中国と台湾
世界中で注目されている中国と台湾の関係性は、近年ますます悪化している。
両国の軍隊の動きが活発化しているのはその一環であり、筆者が住む台湾では、軍事演習の影響で軍機が飛ぶ頻度が増加している。
このような状況において、筆者は台湾人から見た中国のリアルな姿に触れる機会が多くなっている。
台湾では最近、独立志向の新しい総統・頼清徳(らいせいとく)が就任した。
しかし、選挙の争点は台湾国内の政治というよりも、中国との関係に重点が置かれていた。
次期総統を選ぶポイントとして、中国に対して全面的に抵抗するか、平和主義に基づいて同化を図るかという選択があったと筆者は感じている。
今回は、国民の身近な視点から、中国と台湾の小競り合いについて取り上げる。
輸入禁止合戦
中国は様々な理由で、台湾の農産物や海産物を輸入禁止にしてきた。
その中でも、2021年のパイナップル輸入禁止は記憶に新しいところであろう。
例年、中国は台湾のパイナップル輸出先の90%を占めていた。前年のパイナップル輸出量は46,000トンだった。その中国が輸入禁止となると、パイナップル農家への打撃は計り知れない。
経緯はこうだ。2021年2月26日、中国税関は「台湾のパイナップルに害虫が発見された」と発表し、3月1日には台湾パイナップルの輸入禁止を決定した。
3月から6月は台湾パイナップルの収穫全盛期であり、この時期に輸入禁止が通告されたため、大量のパイナップルが国内で余ることとなった。これにより価格は暴落し、二束三文となったパイナップルは売れ残り、廃棄されることとなった。
この状況に対して立ち上がったのが、日本であった。
日本では少子化の影響で、例年は小ぶりのパイナップルしか輸入しない傾向にあったが、この年は大ぶりのパイナップルも輸入された。
2021年1月から7月にかけて、日本の台湾パイナップル輸入量は例年の7倍に達し、半年間で910トンを輸入した。これに次ぐ2位は香港の613トンであった。
台湾国内での動き
台湾国内でも、パイナップル輸入禁止に対する反論と救済活動が行われた。
台湾の農業機関は、「前年に中国に輸出した6200回のうち、確かに13件に害虫(カイガラムシ)が確認されたが、輸出されたパイナップルの99.79%は合格点であった」と主張した。
さらに、「このカイガラムシは中国本土でも確認されているため、輸入禁止の理由としては不合理である」と台湾側は反発した。
この理不尽な扱いに対して、国内外からの支援が始まった。
当時の蔡英文総統は積極的にパイナップルの販促を行い、台湾のパイナップル農家を守るための活動を展開した。
蔡英文は「吃鳳梨,挺農民」をスローガンに掲げ、自らパイナップル畑に足を運び、農家との交流を通じて台湾パイナップルの品質を世界に発信した。
また、蔡英文は「この中国の突然の通知は、一方的なものであり、正常な輸入のあり方について再考する必要がある」と述べ、パイナップル問題に対する遺憾の意を表明した。
台湾の料理人やレストランも独自の対応策を打ち出している。例えば、台北の有名シェフである洪師傅は、パイナップルと牛肉の組み合わせを試行錯誤し、新しいメニュー「パイナップルビーフヌードル」を開発した。この料理は多くの試行錯誤の末に完成し、台湾国内外で大きな話題となった。
さらに、台湾政府は農家支援のために3500万ドルの補助金を提供し、日本、オーストラリア、シンガポール、ベトナム、中東諸国などからもパイナップルの注文を受け付けた。
最後に
このように迫害を受けてきた台湾パイナップルだが、このパイナップル戦争を通じて、台湾の農産物が持つ品質と、それを守ろうとする国内外の動きが改めて注目された。
今年も甘くて美味しい世界水準の台湾パイナップルの収穫期が始まっている。
参考 :
Taiwan Promotes ‘Freedom Pineapples’ in Response to Chinese Import Ban
China’s ban on Taiwanese pineapples leads cross-strait trade into troubled waters
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