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角田光代のオススメ小説 「年間読書数100冊超えの筆者が選ぶ!」

この記事では、年間100冊以上の小説を読む本の虫・アオノハナが、作家別のおすすめ作品についてご紹介していきたいと思います。

国内国外ジャンル問わず、さまざまな小説を読みふけってきた筆者だからこそ、他の王道ランキングとは一味違った、オススメの作品をご紹介できるかと思います。

第3弾は、不安定に揺れ動く人間の心の機微を鋭く切り取り、さまざまな社会問題を取り扱っている、角田光代さんの作品について選んでいきたいと思います。

角田光代さんのプロフィール

まず初めに、角田光代さんのプロフィールです。

角田光代
1967年神奈川県生まれ。
早稲田大学第一文学部卒業。1990年「幸福な遊戯」で、海燕新人文学賞を受賞し、デビュー。

2003年「空中庭園」で婦人公論文芸賞、2005年「対岸の彼女」で直木賞、2012年「かなたの子」で泉鏡花文学賞を受賞するなど、さまざまな文学賞の受賞歴を持つ。
その他の著書には、「笹の舟で海をわたる」「平凡」「愛がなんだ」「紙の月」など。

角田光代作品の魅力といえば、作品を通して描かれる、壮大なテーマでしょう。

主人公はたいてい女性なのですが、彼女らは皆、傍目にはわかりにくいけれど、非常に大きな問題を抱えて生きています。
ですが、彼女らの悩みは、いわゆる分かりやすいもの(失業した、とか、離婚した、とか)ではなく、周囲からの共感を得ることができません。

なかなか理解してもらえないからこそ、人知れず苦しんでいる。
そんな彼女らの悩みや苦しみ、その中でも感じることのできる喜びなどが、とても丁寧に、かつドラマチックに描かれていて、読者は物語を読み続けるうちに、いつのまにか主人公たちに感情移入しているのです。

まさに、“人間の複雑さ”を描けば、右に出る作家さんはいないと思います。
特に女性の心理描写については、卓越していると思います。

角田光代 オススメ作品① 『八日目の蝉』(2007年刊行)

 <あらすじ>

不倫相手の子供を誘拐した女・希和子の3年半の逃亡劇と、事件後、大人になった子供・恵理菜の葛藤を描く2章から構成されている。

サスペンス調だが、出生、愛情、家族などの日常的な要素が、独特の切り口で描かれる。

<おすすめポイント>

筆者が初めてふれたのは、永作博美さんと井上真央さんがW主演していた、映画版「八日目の蝉」でした。
映画を観て非常に感動し、原作を読んでみたいと思ったことがきっかけで、角田光代さんを知りました。

原作では、映画よりもそれぞれの登場人物の心の葛藤が深く描かれており、それぞれの登場人物がおかれた立場について、より深く考えることができます。
特に、物語の途中で希和子が逃げ込んだ、“エンジェルホーム”で過ごした日々を描いた場面が、実際にこんな場所があるのではないか?と妙に生々しかったです。

そして、注目していただきたいのは、この小説のタイトル。

蝉はふつう、成虫になってから、7日間しか生きることができません。
8日目を生きることができた蝉にとって、世界はどんな風に見えるのでしょうか。

角田光代 オススメ作品② 『坂の途中の家』(2016年刊行)

<あらすじ>

最愛の娘を殺した母親は、私かも知れない。

虐待事件の補充裁判員になった里沙子は、子供を殺した母親をめぐる証言にふれるうち、いつしか彼女の境遇に自らを重ねていくのだった。

社会を震撼させた乳幼児虐待事件と、<家族>であることの光と闇に迫る心理サスペンス。

<おすすめポイント>

筆者にはまだ子供がいないのですが、周囲で小さいお子さんを育てている友人や、親戚に話を聞くと、皆口をそろえて、「子供を虐待して死なせてしまった母親のニュースをよく見るが、他人事とは思えない」と言っています。

小さいお子さん、特に乳幼児の間は、母親と子供がずっと家で2人きりで過ごしている、というケースは珍しくありません。いくら、旦那さんがいるといっても、昼間は仕事に行っていますし、子供と向き合う時間は、圧倒的に母親の方が多いからです(これから、そんなケースがどんどん減っていったらいいですね)。

育児は本当に大変なことです。知らず知らずのうちにストレスがたまり、つい子供にキツい言い方をしてしまったり、手をあげてしまいそうになることもあるそうです。

そんな、人知れず苦しんでいる母親たちの悲鳴が聞こえてきそうな物語でした。

子供を虐待死させてしまう可能性は、もしかしたら誰もが孕んでいる問題なのかな…と考えながら読んでいました。
裁判が進んでいく様子や、裁判員に選ばれた人たちが話し合っている場面は、とても臨場感があり、ページをめくる手が止まりません。

なかなかの長編小説ですが、読み応えのある作品をお探しの方には、ぴったりだと思います。

角田光代 オススメ作品③ 「夜をゆく飛行機」(2006年刊行)

<あらすじ>

どうしようもなく、家族は家族。うとましいけど憎めない、古ぼけているから懐かしい。

変わらないようで変わりゆく、谷島酒店一家六人のアルバム。作者初の長編小説。

<おすすめポイント>

角田光代さんの作品と言えば、どちらかといえば、社会問題を取り扱った重々しいものが多いのですが、この作品はほのぼのとしていて、安心感を持って読み進めることができます。

谷島家には4人の姉妹がおり、末っ子の里々子の視点で物語が進みますが、この4人姉妹がみな個性的で、読みながらくすくす笑えるようなお話です。

この作品以降の角田光代作品は、重く、暗い雰囲気が漂う物語が多いので、「重くて暗い話は苦手」という方にも、このお話はおすすめです。

日本中、どの家庭にも起こりうる事件や、自分たちの意思とはうらはらに、どんどん家族の形が変わっていく様子を、どこか懐かしい気持ちで眺めることができそうです。

最後に

この記事では、筆者の独断と偏見による、「角田光代」作品のおすすめをピックアップしてみました。

読了後、心の中に深い印象を残してくれる、角田光代作品。
彼女の書く作品はいつも、私たちが普段、見てみぬふりをしてしまいがちな問題についてあぶり出し、読者の心を揺さぶります。

現在、最も注目されている作家の1人である、角田光代さん。
最近では、古典の超大作「源氏物語」の現代語訳に挑まれています。

小説の他にも、エッセイなどを多く出版されていますので、ぜひチェックしてみてくださいね。

あなたの心に刺さる一冊がありますように。

 

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アオノハナ

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