「新約聖書」の最期に置かれた「ヨハネの黙示録」にはこんな一節がある。
「天で戦いが起こった。ミカエルとその使い達が、龍に戦いを挑んだのである。そしてもはや天には彼らの居場所がなくなった。悪魔とかサタンとか呼ばれる者、地上に投げ落とされた」
何も「黙示録」に限った事ではない。各国の悪魔とはいかがなものか?
天使だけではなく悪魔に攻撃を受けている「聖人・エクソシスト達の戦い」を調べてみた。
各国の代表的な悪魔達
堕天使ルシファーの率いる「軍団」は数知れず多い。
今回は「ギリシャ・ローマ神話」を中心にして「妖魔」「魔物」と呼ばれる存在をまとめて見た。
イフリート(アラビアンナイトではランプの精)
※ランプの魔人イフリートとアラジン(クレマン・ピエール作)
アラビアおよびイスラムの伝承に登場する超自然的な精霊(ジン)である。イスラム教の聖典では、堕天使イブリスと同一視する向きもある。これはおそらく、イブリスがアッラーに対して「あなたは火から、私をつくった」と言い放ち、土からつくられたアダムに
跪く事を拒否することからきているだろう。
ジンの性質は多種多様で、神を信じて善行を行なうものもいるが、一般的には「悪鬼」に分類されるような性質のものが多い。
そこからイフリートも、炎の悪魔・悪霊としてとらえられている事が多い様だ。
オーガ(子供を誘拐して食べる西洋の怪物)
※子供をさらって食べるオーガ(17世紀:ローレンツ・シュルテ作)
アニメ映画「シュレック」のモデルの怪物である。
しかし歴史上には、西洋の民間伝承する人型の怪物である。人間より巨大な身体に加え、それに釣り合わない程、頭が大きく毛むくじゃら。そして並外れた食欲で、もっぱら人間・それも人間の子供を誘拐して食べ「人食い鬼」と翻訳されてきた。
彼らは様々な民話や昔話に登場しているがそのルーツは明らかではない。この怪物を「オーガ」と初めて呼んだのは、フランス人の作家「クレティアン・ド・トロワ」だ。
~一口メモ~
最近、多くの怪物・魔物を登場させる海外ドラマが多く増えている。その中でも、「怪物・妖怪・悪魔・魔女」が登場する海外ドラマをご紹介。悪魔・天使が敵か味方か、兄妹で解決していく「スーパーナチュラル」。怪物と魔女・グリム兄弟の子孫が活躍「GLIMM」。悪魔モロクとの対決に妻「魔女」が複雑に絡みあう「スリーピーホロウ」。どれも内容・特殊効果も最高の作品である。興味のある方はぜひDVDで楽しんでみるのも良いかもしれない。
エキドナ(全ての怪物の母にして誘惑する蛇の原型)
※人間の上半身・蛇の下半身・背中には翼(四世紀の陶器より)
名前の意味は「女毒蛇」絶世の美女の上半身・世にも恐ろしい大蛇の下半身を持つギリシア神話の怪物である。「全ての怪物の母」という呼び名もあり、夫テュポンとの間には「地獄の番人ケルベロス」「ヒュドラ」を始めとする12体の怪物を産みだし、自分の子
双頭オルトロスと結ばれ、スフィンクスを始め4体の怪物を産んでいる。さらに英雄ヘラクレスとの間にも子供を儲けている。
多くの怪物を産んだエキドナだが、彼女自身の出自に関しては、はっきりしない。一般的には海神オケアノスの娘カリロエとメドゥーサの息子クリュサオルとの間に生まれた事になっている。確かにそう考えれば、半人半蛇のルックスに納得がいく。それ以外にもエジプト・スキタイ地方にもルーツがあるという説もある。
ケルベロス(エキドナの子供)
ゴルゴーン(天上の神々すら石化させる手ごわい3姉妹)
※メデューサーの首(1630年:ジャン・ロレンツォ作)
ギリシア神話にも出てくる怪物の中でも、不気味さ・手強さではトップクラス。おぞましい程醜い女性であり、髪の毛一本・一本がうねる蛇、その顏を目にした者はオリンポスの神々でさえ石化してしまうという。ゴルゴーンとは「海神ポルキュース」と海の怪物ケトの間に生まれたステンノ・エウリアレ・メドゥーサの三姉妹だが、メドゥーサだけが不死ではなく「死すべき定め」だとされている。そのせいか、メドゥーサは非常に美しい髪を持つ人間の娘だったとの伝説もある。その美しさを鼻にかけすぎ、アテネの神殿で不敬を働き、女神アテネの怒りによってゴルゴーンに変えられたという。
神話では英雄ペルセウスに退治されてしうまが、彼女の伝説は死ななかった。「地獄の女王」という新たな名を与えられ、その首には「邪眼除けの力」があると考えられるようになっていくのである。
聖人と悪魔の戦い(スティグマーター)
聖アントニウスVS悪魔
最も有名な戦いは3世紀の「修道士の父」と言われた聖者アントニウスへの攻撃である。
裕福な家系に生まれたアントニウスは、全てを捨て20歳の時に洞窟での修道院生活の中、悪魔による様々な攻撃を受けた。悪魔達は見るも恐ろしい、様々な動物の姿で現れ、角や歯・爪で彼を何度も何度も引き裂いていく。その時、突然一筋の光が射し悪魔達は、一斉に退散した。
ピオ神父VS悪魔
※「ピオ神父の手の甲の聖痕跡」
20世紀で悪魔の攻撃を受け続けたイタリアのピオ神父。
1912年6月、得体の知れない悪魔が出現、午後10時~翌朝5時まで神父を殴り、床に叩きつけ本や机を空中に投げたりした。同年10月に出現した悪魔は狡猾で神父に次の様な提案をするのである。
「霊父との付き合いを辞めねば殺す」と脅迫した。
1910年~1918年まで神父への肉体的攻撃は続いたという。
ピオ神父は積極的に「悪魔祓い」を行い、苦しむ人達を大勢救い1999年列福された。
まさに彼の生涯は「悪魔との闘争」に明け暮れる壮絶な日々だった。
「悪魔はどこにでもいる!!」
「悪魔祓い」は遠い過去のものではない。今現在も主にカトリック教会の中で行われている。
エクソシストは「祓魔法典」(1626年)を元に作られた「ローマ教会典礼定式書」に基づき、今も活動しているのである。
悪魔は聖に近い者や心迷う者達を虎視眈々と狙い待ち続けているのである。言葉巧みに「悪の道」に誘う者こそ「悪魔」ではないだろうか。私達は、誘いにのる事なく心を強く持ち、立ち向かっていく心の強さを持っていたいものである。
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