教育

学習塾の歴史について調べてみた

学習塾の起源は平安時代

学習塾の歴史について調べてみた

※土佐光起筆『源氏物語画帖』より「若紫」

飛鳥時代以降、日本は律令国家を目指し人材育成のための学校組織が作られます。
大学寮と呼ばれその学校は都に設置され、主に「明経道、明法道、文章道、算道」の四道を教えました。

1200年前の平安時代が学習塾の起源と言われています。「おん位の制」により大学寮で学ぶ必要のなかった有力貴族などが家庭教師や学習塾などで、和歌の素養など貴族としての教養・知識を学んでいたようです。
万葉集や紫式部の源氏物語、清少納言の枕草子など多くの文学作品を生み出した平安時代では学習塾によって高度な知識を育んでいたようです。

この時代に初等教育の教科書とも言われる往来物(おうらいもの)が生まれています。
往来物とは、公家など文筆に携わる人々の往復書簡(往来)の形式をとった文例集に由来しています。

戦乱期の教育

戦乱の世になると教育は軽視され学習塾は身を潜めます。武士が力を持つようになったこの時期は寺院が教育の中心となりました。

武士は8~15歳ぐらいまでに寺院で学び、武家の家訓は家庭で代々伝えられました。
庶民でも商人はこのころから寺で学び始めます。

江戸時代の教育

再び学習塾が盛んに開かれようになったのは、世の中が安定した江戸時代に入ってからです。

藩校

藩校は明治の廃藩置県までに全国に270校設けられ、儒教の教えに従って武士の教育を行いました

私塾

江戸時代は、杉田玄白、吉田松陰、大塩平八郎、福沢諭吉など多くの学者を輩出し、彼らはこぞって私塾を開校しました。
確認されているだけで1500以上の私塾があったようで、朱子学、国学、洋学などを学びました。

寺子屋

学習塾の歴史について調べてみた

※寺子屋の筆子と女性教師

平安時代、一般の庶民のこどもが学習をするには、に住み込む学んでいました。この寺に住み込みこどもを寺子と呼んでいました。江戸時代になると寺以外で、学問を教える施設が増え、寺を離れて子供に勉強を教える施設が増え、それを寺子屋と呼ぶようになりました。この頃の寺子屋は手習い塾のことで、「よみ・かき・そろばん」を学ぶところでした。

この寺子屋の教科書として往来物が盛んに作られます。
農村向けに「田舎往来」「農業往来」「百姓往来」、商人向けに「商売往来」「問屋往来」「呉服往来」「万祥廻船往来」など職種によって学ぶ教科書が異なり、その種類は7000種類もあったとされています。
寺子屋の数も全国に爆発的に増え15000以上にもなったのは、庶民の暮らしも安定してきた反映といえます。

明治~戦後の教育

近代国家を目指し欧米にならって教育制度を整えていった日本では義務教育が始まり学校制度が充実していきます。塾の数は減り、教育は主に学校で行われるようになります。

現代の学習塾

学習塾の歴史について調べてみた

第一次塾ブーム

高度経済成長期の1960年代、生活に余裕ができた親世代がこどもに学歴をつけて良い就職先をみつけてあげたいと受験競争が激化し、学校の成績を上げるための補修スタイルの塾が爆発的に増えました。

第二次塾ブーム

1970年に入ると高校や大学への進学率が増加します。こどもの成績に差ができはじめ、「落ちこぼれ」という社会現象が生まれます。

塾の形態は補修スタイルと優秀な生徒を受け入れる進学塾のスタイルに二極化しました。

第三次四次塾ブーム

1980年代、1990年代、公立中学校の校内暴力やいじめが社会問題になり都市部の私立高校の人気が高まりました。

これに伴って塾はさらにブームとなり、私立有名校への合格率を謳う塾生3000名以上の大規模進学塾などが生まれます。

2000年~2010年、ゆとり教育により学力低下を心配する保護者によって有名私立高校を目指す進学塾の人気が高まります。
現在の少子化社会では、塾は生徒の確保を争うようになり、中小規模の塾の倒産が相次ぎ、大手の進学塾のシェアが拡大しています。

外国人からみた日本の学習塾

欧米の人は「学校に週5日も通ってさらに学習塾に通う意味がわからない」とかなり日本の学習塾に対して批判的です。

これは欧米の学校の授業の進め方や進学の仕方と大学の入学試験の方法が、日本とかなり異なるために生まれた感想のようです。
欧米では移民などで学力が足りていないと恥ずかしく思うことなく、下の学年で学ぶこともあります。また優秀な学生には飛び級制度が用いられたり、優秀なクラスに編入するなど、同じ年齢の生徒が同じカリキュラムを学ぶという日本の学習制度と大きくかけ離れています。足並みをそろえる必要がないために学校だけで十分だという考え方に至るわけです。

学習の目的も知識を増やすためではなく、自分の考えを確立して、それを活かして発表や活躍できる人を作ることに重きを置いています。
ドイツ人の保護者は宿題で復習・予習をするので補習塾は必要ないとも言っています。

またアメリカの大学入試は一度の試験だけで生徒を選ぶわけではありません。高校の成績や課外活動、本人のエッセイ、SAT(大学進学適性試験)などを見て合否の判定を行います。
詰め込みで暗記を重視して、大学入試を目標とする日本の学習制度と考え方が大きく異なっています。

少子化やIT化で職業の選択も多様になっている昨今、日本の教育の在り方を見直す時期がきているのかもしれませんね。

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