2017年10月、ある天体が人々を騒がせた。太陽系外から飛来した謎の天体が、太陽系内を通過したニュースである。
ハレー彗星など、定期的に飛来する彗星は珍しくないが、この天体は偶然、太陽系を通過したものと考えられている。これまでも、彗星や小惑星が恒星間を移動していて、太陽系内を通過することもあるという理論は存在していたが、これが実際に起きたことで、研究者には驚きを持って迎えられた。
一方「オウムアウア」と名付けられたこの天体が、ただの小惑星ではないというニュースも相次いだ。地球外知的生命体の宇宙船ではないかという指摘である。そして、2018年1月、オウムアウアについての観測結果がまとめられた。
太陽系外からの使者
オウムアムアとは、ハワイの言葉で「使者」という意味がある。なんとも含みを持たせたネーミングだが、専門家もこのチャンスを無視できなかったようで、本格的な調査が行われた。それというのも、オウムアムアが地球外生命体の探査機の可能性があると判断されたためである。探査機ならば、何万年と時をかけて恒星間飛行をしてきてもおかしくはない。
1977年に打ち上げられたNASAの無人探査機「ボイジャー」も現在は太陽圏外に達し、このままのコースを維持できれば太陽系にもっとも近い恒星系「ケンタウルス座α星」まで8万年で到達するといわれている。
オウムアムアが注目されたのはその形状だ。長さが推定400m~800mに対し、幅は10分の1ほどで葉巻型をしていた。太陽系の小惑星やこれまでの彗星では見られない形をしており、そこから探査機説がささやかれるようになった。
オウムアムアの発する周波
探査機説に拍車をかけたのが、オウムアムアの表面密度が高く、金属や岩石などでできていることだ。しかも、72~102MHzの周波を発していた。これは、FMラジオで使用される周波数帯に近い。
そこで、オーストラリア西部にある低周波電波望遠鏡「マーチソン・ワイドフィールド・アレイ(Murchison Widefield Array/MWA)」を使ってこの低周波について調査を行った。オーストラリア・カーティン大学のスティーブン・ティンゲイ教授たちの研究チームがわずかな望みを賭けて電波の目を向けたのだ。
また、ロシアの投資家ユーリ・ミルナー氏もオウムアムアに興味をひかれたひとりである。ミルナー氏は、地球外知的生命体の調査プログラム「ブレークスールー・リッスン(Breakthrough Listen)」を主宰しており、オウムアムアが人工的な電波を発信しているのかの調査を行った。
ブラックナイト 衛星の謎
しかし、太陽系内、しかも地球の周りを周回している謎の天体は他にもある。
それが「ブラックナイト衛星」だ。
約13,000年前から地球の極軌道近くで地球を周回しているといわれるこの物体は、1954年にアメリカの新聞2紙がその存在を報じたことで知られるようになった。アメリカもソ連も宇宙産業に着手しようとしていた矢先で、まだ人工衛星の打ち上げに成功していないこの当時、諸説囁かれた謎の物体である。
ブラックナイト、「黒騎士」とは、出自が明らかでない騎士が紋章を塗りつぶしていたことに由来する。このブラックナイトの存在をアメリカ空軍が報告したことに始まった。人類初の人工衛星打ち上げは、旧ソ連のスプートニク1号により成し遂げられたが、アメリカ海軍からもスプートニクではない「謎の人工衛星」の存在が報告されている。
ブラックナイトの発する電波
発見当初は「旧ソ連のスパイ衛星ではないか?」という説もあったが、その人工衛星から発信されていた電波を解析すると、なんと13,000年前から存在していたことが発覚した。今ではNASAもその存在自体は認め、いつから存在していたのかについては言及しなかったものの、現在も「謎の衛星」の画像を公開している。
さらに驚くべきことに、ブラックナイト衛星は現在も電波信号を発しているというのだ。この衛星については存在は明らかにされているが、あまりにも謎が多いため、現在に至るまで様々な議論が交わされている。
オウムアムアの正体
さて、話をオウムアムアに戻そう。
結論からいえば、何かを発見することはできなかった。もちろん、生命体の存在も観測できず、ただの小惑星だったようだ。ブレークスールー・リッスンでも、2017年12月13日に10時間にわたり電波望遠鏡をオウムアムアに向けたが、期待した結果は観測されていない。
ティンゲイ教授は、可能性は限りなくゼロに近いとしながらも「高度な知的生命体が惑星間を行き来し、通信に電波を使用する宇宙船を開発していることは考えられる」と話している。また、観測の結果、オウムアムアの正体については惑星間を移動する間に浴びた宇宙線により、表流水を多くを失った彗星ではないかといわれている。
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