時代と身長
人類の平均身長は、国や時代とともに変化し続けている。
2021年の調査によれば、現代の日本人の成人男性(25~64歳)の平均身長は171.4cm、成人女性(25~64歳)の平均身長は158.07cmである。(※参考 e-Stat)
日本の歴史を振り返ると、縄文時代の人々の平均身長は、男性で約157cm、女性はそれよりも約10cm低かったと推測されている。
その後、弥生時代から古墳時代にかけて、日本人の平均身長は徐々に高くなり、男性で約163cm、女性で約152cmに達したとみられている。この変化には、大陸からの渡来人の影響や、食生活の改善が寄与したと考えられる。
ところが、その後の時代には再び日本人の平均身長は低下し、江戸時代には男性が約155~158cm、女性が約143~146cmほどだったとされている。(※参考 江戸東京博物館)
当時の日本では、肉食が制限されていたため、たんぱく質の摂取が不足していたことが原因と考えられる。
4000年前の古代中国人の身長
2022年、中国で夏季文化フォーラムが開催され、多くの考古学研究チームと学者が集まり、夏文化の研究における最新の成果が共有された。(※ただし現時点では、夏王朝の実在は完全には証明されていない)
このフォーラムでは、中国の竜山時代から二里頭時代(新石器時代後期から青銅器時代初期 おおよそ紀元前2500年~紀元前1500年)にかけて、河南省に存在した文化の調査結果が発表された。
この調査では、当時の人々の生活環境や栄養状態が明らかになり、その影響が人々の身長や健康状態にどのように表れていたかが示された。
遺骨を調べてみると、多くの未成年者や授乳時の女性について、長期にわたっての肉不足(たんぱく質不足)、そして新鮮な野菜の栄養が不足していたことが分かった。
その因果関係もあってか、病気への抵抗力が低かったことも分かった。そして、未成年者は脳膜炎にかかる可能性が高かったという。
また、古代人の身長は、現代人よりもかなり低かったと長い間考えられていた。
しかし、驚くべきことに、当時の男女の平均身長は現代人と比べて少し低い程度で、さほど変わらなかったことが明らかになったのである。
竜山時代の男性の最高身長は約175cm、女性の最高身長は約168cmであり、発掘された遺骨を平均しても現代の中国人の平均身長とさほど変わらなかったのである。
この結果は、従来の予想を覆すものでった。
さらに遺骨を調査したところ、多くの歯が生前に脱落していたり、虫歯やエナメル質の発育不全、歯垢が多く見られた。これには、当時の食生活において炭水化物の摂取が多かったことや、口腔衛生が十分に保たれていなかったことが影響していると考えられる。
また、地面に正座する習慣があったことが伺われ、一部の遺骨には退行性関節炎や脊椎の歪みといった骨変形が見られることから、当時の人々が長期間にわたる高強度な労働で、体を酷使していた可能性が高いという。
終わりに
これらの調査結果により、4000年前の古代中国において、栄養不足や過酷な生活環境が人々の身体にどれほど大きな影響を与えていたかが明らかになった。
特に、当時の栄養状態や生活環境にもかかわらず、身長が現代人とさほど変わらなかったという発見は驚きである。
この結果は、歴史研究に新たな視点をもたらし、古代人のみならず人間の身体発達の可能性についても、新たな視点を提供してくれるだろう。
参考 : 江戸東京博物館, e-Stat, 中時新聞網
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