海外

【ハウルの動く城の舞台】 フランスのメルヘンチックなアルザス地方とコルマールの街

街のどのアングルから撮影しても、全てが絵画のような芸術性の高い写真に仕上がる、フランス東部のアルザス地方にある「コルマール」。

コルマール

『ハウルの動く城』のロケハンが行われてたフランスのコルマール wiki c Krzysztof Golik

可愛らしいパステルカラーの住宅街や小さな運河の周辺には、四季折々の花が装飾され、『メルヘンチック』という言葉が非常に似合う雰囲気が街全体を覆っている。

フランスで最も小さな街にも関わらず、山や川に囲まれたアルザス地方の美しい風景を全て詰め込んだおとぎ話の世界観が「コルマール」にはある。

おとぎ話が始まりそうな独創的な街「コルマール」を舞台にした物語とは!?

魔女の魔法によって、その後の人生を大きく変えられてしまった少女の姿を描いたジブリアニメーション映画『ハウルの動く城』の上映以降、日本ではアルザス地方の「コルマール」の存在が、広く知られるようになった。

イギリスの小説家であるダイアナ・ウィン・ジョーンズのファンタジー小説『魔法使いハウルと火の魔法』の原作を基に描かれた『ハウルの動く城』は、中世ヨーロッパを連想させる古き街並みの風景が物語の舞台となっている。

物語のカギとなる『魔法が存在する国』を原作のイメージを壊すことなく、忠実にアニメーションとして再現するためには、懐かしさと可愛らしさを兼ね備えた街の雰囲気が必要とされたのだろう。

コルマール

プフィスタの家(ハウルの動く城に登場した建造物のモデルになった。) La maison Pfister, construite en 1537, à Colmar

ドイツ文化の影響を受けて建築された伝統的な木骨組みの建造物に、花と緑が調和された「コルマール」の街並みは、正に原作のイメージそのものだったに違いない。

制作元であるスタジオジブリ側も、『ハウルの動く城』の舞台の参考にした場所として「フランス・アルザス地方、中央アジア」と公式ページを通して発表している。

旅先での『コウノトリ』との出会いは幸運の兆しかも!?

「コルマール」の空には、新しい命を運ぶ鳥、子宝に恵まれる予兆を知らせる鳥としても有名な『コウノトリ』が飛び交う姿がある。

「コルマール」の街に限らず、湿潤な立地であるアルザス地方全域に多く生息する『コウノトリ』は、ドイツの国鳥にも指定されており、日本同様に『祝福と幸福を運ぶ赤ん坊の泉を守る神様の使者』として敬われている存在だ。

そのため、『コウノトリ』に出会えることは、旅行先で掴んだ幸せの兆しであると話題となり、やがて「コルマール」の街のシンボルとして謳われるようになった。

コルマール

コウノトリの親子

お土産ショップの大半を占める『コウノトリ』をモチーフとしたぬいぐるみやイラストは、幸せな家庭を築きたい、新しい命を授かりたいと願う人々や、その願いを実現して欲しい家族や友人への贈り物として購入される場合がほとんどだ。

そんな現地の『コウノトリ』人気からは、子供の成長を夫婦で見守る『コウノトリ』の性質を模範とし、家庭運を象徴する縁起物として世界中の人々から敬愛されていることが分かる。

「コルマール」における『コウノトリ』の目撃情報が特に多いのが、街の中心部に聳え立つ『サン・マルタン教会』の屋根だ。

ステンドグラスの窓が神秘的に輝く『サン・マルタン教会』は、アルザス地方の中で最も美しい教会として紹介されると同時に、『コウノトリ』の巣があることでさらに有名となった観光地でもある。

コルマール

サン・マルタン教会

タイミングと運があれば、屋根の上に作られた巣に出入りする『コウノトリ』の様子を間近で見ることができるが、実際に『コウノトリ』に遭遇した場合は、静かに見学するか、ストレスを与えない程度の短い写真撮影を心掛けるよう注意喚起が出ている。

『コウノトリ』の存在に気を取られ、大きな声で驚かせたり、無理に行動を妨げるような動作は控えることが、「コルマール」の観光を楽しむ上での絶対条件であるからだ。

熱い信念を抱いたパティシエたちがアルザス地方を目指す理由

「コルマール」の特徴の一つに、スイーツの激戦区でもあるフランス・パリに劣らない芸術性の高いスイーツが並ぶ街という言葉がある。

「コルマール」が位置するアルザス地方からは、世界で活躍するパティシエが多く輩出されていることもあり、「コルマール」自体もスイーツに対する思い入れが強い街として形成されていった。

パティスリー界のピカソ』と呼ばれ、高級感に満ち溢れた芸術性をスイーツで表現することで有名なピエール・エルメ・パリの創業者である『ピエール・エルメ』も、アルザス地方出身のパティシエ・ショコラティエだ。

新たなスイーツを生み出す度に、変わらない伝統技術を継承することよりも、時代に合わせたデザイン性や、話題の風味と味覚を瞬時に取り入れる彼の思考は、独創的な才能の塊である。

コルマール

ピエール・エルメの代表的フレーバー”イスパハン(Ispahan)”のマカロン wiki c Charlotte Marillet

どんなに名誉ある賞に輝いたとしても、スイーツを愛し続けるファンからの賞賛の声だけが、自分自身の生き甲斐である。』と断言するピエール・エルメの姿は、修業に励む未来のパティシエたちの憧れの的なのだ。

既にプロのパティシエとして活躍している人材までもが、彼のパティシエとしての生き方をロールモデルとし、新たな挑戦の場としてアルザス地方を目指している。

 

アバター

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 香水の歴史とクレオパトラ 「香水は薬だった」
  2. 日本の城の数はいくつある? 構造や種類についてわかりやすく解説
  3. 国内外からのリピーター続出!大人気観光地の「熊野古道」 その歴史…
  4. 引間城へ行ってみた [豊臣秀吉&徳川家康ゆかりの日本最強のパワー…
  5. 四川料理はなぜ辛いのか? 「激辛料理 麻辣兎頭(ウサギの頭の唐辛…
  6. ブロンテ姉妹とは(シャーロット、エミリー、アン)【全員短命の天才…
  7. 日本、中国、韓国の「箸」の違い
  8. 『首謀者は2人の少女』 コティングリー妖精写真捏造事件 「コナン…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

【古代中国の謎の像】 大立人は一体何を持っていたのか? 「三星堆遺跡」

大立人の最大の謎前回は、古代中国の謎の遺跡「三星堆遺跡(さんせいたいいせき)」と、そこから出土し…

「ポケット戦艦」と呼ばれた軍艦について調べてみた

ポケット戦艦とはポケット戦艦とは、ドイツ海軍の新型軍艦に対して、イギリスの新聞記者が付けたあ…

【4500年前に頭蓋骨手術が行われていた】 2度の手術で生き延びた女性

2023年、スペインで発見された一人の女性の頭蓋骨から、複数回の頭蓋骨手術(以降、開頭手術)…

水野忠邦と天保の改革の失敗【幕府失墜のきっかけ】

江戸時代の三大改革「享保の改革」「寛政の改革」そしてもう一つが老中の水野忠邦が行なった「天保の改革」…

ベッドの中の集中【漫画~キヒロの青春】㉕

近いけど遠い【漫画~キヒロの青春】㉖へ…

アーカイブ

PAGE TOP