新年を迎え、正月の一連行事を無事に終えた頃に店頭に姿を見せるのは、ショーケースの中に並べられた「バレンタインチョコレート」だ。
宝石のように並べられた「バレンタインチョコレート」は、洗練されたデザインを武器に、人々の関心を一気に惹きつける。
「バレンタインデー」に女性から男性にチョコレートを贈る習慣は、気になる相手へ気持ちを伝えられる機会でもあるため、緊張しながらも一生懸命『本命チョコ』を選ぶ人も多いが、社会人になってからは『義務チョコ』という日本特有の「バレンタイン」文化に奮闘している女性も多い。
やはりここにも建前、気遣いという日本人の心情が関係しているようだ。
目次
愛の尊さを説いた「バレンタインデー」の始まりとは?
『恋人たちの日』とも謳われる「バレンタインデー」の始まりは、ローマ帝国時代に起きたある一人のキリスト教司祭の勇気ある行動にある。
その人物とは、『兵士たちの軍事力の妨げになる。』という理由から、結婚を断固禁じていた当時のローマ皇帝の命令に抵抗し、兵士たちの結婚式を執り行い続けたウァレンティヌス司祭(ヴァレンタイン司祭とも呼ばれる。)である。
人々に愛の尊さを伝え続け最後までローマ皇帝の指示に従わなかった彼は、紀元前269年2月14日に処刑されてしまうが、後にウァレンティヌス司祭の勇気ある行動は人々から賞賛の声を受けることとなる。
そして彼の死を悼むと共に「聖バレンタインデー」と称された2月14日は、世界的なイベントへと発展を遂げていった。
販売戦略から誕生した「バレンタインデー」とチョコレートの関係
「バレンタインデー」が日本に定着するようになったのは、昭和30年代に入ってからのことである。
日本のチョコレート会社が売り上げ向上を目的とした販売戦略の案として、世界的に有名な「バレンタインデー」を取り入れることを決定する。
これにより「バレンタインデー」とチョコレートの結び付きを確立させ、さらに人々の購買意欲を高めるために『女性から男性へ贈ろう』『チョコレートで愛情を伝えよう』といった印象的なキャッチフレーズを掲げたのである。
愛情を表現するハート型のチョコレートの製造が始ったことも、『バレンタインデーにはチョコレートを渡して告白する』という日本独自の習慣が根付く切っ掛けとなった。
周囲への心遣いから自分へのご褒美と目的を変えつつある「バレンタインチョコ」
日本独自の「バレンタイン」文化の象徴といえば、友人と交換し合う『友チョコ』、建前という理由から配られる『義理チョコ、義務チョコ』である。
特定の人に渡すよりも相手に失礼のないように、礼儀として職場で顔を合わせる建前という配慮から『義理チョコ、義務チョコ』の準備が暗黙のルール化している所も、周りの空気を読む日本らしい風潮だ。
しかし昨今の日本の「バレンタイン」事情にも変化が見えつつある。
海外からの輸入チョコレートブランドの導入が活発化したことで「バレンタインチョコ」に求める人々の思考が、『美しさ』といった芸術性に重点を置くようになり、いわゆる『映えるチョコレート』が購入条件の大半を占めるようになった。
世界で名を連ねるショコラティエの手掛けるチョコレートブランドへの関心も多く寄せられ、頑張った自分へのご褒美として高級チョコレートを購入する女性が急増している。
このような『自分チョコ』を購入する流れは男性の間でも話題を呼び、男性が自分のためにチョコレートを購入することを『俺チョコ』と表現する製菓会社もある。
世界と日本の「バレンタインデー」の違い
女性から男性にチョコレートを贈り告白をする「バレンタイン」文化が根付いているのは、日本と韓国のみであり、世界中で祝われる「バレンタインデー」の多くは、男性から女性へプレゼントを贈るという形が一般的である。
薔薇の花束、ぬいぐるみや風船、メッセージカードなどが男性から女性に届けられるほか、当日にレストランを予約して二人きりで過ごす時間を作ることも重要とされている。それは結婚後も変わらない。
世界の「バレンタイン」事情を調べていくと、世界各国にはその国独特の面白い「バレンタイン」文化が根付いていることも分かる。
例えば、ドイツでは『幸福のシンボル』と考えられている『豚』をモチーフとした人形やお菓子を一緒に贈ることが定番であり、メキシコでは意中の女性の家に男性が自ら出向き、家の前で歌を贈るなど粋な演出も実際に行われている。
また中華圏の国では2月14日の「バレンタインデー」に加え、旧暦の7月7日に当る『七夕バレンタイン(チャイニーズバレンタイン)』というイベントがある。
本来は、子供の成長と健康を守る『床母(ツァンムー)』という神を祀る日であったが、日本でもお馴染みの『織姫と彦星の物語』と、西洋から伝わった「バレンタインデー」の要素が融合する形で『七夕バレンタイン(チャイニーズバレンタイン)』が誕生した。
よって中華圏の国では1年に2度「バレンタインデー」を祝う習慣があり、通常の「バレンタインデー」同様にプレゼントの準備に励む男性たちの姿が多く見受けられる。
「バレンタインデー」にプレゼントを贈る相手は必ず恋人か配偶者と決まっている海外の姿を知ると、同僚や友人など限り全員にチョコレートを贈るという日本の姿が特殊に見えてくることもある。
そこには『ホワイトデー』の有無といった文化の違いも影響しているが、日本特有の「バレンタイン」文化を楽しむ人も多く、そんな日本の「バレンタイン」文化に憧れを抱く人もいる。
しっかりと自分へのご褒美も忘れない『自分チョコ』や『俺チョコ』の需要も、長く続く自粛生活の環境により、今後も急激に伸びていくことが予想できる。
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