深海に潜む魚の多くは、巨大な歯、暗闇で光る体、膨らんだ目玉など、まるでホラー映画のエイリアンのようである。
しかし、なぜこれらの魚は異世界のような特徴を持っているのだろうか?
この投稿をInstagramで見る
深海魚の見た目がヤバイ理由
深海魚が異様な姿をしていることが多いのは、深海魚が生息する「極限環境への適応」によるところが大きい。
深海の大部分は水面下200メートルから始まり、太陽光が届くのは水深1,000mまでである。光はほとんどなく20気圧の高水圧に覆われ、餌を入手できる可能性は低く、平均気温は摂氏4度と氷点下より少し高い程度で、非常に寒い。
植物が光合成できる限界は水深200m程度のため、深海には植物プランクトンが少なく、エネルギーの元となる食べ物がほとんどない。
カリフォルニアのモントレーベイ水族館の魚類生物学者は「深海は生き残るには過酷な場所なので、多くの生物はその環境で生き残るためにニッチな適応をしなければならなかった」と語っている。
大きな口や顎を発達させた深海魚
このように餌を見つける機会が少ないため、深海魚は獲物を捕らえるためにそれぞれ特徴を発達させてきたのである。
最も恐ろしい印象を与えるもののひとつが、巨大な顎である。
例えば、ホウライエソ(Chauliodus sloani)は、口を閉じれば頭に穴が空いてしまいそうなほど大きな牙を持っている。この鋭い歯は透明で、捕食の寸前まで獲物から武器を隠すことができる。
フクロウウナギ(Eurypharynx pelecanoides)は、大きな魚を捕獲して飲み込むことができるように、体の大部分を占めるほどの口を持っている。
発光能力を発達させた深海魚
深海魚の中には、獲物を引き寄せる秘密兵器を持っているものがいる。生物発光、つまり自ら光を発する能力だ。
例えば、2003年のコンピューター・アニメーション映画『ファインディング・ニモ』に登場したブラック・シーデビル(深海アンコウ)のメスである。
深海アンコウは、頭に取り付けられた釣竿の先にある光で獲物の注意を引く。獲物が近づいてきたら口を開けて獲物を捕まえる。アンコウの口は非常に大きく、獲物は簡単には逃げることができない。深海で生きるために、この独特な捕食方法を進化させてきたと考えられている。
しかし、水族館研究所による研究によれば、生物発光の利点は獲物をおびき寄せることだけではないという。
周囲の光に合わせて暗くしたり明るくしたりできる深海魚も存在し、仲間を引き寄せたり、捕食者から身を守ることにも役立っている。
ふにゃふにゃした体の深海魚
オーストラリアとタスマニア以外の海域に生息するウラナイカジカ属の1種(Psychrolutes marcidus)は、水深600メートルから1,200メートルの深海に棲んでいる。
この圧力の中で生き残るために、頑丈な骨格を持たず、ふにゃふにゃした体へと進化している。
そのため、この深海魚は水面に上がると膨らみ、顔がしかめっ面のように崩れたゼラチン状の生き物に変身する。
その姿から2013年には「世界一醜い動物」の称号を得ている。
さいごに
人間は新しいものや未知のものに対して恐怖や不安を感じる傾向があるとされている。
深海は宇宙と同様に未知の領域であり、ほとんどの場所が人間が直接訪れることが難しいため、その内部についての知識が限られている。
この未知の領域に生存する生物を不気味に感じつつも、そのミステリアスな魅力に虜になっている人々も多いのである。
この記事へのコメントはありません。