神話、伝説

女神アテナについて調べてみた【ギリシア神話】

女神アテナ

ギリシア神話の中で「女神アテナ」のシンボルは兜・槍・円盾と、強い女性のイメージである。

しかしアテナは優れた知恵の女神でもある。様々な発明を行い職人たちを守護するのも、技術と文明の女神であるアテナの役目でもあった。古代ギリシアで女達の主たる仕事は「はたおり」で、これはアテナが最も、気にかけていた分野でもある。
そんな女神アテナはとにかく(多方に渡り、色んな意味で)凄かった。
女神アテナの凄さを調べてみた。

ゼウスが出産!? 女神アテナ

ゼウスが最初に結婚をした相手は「知恵の女神メティス」であった。(ヘラは6番目の妻である)

彼女はゼウスの父:クロノスに吐き薬を飲ませるなど、ゼウスに力を貸した女神である。彼女の賢い知恵のおかげでゼウスの兄:ポセイドン・ハデスと次々と吐き出し、自分に味方してくれる神々を「オリンポス山」に集め、クロノスを王と崇めるタイタン達と戦うのである。(これが後に「タイタンの戦い」と呼ばれる)そして「ゼウス軍」の勝利に終わるのある。長男ハデスは冥界・次男ポセイドンは海・ゼウスは地上と大空を統治する事になる。
この女神メティスが妊娠するとゼウスは、彼女を呑み込んでしまうのである。それは祖母ガイアから

「メティスが最初に産む子は、知恵も勇気も持った素晴らしい女神だが、その次には男の子が産まれ、お前はその子に神々の王の地位を奪われる」

と教えられていたのである。メティスはなんにでも、姿を変える力を持っており、ゼウスはメティスに「本当に何にでもなれるのか?」と尋ね、変身する彼女に感心するふりをした。そして「まさかお前でも一滴の水滴にはなれないだろう」と彼女を挑発し、水滴になったメティスを飲んでしまうのである。しかし、彼女は飲み込まれても、ゼウスの腹の中で生き続け、しても良い事と悪い事をゼウスに助言してくれる様になるのである。
つまりゼウスは「知恵の根源」を自分の中に持ったという事である。

そしてメティスが妊娠していた子は、ゼウスに飲み込まれた後も順調に成長を遂げていた。その子が生まれる時、ゼウスは酷い頭痛に襲われ、自分の頭を斧で割らせた。するとそこから、黄金の鎧と兜を着け槍と盾を持った、見るからに勇壮な女神が天地を震撼させる叫び声をあげ、飛び出したのである。それがアテナであった。

海神ポセイドンとの対決!!

アテナは多くの都市で守護神として祭られていたが、彼女の庇護をもっとも誇ったのは、「アテナイ(アテネ)」である。

現在でも市の中央にある「アクロポリスの丘」には、女神アテナを祭った「パルテノン神殿」が堂々と姿を見せている。しかし彼女はすんなりこの地の守護神に治まった訳ではなく、海神ポセイドンとこの地をめぐって争ったのである。

見かねたオリュンポスの神々は「このアッティカの住民により良い贈り物をした方に、この地をゆだねる」と宣言した。ポセイドンは三叉の鉾で地面を打ち、海水の泉を湧き出させた。一方アテネは槍で地面をつきオリーブの樹を生え出させた。

神々の協議の結果「乾燥の激しいこの地にはオリーブの方が住民達のためになるだろう」と軍配はアテナに上がったのだった。こうしてアテナは、「アテナイ」及びアッティカ地方の守護神となり「オリーブ」という素晴らしい贈り物をした女神として、崇拝された。

両者の争いが行なわれたのは「パルテノン神殿」の北側「エレクテイオン神殿」が建つ場所で、オリーブの聖樹とポセイドンの三叉のほこの穴が残っているとか。。
オリーブは今も昔もその実は食用に香油としてまた石鹸・医薬品としギリシアの貴重な輸出品となっている。

軍神アレスとの対決?!

紀元前約320年のギリシアの原物を摸したローマのアレス wikiより

アテネは「戦いの神」といえど「軍神アレス」とは戦争との関わり方が違う。思慮深く、正義の戦いを導くアテナに対し、アレスはただ暴力的で戦争と殺戮と血を好む神だった。
その乱暴な性質の為、神々の中でも嫌われ、実父ゼウスですら手を焼く程であったが、ライバルとも言えるアテナには二度に渡り痛い目に遭わされている。

トロイア戦争の時、トロイア軍の味方だったアレスは、アテナの援護を受けていた英雄ディオメデスと戦う事になった。結果、ディオメデスの槍がアレスの腹部を突き刺し、ディオメデス(庇護していたアテナ)の勝利。アレスは大声でわめきながら父ゼウスに訴えるが「戦いの神であるのに情けない!!」と叱られるのである。

その後、アレスはアテナに復讐をしようと戦いを挑むが、この時もアテナの投げた石がアレスの頭を直撃し敗北した。

まとめ

神話の中でも、多くの英雄がアテナに助けられ、数多くの手柄をあげている。

ペルセウスがゴルゴンのメドゥサの首を取って退治するのを助け、ゼウスの正妻ヘラの迫害にあったヘラクレスの冒険を助け続け、ヘラクレスが神々の仲間入りをする時に、昇天する馬車の御者の役をしてやった事も有名である。

パルテノン神殿は、有事の際に市民が立てこもる要塞であると同時に、都市の聖域でもあった。この神殿は、調和のとれた均整美を追求したもので、数学的な計算に基づき、建設原理は後世の建築に大きな影響を与えた。パリのマドレーヌ教会は古典好きのナポレオンが、このパルテノン神殿を基にして創らせたと言われている。

あらゆる意味で「女神アテナ」はやっぱりスゴイとしか言いようがないギリシア神話の神である。

関連記事 :
ギリシア神話はあらゆるものの源泉だった
ギリシアの大神ゼウスは好色で浮気三昧だった
ヘラクレスはなぜあれほど強かったのか?【ギリシアの英雄】

アバター

総一郎

投稿者の記事一覧

細かいデータと、歴史全般が得意。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 「バベルの塔」は実在するのか?モチーフとなったジッグラト【エテメ…
  2. 【日本初の天皇、神武天皇に抵抗し理不尽に殺された】長髄彦の哀れな…
  3. 【正体はただの人間だった?】 変質者や犯罪者としか思えない妖怪伝…
  4. 古の伝承が語る~ 体内に宿り人を操る『寄生虫』の奇怪な伝説
  5. 『中国の恐るべき鬼たち』倀鬼、縊鬼、刀労鬼の伝承
  6. 【中国神話】邪悪な四凶とは? ─皇帝に追放された伝説の怪物たち
  7. 【国王すらひれ伏した幼き予言者】クマリとは ~ネパールの生き女神…
  8. 世界各地に伝わる「ゾンビ的怪物」の神話や伝承 ─ゾンビの原型はブ…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

働き方改革について調べてみた

過労死やサービス残業といった社会問題が注目を集めていますが、未だにそれら厳しい労働環境による悲し…

円空とはいかなる人物か「生涯仏を彫り続けた僧」

仏教美術といえば、法隆寺に代表される飛鳥時代や阿修羅像が作られた天平時代について語られること…

古代中国の女性にとって最も屈辱的だった「恥ずかしい」刑罰とは

古代中国の女性たちは、現代の私たちが想像するよりもはるかに厳しい社会的制約の中で生きていた。…

「プリゴジン(ワグネル)の反乱」とは何だったのか? 【混迷を極めるロシアとプーチン 】

「ロシア内戦」が一時SNSのトレンド入り2023年6月24日の朝、ロシアから衝撃的なニュースが飛…

なぜ武田家は戦国最強軍団だったのか? その理由とは

エピローグ「風林火山」の旗をなびかせ戦場を疾駆し、圧倒的な強さで敵兵をなぎ倒していく。そ…

アーカイブ

PAGE TOP