平成の巨額投資詐欺事件
近未來通信 (きんみらいつうしん)とは、2006年8月に掲載された新聞全国紙の報道によって、その営業実態が自転車操業であることが大きく取り上げられ、一気に社会問題化した末にスピード破綻した会社です。
この会社の創業者であり代表取締役社長を務めた石井優(いしいまさる)という人物は、詐欺容疑で国際指名手配されていますが未だ逮捕されておらず、一説では中国に潜伏しているとも言われています。
事件当時、平成の巨額の投資詐欺事件として騒がれたこの事件を振り返ってみました。
1100万円で投資家を募集
「近未來通信」は国際電話に使用するプリペイドカードの販売や、通常の固定電話と比較して安価な通話料で利用可能な、IP電話サービスを行うことを喧伝していました。
日本や海外に自社の設備を設けて中継する仕組みを構築し、第一種通信事業者の電話網を介して、契約者に対する低価格の通信サービスを実施する会社という触れ込みで営業活動をしていました。
この内、中継用に設置する通信用のサーバに対しその設置にかかる費用を投資する投資家を募り、投資家には電話サービスのユーザーが支払う金額から配当金を還元し、凡そ2年で元手が取れる投資であると説明していました。
投資家を募るための手段として新聞広告が多数出稿されており、法人でも個人でも投資が可能で、更に居住の地域を問わないとして、投資家に求められた額は口あたり約1100万円前後というものでした。
脱税から実態が明らかに
こうした投資家を募って資金を得ようとする「近未來通信」のやり方には、早い時期から警戒の声が上がっていました。
前述の自転車操業の新聞報道と同時期の2006年8月には、東京国税局が前年度の約1億7,000万円に上る所得隠しを摘発、同社のあきれた事業内容が浮き彫りとなっていきました。
こうした動きの中、徐々に社会問題と化したことから総務省も「近未來通信」に対して、同年10月に事業実態の説明を求めました。
更に翌11月には立ち入り検査が行われ、同社が保有していた通信用のサーバ全2,466台中、実際に使用されていたものは僅かに7台のみであり、05年7月期の同社の売上金約181億円中、通信料の売上は3億円程度であることが報じられました。
近未來通信と契約を行っていた固定電話の契約者数は全国で僅か600名にも満たない数であり、IP電話事業と称しながら、通信を通じたサービスはほぼ行われていない状態でした。
社長は逮捕前に国外逃亡
「近未來通信」の創業者であり代表取締役社長であった石井優という人物は、大学卒業後に日本の製薬会社で営業として勤務した後、自ら会社を起こしたとされています。
「近未來通信」の前身となった会社は1997年に創業され、その事業内容は宝石や毛皮を催し物会場で販売するという、ありがちな訪問販売や連鎖販売の会社だったようです。
この会社が2年後の1997年に「近未來通信」となり、前身の事業で得たノウハウを駆使した大掛かりな投資詐欺に発展していったものでした。
この石井という人物は、当局の捜査の手が及ぶ前に2億円以上の会社の金を持って韓国へと国外逃亡し、その後中国に逃れたものと見られています。
大手マスコミでの広告
「近未來通信」は新聞の全国紙の経済面に元プロ野球選手を起用した大きな枠の広告を出稿、ここで投資家を募りました。
大手の全国紙に広告を掲載することで、多数の投資家の信用を得る事に成功したと言えます。
更にテレビ番組のスポンサーとなり、地上波でのテレビCMも投下して知名度を上げる活動を行っていました。
こうした大手マスコミ媒体を利用することで、いかにも実業としての事業実態がある会社だと、投資家に錯誤させることを巧妙に行ったのでした。
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