麻薬探知犬を気遣うプロ意識

画像 : 探知犬(ロンドン警察) public domain
嗅覚による検知技術の研究は日々進歩していますが、現時点では依然として、機械よりも犬の方が高い精度を発揮するとされています。
そうした理由から、空港などでは麻薬探知犬が今なお第一線で活躍しています。
犬は当然ながら生き物ですので、感情もあれば性格もあり、人間との信頼関係が仕事の成否に大きく関わってきます。
機械のように黙々と働き続けるわけにはいきません。
そのため、時には犬の機嫌をとるような気配りも必要になります。
麻薬を見つけたらご褒美、というのは当たり前。
しかしこれだけだと、麻薬が見つからない場合困ります。
麻薬がない事は、人間社会的には平和です。
しかし犬的にはこういう時、働いても何の報酬も得られない日々が続くことになります。
実際、この状況が続くと、さすがの麻薬探知犬も働かなくなるそうです。
そこで一部の現場では、旅行客に事情を説明したうえで、訓練用の模擬麻薬を荷物に入れさせてもらい、犬にそれを探知させるといった工夫を行うこともあります。
こうして“発見の成功体験”を維持することで、犬たちのやる気を保っているのです。
生き物とともに働くというのは、こうした細やかな気遣いも含めてのことなのです。
科学へ誠実に向き合う気持ちが人をだます
アインシュタインが提出した一般相対論。
それにより「重力波」の存在が予測されたのでした。
重力波とは何でしょうか。
質量のあるものは何でも、太陽でも地球でも我々の身体ですらも、時空間を歪ませているというのが一般相対論の帰結です。
その質量のある物体が動くと、その振動が時空の歪みの振動となって伝わっていくのです。
2015年、アメリカの実験施設LIGOと、イタリア・フランスの実験施設VIRGOが人類史上初めて、この重力波観測に成功しました。

画像:LIGOの科学者たち
しかし、この「成功した」と発表する段階に至るまでに、科学者たちの想像以上の慎重さと検証の積み重ねがありました。
観測や実験の結果が本当に正しいものかどうなのか、慎重に慎重を重ねて検討するのが科学者の性です。
ということで、この時のLIGOでは、データ解析担当のグループがきちんと機能しているかどうかのチェックがされていたのでした。
グループ長が秘密裏に重力波のようなデータを観測データに紛れ込ませ、グループがそれを重力波候補としてきちんと報告できるかどうか「ブラインドテスト」をしていたのです。
まるでチェーン店の本部が、加盟店がマニュアル通りに動いているかをこっそり確認するような、抜き打ち調査のようです。
もちろん、これはあくまで一例に過ぎません。
ダブルブラインド法の実施、対照群の設定、統計的な有意性の確認、先入観を排する姿勢――こうした慎重なプロ意識こそが、科学という営みの信頼を支えているのです。
文 / 種市孝 校正 / 草の実堂編集部
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