自然&動物

なぜ深海魚はエイリアンのように見えるのか?

深海に潜む魚の多くは、巨大な歯、暗闇で光る体、膨らんだ目玉など、まるでホラー映画のエイリアンのようである。

しかし、なぜこれらの魚は異世界のような特徴を持っているのだろうか?

 

この投稿をInstagramで見る

 

Роман Федорцов(@rfedortsov_official_account)がシェアした投稿

深海魚の見た目がヤバイ理由

深海魚が異様な姿をしていることが多いのは、深海魚が生息する「極限環境への適応」によるところが大きい。

深海の大部分は水面下200メートルから始まり、太陽光が届くのは水深1,000mまでである。光はほとんどなく20気圧の高水圧に覆われ、餌を入手できる可能性は低く、平均気温は摂氏4度と氷点下より少し高い程度で、非常に寒い。

植物が光合成できる限界は水深200m程度のため、深海には植物プランクトンが少なく、エネルギーの元となる食べ物がほとんどない。

カリフォルニアのモントレーベイ水族館の魚類生物学者は「深海は生き残るには過酷な場所なので、多くの生物はその環境で生き残るためにニッチな適応をしなければならなかった」と語っている。

大きな口や顎を発達させた深海魚

このように餌を見つける機会が少ないため、深海魚は獲物を捕らえるためにそれぞれ特徴を発達させてきたのである。

最も恐ろしい印象を与えるもののひとつが、巨大な顎である。

なぜ深海魚はエイリアンのように見えるのか?

画像 : ホウライエソ(Chauliodus sloani)は大きく透明な歯を持ち、腹部には光胞と呼ばれる光を生み出す器官が帯状に並んでいる。 wiki c

例えば、ホウライエソ(Chauliodus sloani)は、口を閉じれば頭に穴が空いてしまいそうなほど大きな牙を持っている。この鋭い歯は透明で、捕食の寸前まで獲物から武器を隠すことができる。

フクロウウナギ(Eurypharynx pelecanoides)は、大きな魚を捕獲して飲み込むことができるように、体の大部分を占めるほどの口を持っている。

なぜ深海魚はエイリアンのように見えるのか?

画像 : フクロウウナギ(Eurypharynx pelecanoides)wiki c

発光能力を発達させた深海魚

深海魚の中には、獲物を引き寄せる秘密兵器を持っているものがいる。生物発光、つまり自ら光を発する能力だ。

例えば、2003年のコンピューター・アニメーション映画『ファインディング・ニモ』に登場したブラック・シーデビル(深海アンコウ)のメスである。

なぜ深海魚はエイリアンのように見えるのか?

画像 : Black seadevils wiki c Masaki Miya et al

深海アンコウは、頭に取り付けられた釣竿の先にある光で獲物の注意を引く。獲物が近づいてきたら口を開けて獲物を捕まえる。アンコウの口は非常に大きく、獲物は簡単には逃げることができない。深海で生きるために、この独特な捕食方法を進化させてきたと考えられている。

しかし、水族館研究所による研究によれば、生物発光の利点は獲物をおびき寄せることだけではないという。

周囲の光に合わせて暗くしたり明るくしたりできる深海魚も存在し、仲間を引き寄せたり、捕食者から身を守ることにも役立っている。

ふにゃふにゃした体の深海魚

オーストラリアとタスマニア以外の海域に生息するウラナイカジカ属の1種(Psychrolutes marcidus)は、水深600メートルから1,200メートルの深海に棲んでいる。

なぜ深海魚はエイリアンのように見えるのか?

画像 : イメージ Psychrolutes phrictus (ウラナイカジカ属)。本科魚類中の最大種かつ最深種。北太平洋の深海に広く分布し、深海釣りの対象にもなる public domain

この圧力の中で生き残るために、頑丈な骨格を持たず、ふにゃふにゃした体へと進化している。

そのため、この深海魚は水面に上がると膨らみ、顔がしかめっ面のように崩れたゼラチン状の生き物に変身する。

その姿から2013年には「世界一醜い動物」の称号を得ている。

さいごに

人間は新しいものや未知のものに対して恐怖や不安を感じる傾向があるとされている。

深海は宇宙と同様に未知の領域であり、ほとんどの場所が人間が直接訪れることが難しいため、その内部についての知識が限られている。

この未知の領域に生存する生物を不気味に感じつつも、そのミステリアスな魅力に虜になっている人々も多いのである。

 

アバター画像

lolonao

投稿者の記事一覧

フィリピン在住の50代IoTエンジニア&ライター。
antiX Linuxを愛用中。頻繁に起こる日常のトラブルに奮闘中。二女の父だがフィリピン人妻とは別居中。趣味はプチDIYとAIや暗号資産、マイクロコントローラを含むIT業界ワッチング。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. イングランドで愛される犬と猫たち【公務員として働く猫】
  2. チワワの祖先 「テチチ」は食用犬で儀式の生贄だった
  3. 日本のクマを絶滅させたらどうなるのか? 調べてみた 【指定管理鳥…
  4. 【あなたを母親だと思ってる?】 飼い猫の仕草には様々な意味があっ…
  5. 25万人の凍死者が眠るバイカル湖 【悪魔のクレーター 世界最古の…
  6. 野生動物との共生「環境治療、保存医学」とは何か? 第一人者の話を…
  7. 台風について詳しく解説 【命名法、種類、熱帯低気圧との違い】
  8. グランピング おすすめスポット 4選

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

加藤嘉明【最後は40万石を領した賤ヶ岳の七本槍】

用兵に秀でた武将 加藤嘉明加藤嘉明(かとうよしあき)は豊臣秀吉に長浜時代から従った古参の…

応仁の乱の元凶となったダメ将軍 足利義政 ~後編 「悪女 日野富子と結婚」

前編では14歳で8代将軍になった足利義政(あしかがよしまさ)の前半生について解説した。義政は…

台湾の猛暑 ~記録的猛暑とその深刻な影響

記録的な猛暑今年も記録的な猛暑である。アメリカの国家海洋大気庁(NOAA)の報告…

『死を運ぶ虫、神として祀られた虫』世界の伝承が語る“異形の虫”たち

地球上に棲む動物のうち、およそ7〜8割は、昆虫、クモ、エビ・カニなどを含む「節足動物」に分類される。…

カウラ日本人戦没者墓地【実は存在していた日本の海外領土】

カウラ日本人戦没者墓地海外領土と言うのとは実は少しニュアンスは違いますが、オーストラリアのニ…

アーカイブ

人気記事(日間)

人気記事(週間)

人気記事(月間)

人気記事(全期間)

PAGE TOP