみた

我々日本人は「イギリス」という名称をよく使用する。「イギリス人のジェームズさんです。」「ビートルズ…

駄菓子人気ランキング「しぶこの“タラタラしてんじゃねえよ”バカ売れ」

渋野日向子選手の全英女子オープンの優勝は日本女子プロ界42年ぶりのメジャー優勝の快挙!日本全国で“し…

『虎に翼』 寅子の覚醒!史実モデル・三淵嘉子は、なぜ裁判官を目指したのか?

朝ドラ『虎に翼』では、寅子が「裁判官にしてください」と司法省に押しかけていましたが、寅子のモデル・三…

「乙巳の変」の真実 ~古代日本と大陸の深い繋がりとは?

古代日本は、大陸(中国や朝鮮)の政治的動向に影響を受けながら、独自の国家を築いてきました。今…

アーカイブ

人気記事(日間)

人気記事(週間)

人気記事(月間)

人気記事(全期間)

PAGE TOP