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父の子を14歳から毎年出産させられ「4児の母」になったアシュリー

アシュリー

画像 : 5歳のアシュリー イメージ 草の実堂作成

画像 : 事件が起こったアメリカ合衆国・ミズーリ州 wiki cc TUBS

2008年10月、アメリカ・ミズーリ州の大型スーパーに「ライナーハート」と名乗る20代の女性が駆け込み、警察への助けを求めた。

「18歳の妹アシュリーが、狭いキャンピングカーで毎日のように父から性的虐待を受け、毎年のように子どもを産ませられている。

最近、4人目の子どもが死産した。

すでに亡くなっている2人の子どもの遺体は、クーラーボックスに入れられ、ミズーリ州ハリソンビルの祖母の家のガレージに埋められている。

この状況に耐えられないので助けてほしい。」

彼女は、父親であるダニエル・ライナーハートの次女で、妹アシュリーと家族を地獄のような環境から救いたい一心で、両親の隙をついて家出をしたのだった。

キャンピングカー生活でネグレクト

画像 : キャンピングカー public domain

1990年、アシュリー・ライナーハートは、父ダニエルと母リンダの間に4人姉妹の末娘として生まれた。

当時、ライナーハート一家6人はキャンピングカーで放浪生活を送っていた。

ダニエルは仕事を探すため、家族を連れて各地を転々とする生活を選んだが、家計は常に困窮していた。

4人の娘たちは劣悪な環境の中で育ち、十分な健康的な食事を与えられることもなく、学校にもほとんど通わせてもらえなかったという。

両親による娘たちへのネグレクトが続くなか、父ダニエルは末娘アシュリーが5歳になった頃から、彼女に性的虐待を始めたのである。

それは家族で住むキャンピングカーの中で公然と行われ、妻と3人の姉たちはダニエルからの支配と暴力に怯え、身を潜めることしかできなかったのだった。

14歳から毎年出産させられ続けたアシュリー

5歳から性的虐待を受け続けていたアシュリーは、13歳でとうとう父ダニエルの子どもを妊娠してしまう。

2004年3月、14歳のアシュリーはキャンピングカーで女の子を出産する。

病院には連れて行ってもらえず、ダニエルと母リンダ、姉のひとりが立ち会ったという。

その4ヶ月後、アシュリーの子どもがキャンピングカーのソファから床に転落するという事故が起こる。

ダニエルは赤ん坊の泣き声を聞いていたにも関わらず放置し、病院に行かせず、子どもは翌朝、息を引き取ってしまったのだった。

ダニエルは子どもの遺体を毛布に包んでクーラーボックスに入れ、シリコンで密封して、オクラホマ州のインディアン居留地に埋めてしまう。

それでも父のアシュリーへの虐待は止まらず、翌年2005年8月、16歳になったアシュリーは2人目の子どもをトラックで出産したのだった。

誕生した男の子は順調に成長し、その後、いびつなキャンピングカー家族の一員となってしまったのである。

病院に行かせてもらえず、子どもは病死・死産

画像 : 3人目の赤ちゃんを看病するアシュリー イメージ 草の実堂作成

さらに2006年11月、アシュリーは17歳で3人目の子どもをキャンピングカーで出産。

難産であったため、父ダニエルが胎盤を排出させようとアシュリーの腹部に圧力をかけ、へその緒をはさみで切り、糸で結ぶという応急処置を行った。

アシュリーは、生まれたばかりの男児に喘息の兆候があることに気づいた。

その後、男児は生後1か月で重篤な症状に陥る。

呼吸が苦しそうな状態が続き、発熱、胸部と肺のうっ血が確認され、母乳を吐き、嘔吐物には粘液が混じるようになるなど、命の危険が迫る状況となった。

アシュリーはダニエルに病院に連れて行くよう懇願したが、

「子どもの身体にチューブが繋がれた無惨な姿は見たくない。」という理由で拒絶され、薬局の市販薬が買い与えられただけであった。

3ヶ月間、重体の我が子を懸命にケアし続けたアシュリーだったが、2007年2月、子どもは彼女の腕の中で息を引き取ってしまう。

アシュリーは泣きながら子どもの遺体を毛布に包み、テディベアのぬいぐるみとミニカーのおもちゃを添えて、棺に見立てた箱の中に収めた。

その後、箱は父ダニエルによってクーラーボックスに入れられ、彼の母親の自宅ガレージに掘られた穴に埋葬されたのだった。

それ以降もダニエルは末娘への虐待をやめることはなく、アシュリーは18歳で4人目となる女児を妊娠する。

2008年4月、産気づいたアシュリーだったが、難産で強烈な痛みを伴い、死産してしまう。

ダニエルは救急車も警察も呼ぶことなく、子どもの遺体を再びクーラーボックスに入れてシリコンで密封したのだった。

14歳から毎年のように父の子を出産し続けたアシュリーは、4人の子どもの母親となったが、生き延びることができたのは2番目に生まれた男児だけであった。

「娘は自分と関係したがっていた」法廷で主張したダニエル

画像 : 法廷で裁かれるダニエル イメージ 草の実堂作成

4人目の子どもを死産してから半年後、家出したアシュリーの姉が警察に通報したことで、アシュリーは息子とともに保護され、13年にも及ぶ虐待生活からようやく解放されたのだった。

警察は捜査を開始し、その3ヶ月後の2009年1月1日、ミズーリ州ハリソンビルにあるダニエルの母親の家のガレージで、乳幼児の遺体が入った2つのクーラーボックスを発見した。

ところが、逮捕・起訴されたダニエルは、法廷で「アシュリーとの関係は合意の上だった。娘は自分と関係を持ちたがっていた。」と容疑を否認したのである。

検察がダニエルに「彼女が関係を望んでいると、なぜ思ったのか?」と尋ねると、

彼は、以下のように弁明した。

「自分がシャワーを浴びていると、アシュリーはいつも壁に開いた穴から覗いていた。

そして、私の肩や背中をさすってくれたから、求めているとわかった。

もし、私が反社会的な人間なら、アシュリーだけでなく、他の3人の娘ともそういう関係になっているはずだ。

私が関係を持ったのは、アシュリーだけだ。

彼女が求めてきたから、仕方なくそういうするしかなかった。」

娘のアシュリーに嫉妬していた母リンダ

画像 : 娘のアシュリーに女性として嫉妬していた母リンダ イメージ 草の実堂作成

ダニエルの妻であり、アシュリーの母であるリンダも、「夫による娘への虐待を報告しなかった」として逮捕・起訴された。

検察から、夫の犯行を容認し続けた理由を問われたリンダは、こう答えた。

「私が生んだ4人の子どもはすべて娘だった。

息子が欲しかったのに、叶わなかった。

アシュリーのすべての出産に立ち会い、手伝った。

でも、夫が毎日のようにアシュリーと関係し、かわいがる姿に嫉妬していた。」

この証言は、その異常性から陪審員や傍聴人を驚愕させた。

法廷でのこの事件の様子は、全米のメディアで大きく報道された。

娘の感情を無視し続け、罪の意識が欠如したダニエルと、虐待されている娘に嫉妬するリンダに対し、「史上最低の親」として怒りと非難が殺到したのだった。

裁判官が異例の発言

2010年6月、ダニエルは殺人罪を含む7件の罪で有罪判決を受け、「終身刑」と「22年の禁錮刑」の追加刑が宣告された。

半年後の2011年1月には、リンダにも禁錮7年の判決が下された。

判決文を読み上げた裁判官は、最後にリンダに対して異例の個人的な感情を述べた。

「現在の法律上、あなたに科せられるもっとも重い刑は禁錮7年である。

しかし、たった7年の刑しか科せられないことに、強い苛立ちと憤りを感じている。」

裁判官がこう述べたことは、異例の事態として話題になった。

一方、息子夫婦の判決を聞いたダニエルの母親は、メディアの取材にこう語った。

「ダニエルは悪くない。悪いのは孫のアシュリーと妻のリンダだ。

アシュリーは、もしダニエルに嫌なことをされていると思っていたなら、本人に言うべきだった。

何も言わなかったアシュリーに責任がある。

リンダも仕事にばかりかまけて家庭を顧みなかった。

ダニエルと娘たちを長期間キャンピングカーに置き去りにしていたのだから。」

この発言は取材にあたった記者をも絶句させ、世間で大きな議論を巻き起こした。

アシュリーのその後

画像 : 結婚式を挙げるアシュリーたち イメージ 草の実堂作成

20歳になったアシュリーは、両親によって奪われた13年間の子ども時代と人生を取り戻すため、学校に復学し、2010年5月に中学校を卒業した。

その後、彼女は傷ついた心身を専門家とともに癒しながら自立を目指し、レストランで働き始めた。

そこで牧場を営む男性と出会い、彼はアシュリーの過去をすべて受け入れたうえで、彼女を幸せにすると誓ったのだった。

2人は2011年8月に結婚。

結婚式には、裁判中に彼女を支えた検察官や事件に関わったメディア関係者も駆けつけ、祝福の言葉が贈られた。

また、アシュリーが出産した4人の子どものうち、唯一生存している男の子は、彼女と夫が引き取り、新たな家族として生活をスタートさせた。

2024年現在、34歳になったアシュリーと19歳になったその息子は、新しい家族とともに穏やかで幸福な生活を送っている。

参考 :
STATE v. RINEHART (2012)  | FindLow
Danial Rinehart, Alleged Child-Killer and Molester, Claims Daughter Wanted to Have Sex With Him  | CBS
Father Charged In Abuse, Incest, Murder
文 / 藤城奈々 校正 / 草の実堂編集部

 

藤城奈々 (編集者)

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ライター・構成作家・編集者
心理、人間関係のメカニズム、スピリチュアル、宇宙
日本脚本家連盟会員

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