自然&動物

鏡に映った自分を認識できる動物とは?

動物が鏡に映った自分を自分自身だと認識できるかどうか」を調べるミラーテストは、1970年にアメリカの心理学者・ゴードン・ギャラップJr.(Gordon Gallup Jr.)が開発した動物の行動研究である。

それ以来、多くの動物でミラーテストが行われたが、合格した動物はほんの一握りだ。

鏡に映った自分を認識できる動物とは?

画像 : 鏡を覗き込むヒヒ [CC BY-SA 3.0 Deed]

鏡認識のテスト

科学者たちは、1970年にチンパンジーを使った研究を始めて以来、さまざまな動物種で鏡認識のテストを行ってきた。

アリからマンタ、アフリカオウムまで、さまざまな動物種が鏡の前で自己認識の兆候があるのか調査した。

ごく一部の動物は、鏡に映った自分を自分自身だと認識しているという。

しかし、鏡に映った自分を自分自身だと認識しているかどうか、判断が難しい動物も数多くいる。

ミラーテストの有用性

ミラーテストのやり方を簡単に解説しよう。

まず動物の体に目立つマークを付ける。そして鏡の前に立たせて、マークを気にかけるかどうかを観察する。

例えば、動物の額にペイントを付けて鏡の前に立たせた後、動物が鏡に映った自分の額を気にかけて、ペイントを触ったり拭いたりするような行動をとれば、自己認識していると判断される。

ミラーテストに合格した動物

鏡に映った自分を認識できる動物とは?

画像 : ボルネオオランウータン wiki c Nehrams2020

オランウータンは、1973年の研究で自分自身を認識し、自分の体に付けられたマークを見つけて調べていることが示された。

ボノボは、1994年の研究では、鏡を使って通常は自分で見ることのできない体の部分を調べていることが観察されている。

ゴリラは、認識できているのかどうかが判断できなかったという。

訓練を受けた後に合格できた動物

サルは通常、鏡に映った自分を別の動物だと認識することが多い。

しかし、一部の種は訓練を受けた後に、鏡に映った自分を認識できるようになったという。これは他の動物の鏡認識も、訓練によって獲得できる可能性があることを示唆している。

ただし、次のような点が疑問視されている。

・訓練は、ミラーテストの信頼性を高めることになるのか?
・訓練によって鏡認識を示す動物は、本当に自己認識を持っているといえるのか?

類人猿以外で合格できた生物

インドゾウは、ミラーテストに合格した唯一の陸生哺乳類である。

イルカは、2頭の雄のイルカでの実験で鏡像の自己認知の証拠が報告されている。

鏡に映った自分を認識できる動物とは?

画像 : カササギは鳥類で唯一ミラーテストに成功している

2008年、カササギは、ミラーテストに合格した最初の非哺乳類(鳥類)となった。

ハトも、ミラーテストに合格したが、訓練を受けた後だった。

2022年、野生の皇帝ペンギンは、ミラーテストに合格する兆候を示したが、最終的に合格といえるかどうかは疑問だとされている。

昆虫や魚類の鏡認識

次のような非哺乳類の鏡認識は、特に議論の的となっている。

例えばアリは、鏡に映った自分を別のアリだと認識し、頭に付いたペンキを除去しようとしたという研究結果があり、自己認識の可能性があると考えられている。

また、2つの研究において、魚が鏡像の自己認知をしている可能性も指摘されている。

ミラーテストは、こうした原始的な生物の認識可能性がある一方で、アフリカオウムを含む知的な非類人猿の一部はテストに失敗している。

自己認識の今後

鏡に映った自分を認識できる動物とは?

画像 : 鏡を興味深く見つめる子供 wiki c roseoftimothywoods

これらのことから、ミラーテストの有効性自体が問われる声もある。

自己認識は、多様で多層的な概念であり、その程度はさまざまだ。

ミラーテストに合格した動物は自己認識を持っている可能性はあるが、人間と同程度の自己認識を持っているかまでは不明である。

今後の研究では、ミラーテスト以外の方法で動物の自己認識を測定することが重要だろう。

参考 : Which animals can recognize themselves in the mirror? | Live Science

 

lolonao

lolonao

投稿者の記事一覧

フィリピン在住の50代IoTエンジニア&ライター。
antiX Linuxを愛用中。頻繁に起こる日常のトラブルに奮闘中。二女の父だがフィリピン人妻とは別居中。趣味はプチDIYとAIや暗号資産、マイクロコントローラを含むIT業界ワッチング。

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 【4億5千万年前から存在した吸血魚】ヤツメウナギの生態 ~意外と…
  2. 大盆栽まつり(大宮盆栽村)に行ってみた 【BONSAI】
  3. 日本のクマを絶滅させたらどうなるのか? 調べてみた 【指定管理鳥…
  4. 猫は「300種類の表情」でコミュニケーションをとることができる
  5. 猫の祖先・歴史について調べてみた
  6. 日本の夏は昔と比べてどれくらい暑くなったのか? 【1875年以降…
  7. 2050年までに32の米国の主要都市が「海面上昇」の深刻な危機
  8. 原宿にはかつて「ナウマンゾウ」がいた

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

イヤホン・ヘッドホンの構造と価格の違い

ハイレゾの普及やiPhone純正ワイヤレスイヤホンの発売により、移動中でも簡単に音楽が楽しめ…

隋朝末期の3人の幻のラストエンペラー【皇帝という名の貧乏くじ】

一般的に、隋 王朝(ずい:581年〜618年)はわずか2代で滅びたと言われます。しか…

本多正信 【家康から友と呼ばれるも周りから嫌われた軍師】

本多正信とは戦国時代の覇者・徳川家康には本多正信(ほんだまさのぶ)と言う優れた軍師がいた。…

【日本三大悪女】 日野富子は本当に悪女・守銭奴だったのか? 「歴史を動かした女たち」

エピローグ男性を中心に語られることが多い日本の歴史。しかし、日本には男性を上回る…

ミシシッピ計画について調べてみた 【世界三大バブル】

過去に世界三大バブルと呼ばれるバブルがありました。それは(チューリップバブル)(南海泡沫事件…

アーカイブ

PAGE TOP