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異文化社会の立役者 マレーシアのペナン島 【4つの宗教が混在するジョージタウン】

マレーシアの首都、クアラルンプールから飛行機で約1時間の場所にある、白を基調とした建造物が目印の「ペナン島」。

4〜5時間と時間を要するが、クアラルンプールから出発する長距離バスで「ペナン島」に向かう人もいる。

「ペナン島」へ向かう道中で見える13.5kmのペナン・ブリッジは、世界で3番目に長い橋とされ国際マラソンの舞台にもなっている。

ペナン島

デッキから見たペナン橋の主なスパン。※ペナン・ブリッジ

「ペナン島」の中心街ジョージタウンは、マレーシア最古の都市・マラッカと共にユネスコ世界文化遺産に登録されている。

ジョージタウンは『アートの街』との呼び名も高く、時代の移り変わりを壁画アートで表現されていることでも有名だ。「ペナン島」に暮らす人々の様子と、異文化への理解を保ち続けていることを壁画アートを通して知ることができる。

ペナン島

画像:壁面アート 自転車に乗る姉弟

東洋から西洋の街並みへ変化を遂げる「ペナン島」

「ペナン島」の中心街ジョージタウンを散策していると、イギリスの植民地時代の歴史を物語る白亜(はくあ)の建造物に出会える。

代表的な建造物としては、東南アジアの中で最も歴史が古いイギリス式教会といわれるセントジョージ教会、ペナン博物館、ペナン・シティホールなどがある。

このイギリスの影響を受けた白亜の建造物が、観光客の間で知られるまでには長い時間が掛かった。それまでのジョージタウンの街並みは、植民地時代を終えたあとの復旧はおろか、老朽化が進む建物が立ち並び、歴史的建造物の偉大さも人々の記憶から消え去ってしまうほどの淋しいものだった。

ペナン島

画像:ペナン・シティホール(旧植民地政府庁舎)

「ペナン島」に転機が訪れたのは、各国の世界遺産を主役とする観光ツアーの人気が世界的に流行り始めた90年代頃からだった。

世界遺産が人々に注目を浴びるようになった背景には、グローバル化が進んだことで生まれた海外に対する憧れや期待、その国の歴史を知りたいという探究心、世界が認める絶景を実際に見に行きたいという大きな関心が関係している。

海外からの観光客を多く迎え、観光業を活発化させることを決めた「ペナン島」は、老朽化した建物の立て直し、観光客向けのカフェやレストラン、宿泊施設の建設に力を注ぎ、観光の街へと変貌を遂げた。また、旅行に訪れた際に撮影した白亜の建造物の写真を人々がSNS上で公開したことで、世界遺産が眠る「ペナン島」が世界中に知れ渡った。

「ペナン島」の混在する宗教文化

多民族国家で暮らしていくには、互いの宗教文化への理解が必要な状況に直面することもある。国によって信仰も違えば、個々の宗教への関心にも差が生まれ、全てを受け入れることは正直、難しいものだ。

しかし、「ペナン島」には、『ハーモニーストリート』(正式名称:マスジット・カピタン・クリン通り)と呼ばれる異なる4つの宗教文化を伝える場所がある。

ペナン島

画像:セント・ジョージ教会

まず1つ目は、白亜の建造物でも紹介した『セント・ジョージ教会』だ。

2010年に大規模な修復工事が行われたこともあり、東南アジア最古の教会とは思えないほどの美しい教会である。

夜には教会全体がライトアップされ、『ハーモニーストリート』を神秘的な雰囲気で包んでいる。

ペナン島

画像:観音寺

2つ目は、中国寺院『観音寺(かんのんじ)』。

1830年に中国の広東省や福建省からマレーシアに渡った人々により建設されて以来、中華系の人々が熱心に通う信仰の場となっている。

参拝の際に使用される長い線香の煙が、寺院全体を包む光景が印象的だ。

ペナン島

画像:カピタン・クリン・モスク

3つ目は、「ペナン島」で一番の大きさを誇る『カピタン・クリン・モスク』。

1801年、「ペナン島」に移住してきたインドの商人によってイスラム教徒のために設立された。

何度も繰り返された修復工事の末、現在の大きなドーム型のモスクが完成した。『セントジョージ教会』同様、夜はライトアップされ、朝とは違うモスクの存在感を演出している。

ペナン島

画像:スリ・マハ・マリアマン寺院

そして4つ目は、ヒンドゥー教寺院『スリ・マハ・マリアマン寺院』だ。

1883年に建設され、神々と動物の彫像が強調された色鮮やかな寺院だ。この特徴的な神の姿は、ヒンドゥー教の聖典に描かれた『ラーマ王の物語』を再現している。祈りの際に捧げるジャスミンの花の甘い香りが、寺院の外まで広がっている。

「ペナン島」がキリスト教、仏教、イスラム教、ヒンドゥー教といった異なる4つの宗教と共存しながら人々が生きてきたことを、この『ハーモニーストリート』は伝えている。国籍や信仰も超えて尊重し合える形が理想だが、時代の流れと共に現実には厳しい部分も多々ある。

偏見や理解の壁にぶつかることもある時代の中でも、個々の信仰を尊重し守り続ける姿を『ハーモニーストリート』は教えてくれる。

期待高まる「ペナン島」への企業進出

日本企業の東南アジアへの進出は目覚ましく、「ペナン島」を拠点としている企業も複数存在する。

東芝、ホンダ、花王など日本でも名を連ねる日本企業が既に「ペナン島」への進出を果たしている。

東南アジアへの進出をするにあたり期待できることは、経済成長の向上と労働力だ。少子化が進む日本が、事業を拡大するためには海外での事業展開が今後の重要な鍵となる。また物価が安い面や、英語や日本語を堪能とする現地社員への信頼も大きい。

画像:デスク

更に最近では、海外就職に関心のある日本の大学生を対象に「ペナン島」で行う留学制度も設けられている。

現地での英語の語学研修はもちろん、日系企業や外資系企業への訪問プログラムも含まれており、海外就職への新たな道を開く機会として注目を集めている。

年々、気候的に過ごしやすいマレーシアへの留学を希望する学生も増えてきている。

「ペナン島」の新たな姿

イギリスの植民地時代の名残りがとても強い東洋と西洋の特色を持つ中で、異文化の歴史を大切に残そうと願う人々の想いと、混在する4つの宗教文化を守ろうという強い意志が「ペナン島」には存在する。また、観光業や海外企業の受け入れに重点をおき、「ペナン島」で成功を成し遂げようと奮闘する人々もいる。

世界遺産が立ち並ぶ観光地としての印象が強かった「ペナン島」が、マレーシアという国全体の異文化社会の象徴といわれる街になる日も近いかもしれない。

関連記事:
マレーシア最古の都市マラッカについて調べてみた

 

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草の実堂編集部 新井弘樹

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