犯罪&事件

【沖縄米軍による性犯罪】 沖縄米兵少女暴行事件とは ~日米地位協定の課題

沖縄米兵少女暴行事件とは

画像:嘉手納飛行場。面積は東京国際空港(羽田空港)の約2倍。スペースシャトルの緊急着陸地にも指定されていた public domain

沖縄の米兵による性犯罪は、長きにわたり沖縄を悩ませてきた問題です。

1945年の終戦から現在に至るまで数々の悲惨な事件が発生し、その影響は沖縄の社会に暗い影を落としています。

今回の記事では、なぜこのような悲惨な事件が繰り返されるのか、その背景にある問題点を明らかにするとともに、日米地位協定の課題についても考察していきます。

沖縄の米兵による性犯罪の現実

基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」は『沖縄・米兵による女性への性犯罪』という小冊子を発行しています。

基地・軍隊を許さない行動する女たちの会
https://space-yui.com/

1995年、小学生の女児が米兵3人に連れ去られ、性的暴行された事件(※後述)をきっかけとして、同団体は発足されました。

この小冊子には、1945年から2004年までの沖縄で発生した米兵による性犯罪が記録されており、沖縄が現在も米軍の大きな影響下にあることを示しています。

数多くある米兵による性犯罪の中でもとくに悲惨な事件は、1955年に発生した6歳の幼稚園児・永山由美子ちゃんが誘拐・暴行・殺害された事件です。由美子ちゃんは草むらに放置され、顔面は崩れ、両手は生えた草を握っていました。

沖縄米兵少女暴行事件とは

画像 : 由美子ちゃん事件現場のおおよその位置 public domain

この事件で逮捕された嘉手納高射砲隊に所属する白人の軍曹は、米軍の軍法会議で死刑判決を受けましたが、のちに重労働45年に減刑されています。

この事件以降、周辺の地域で生まれた子どもに「由美子」という名前を付ける親はいなかったそうです。

上記以外にも、目を背けたくなるような事件があります。

1959年には、生後9カ月の乳児が母親の顔見知りの米兵に暴行される事件が発生しました。
米軍の捜査が入りましたが、結局のところ迷宮入りとなりました。

1995年の沖縄少女暴行事件

画像:小学6年生の少女は米兵にサトウキビ畑に連れ去られた public domain

こうした性加害事件は、1990年代にも発生しています。

1995年9月4日、沖縄本島中部で、小学6年生の少女が3人の米兵に襲われ、車に押し込まれました。少女は粘着テープで目と口を塞がれ、手足を縛られたまま人里離れたサトウキビ畑に連れ込まれ、性的暴行を受けたのです。

事件現場は夜になると真っ暗で音も届きにくい場所でした。少女は2メートル近い大男たちに襲われて、恐怖と苦痛を味わったことでしょう。

少女と家族は勇気を持って告訴しましたが、来日した加害者の家族らは「反米感情が強い沖縄での裁判は自白を強制される恐れがある。こんなところに可愛い息子を置いておけない。沖縄以外での裁判を望む」と抗議しました。

この恥知らずな抗議は、多くの人々に強い憤りと絶望感を与えました。

1995年11月、裁判は那覇地裁で始まり、検察側は被告人全員に懲役10年を求刑しました。しかし判決は2人に懲役7年、1人に懲役6年6か月の減刑となったのです。もし米軍の軍法会議にかけられた場合は「死刑」にも該当する重罪です。

あまりにも軽い判決を受けて「日本ではなく、アメリカで裁いてほしかった」という皮肉を込めた声が聞こえてくるほどでした。

なぜ米兵による性犯罪は収まらないのか

沖縄米兵少女暴行事件とは

画像:日米安全保障条約に署名する吉田茂。第6条の規定に従い「日米地位協定」が締結されている public domain

性加害事件は沖縄のみならず、日本全国で大きな反響を呼び、日米地位協定の見直しや普天間基地の移設問題に発展するきっかけとなりました。

日米地位協定とは、正式名称を「日本国とアメリカ合衆国間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」といい、在日米軍の法的地位を定めた協定です。

この協定の「第17条5項c」には、次のような条文があります。

日本国が裁判権を行使すべき合衆国軍隊の構成員又は軍属たる被疑者の拘禁は、その者の身柄が合衆国の手中にあるときは、日本国により公訴が提起されるまでの間、合衆国が引き続き行うものとする

この条文は、「アメリカ側が容疑者を日本側に引き渡す前にアメリカへ逃がせば、日本の司法の手が及ばなくなる」という問題点が指摘されていました。

1995年の少女暴行事件をきっかけに「凶悪犯罪については、容疑が確定する前でも日本側に身柄を引き渡す」という運用面の見直しが行われましたが、見直し後も日本側への引き渡しを拒否したケースがあるため、改善されたとは言えない状況です。

沖縄の米兵による性犯罪をなくすためには、日米地位協定のさらなる見直しや、米軍による厳格な規律の徹底など、課題は山積みです。

沖縄の人々が安心して暮らせる日が一日でも早く来るよう、私たちは沖縄の問題にきちんと向き合い、解決に向けて考える必要があるのではないでしょうか。

参考文献:佐野眞一(2011)「沖縄 – だれにも書かれたくなかった戦後史・下」集英社

 

村上俊樹

村上俊樹

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“進撃”の元教員 大学院のときは、哲学を少し。その後、高校の社会科教員を10年ほど。生徒からのあだ名は“巨人”。身長が高いので。今はライターとして色々と。
フリーランスでライターもしていますので、DMなどいただけると幸いです。
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