調べてみた

古典ファン必見!11月1日が「古典の日」に制定された理由とは?

1年366日、いつも何かしらの記念日となっていますが、11月1日は「古典の日」なのだそうです。

しかもこの「古典の日」、どこぞの協会とか団体がテキトーに決めたものではなくてちゃんと法律(古典の日に関する法律。平成24年法律第81号)で定められた記念日となっています。

(面倒な方は下の【ざっくり要約】まで読み飛ばして大丈夫です)

古典の日に関する法律

平成二十四年法律第八十一号
古典の日に関する法律
(目的)
第一条 この法律は、古典が、我が国の文化において重要な位置を占め、優れた価値を有していることに鑑み、古典の日を設けること等により、様々な場において、国民が古典に親しむことを促し、その心のよりどころとして古典を広く根づかせ、もって心豊かな国民生活及び文化的で活力ある社会の実現に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「古典」とは、文学、音楽、美術、演劇、伝統芸能、演芸、生活文化その他の文化芸術、学術又は思想の分野における古来の文化的所産であって、我が国において創造され、又は継承され、国民に多くの恵沢をもたらすものとして、優れた価値を有すると認められるに至ったものをいう。
(古典の日)
第三条 国民の間に広く古典についての関心と理解を深めるようにするため、古典の日を設ける。
2 古典の日は、十一月一日とする。
3 国及び地方公共団体は、古典の日には、その趣旨にふさわしい行事が実施されるよう努めるものとする。
4 国及び地方公共団体は、前項に規定するもののほか、家庭、学校、職場、地域その他の様々な場において、国民が古典に親しむことができるよう、古典に関する学習及び古典を活用した教育の機会の整備、古典に関する調査研究の推進及びその成果の普及その他の必要な施策を講ずるよう努めるものとする。
附 則
この法律は、公布の日から施行する。

【ざっくり要約】

寝そべって物語に親しむ姫君。『紫式部日記絵巻』より

第1条 古典は日本文化において重要であるので、日本国民が古典に親しみ、豊かな心を養うことでよりよい社会を実現するために記念日を設ける。

第2条 ここで言う古典とは、文学や音楽、美術もろもろ昔から受け継がれてきた日本文化のうち、優れた価値を認められたものを指す。

第3条 古典の日は11月1日とする。国や地方自治体は、11月1日に国民が古典に親しめるよう、さまざまな場所で行事の開催や教育機会の整備に努めるものとする。

※参考:
文化庁|文化庁月報|古典の日について
古典の日に関する法律

まぁ、日本文化にとって古典が大切なこと、そして11月1日をその普及の機会として記念日に定めたことはわかりました。

でも、何でそれが11月1日なのでしょうか。今回はその理由と共に、その他の11月1日についても紹介したいと思います。

「こちらに若紫の君はいらっしゃいませんか?」

今は昔の平安時代、寛弘5年(1008年)11月1日

京都の土御門殿(つちみかどどの。天皇陛下の里内裏)で敦成親王(あつひらしんのう。第68代・後一条天皇)の誕生50日祝いの宴に出席していた藤原公任(ふじわらの きんとう)が、酔った戯れにこんなことを言いました。

『紫式部日記絵巻』より、若紫の君を探す藤原公任(右)。

「あなかしこ、此のわたりにわかむらさき(若紫)やさふらふ(候)」
※紫式部『紫式部日記』より
【意訳】恐れ入りますが、この辺りに若紫の君はいらっしゃいませんか?

そこには人気作品『源氏物語』の作者として有名な紫式部(むらさきしきぶ)が臨席しており、作中のヒロインである紫の上(むらさきのうえ。若紫)を探すフリをしてウケを狙ったのでした。

これが『源氏物語』に言及する最古の記録とされており、その日付である11月1日が古典の日とされたのでした。

古典の日は当初『紫式部日記』の記述から1000年後の平成20年(2008年)11月1日の源氏物語千年紀委員会によって開催された記念式典で宣言され、後に平成24年(2012年)9月5日に法制化(公布、施行)され、現在に至ります。

そんな訳で今年も全国各地で古典に親しむイベントなどが開催されたようですが、もし機会に恵まれたら、参加してみるのも楽しそうです(くれぐれも感染症にはご配慮の上で)。

他にもたくさん!11月1日の記念日たち

他にも11月1日は色々な記念日となっており、制定の由来とあわせて紹介します。

灯台記念日
昭和24年(1868年)に海上保安庁が制定。明治元年(1868年)11月1日、観音崎(神奈川県横須賀市)に日本初の洋式灯台が起工されたことに由来するそうです。

寿司の日
昭和36年(1961年)に全国すし商環境衛生同業組合連合会が制定。新米の季節となること、ネタとなる海産物が美味しい時期であるため……と言われています。

イメージ

自衛隊記念日
昭和41年(1966年)に防衛庁(現:防衛省)が制定。実際の自衛隊創立は昭和29年(1954年)7月1日ですが、7月から10月にかけては台風の災害派遣が予想されるため、記念式典を行う都合上、天候の安定する11月1日にずらされたと言います。

カーペットの日
昭和49年(1974年)に日本カーペット工業組合が制定。昭和31年(1956年)11月1日に昭和天皇(第124代)がカーペット工場を視察されたことに由来するそうですが、それがどこの工場であるかははっきりしないそうです。

大黒屋幸太夫。Wikipediaより(画像:Anonymous Japanese painting 1792)

紅茶の日
昭和58年(1983年)に日本紅茶協会が制定。寛政3年(1791年)11月1日、ロシアを放浪していた大黒屋光太夫(だいこくや こうだゆう)が皇帝の茶会に招かれ、日本人として初めて紅茶を飲んだことに由来します。

犬の日
昭和62年(1987年)にペットフード工業会(現:ペットフード協会)らが制定。犬の鳴き声である「ワンワン(11月)ワン(1日)」の語呂合わせから。

本格焼酎の日
昭和62年(1987年)に日本酒造組合中央会が制定。8~9月ごろに仕込まれた焼酎の新酒が出来上がるのが11月1日ごろだから……だそうです。

イメージ

泡盛の日
平成元年(1989年)に沖縄県酒造組合連合会が制定。11月から泡盛づくりの最盛期に入り、また泡盛の美味しい季節となることから……とのこと。

計量記念日
平成5年(1993年)に通商産業省(現:経済産業省)が制定。同年11月1日に現行の計量法が施行されたためで、旧計量法が使われていた時は6月7日だったそうです。

点字の日
平成25年(2013年)に日本点字普及協会が制定。明治23年(1890年)11月1日に日本の点字が決定したことに由来します。

……他にも、また外国にも様々な11月1日があるようで、はっきりとした由来があるものもそうでないものも、せっかくの記念日ですから、好きなものを楽しみたいですね。

とりあえず、日本人としての素養を高めるべく、もっと古典を勉強したいと思います。

※参考:

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角田晶生(つのだ あきお)

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