古代文明

なぜ人間は土や木を食べられないのか?その理由が古代マヤ文明の創世神話にあった!

子供のころ、おままごとで泥や枝きれ、石ころや葉っぱなどを食べ物や料理に見立てたことがあるかと思います。

「さぁ出来ましたよ。どうぞ召し上がれ♪」

これはサラダかな?(イメージ)

豊かな想像力を駆使してシチューや肉団子、唐揚げにハンバーグなど、ベンチの食卓いっぱいに子供たちの大好きなご馳走を並べていると、意地悪な男子がやって来て

「そんなモン食えるわけねぇだろ。もしそれが本当にご馳走だって言うなら、今すぐこの場で食ってみろ!」

などとしつこく詰め寄っては困らせたり、挙げ句は泣かせてしまったりしていました。いけませんね。

しかし、その辺にあるものが何でも美味しく食べられたら、どんなに裕福に暮らせることか……そう考えた方も少なくないでしょう。

それでもやっぱり食べられないのは、当然ながら人間がそういう身体のつくりをしているからであって、古代マヤ文明においては、神様が人間を創造するプロセスに理由を見出しています。

さて、どんなエピソードがあったのでしょうか。

マヤ文明とは?ざっくり紹介

とりあえず「マヤ文明って聞いたことはあるけど、地球のどの辺のいつごろの話なの?」という疑問もあるかと思うので、ザっと紹介しますと、場所は南北アメリカ大陸の「くびれ」、要するにメキシコ南東部からグァテマラ、ベリーズ辺りです。

マヤ神話に登場する神様の一柱・イツァムナー。今回は登場しない。

時代はこれがまた結構長くて、伝承の時代も含めれば紀元前2000年ごろから、スペインの侵略によって完全に滅ぼされる17世紀まで、約3,700年の歴史を持っていました。
※現時点で世界最長と言われる日本の歴史が、紀元前660年(初代・神武天皇の即位)から令和2年(2020年)現在までの2680年ですから、マヤ文明がいかに長く続いたかが分かります。

さて、前置きはこのくらいにして、神様が人間を創造した本題に入りましょう。

さぁ、人間を創ろう!

今の世界が出来る前は、大地がなくてただひたすら空と海が広がっていたと言います。

空と海が混沌としていた原初の世界(イメージ)。

その水がどうやって海としてとどまっていたのか不思議ですが、ともあれその真ん中に、6柱(はしら。単位)の神様がいました。

1柱目は、産み出す神様アロム
2柱目は、産ませる神様クァホロム
3柱目は、海を司る神様ググマッツ
4柱目は、空を司る神様ツァコル
5柱目は、始まりの神様テペウ
そして6柱目は、モノの形をなす神様ビトル
※順番は50音順であり、序列ではありません。

彼(女)らがどのように過ごしていたかは分かりませんが、しばらくすると、始まりの神様テペウと、海を司る神様ググマッツがこの世界をどうするか議論しました。

両者の答えは「「大地!」」……そう叫ぶと、海の中から大地が浮上してきたので、空を司る神様ツァコルと協力して海と空から大地を押さえて安定させます。

さぁ、大地が創られたら、今度はクァホロムが、アロムを促して動物を産ませ、ビトルが様々な形に作り上げました。

こうして大地や海や空に様々な生物が繁栄しましたが、彼らはいずれも言葉が理解できない(と考えられていた)ため教育できず、神々に対する信仰心が育ちません。

「……ダメだこりゃ。やっぱり、我々と同じ姿でないと」

そこで初めて人間の創造に着手した神々ですが、最初は試行錯誤の連続で、素材選びに難航しました。

3度目の正直で人間づくりに成功!

まずは泥。土と水なら、そこいら中いくらでもあるからさぞや繁栄させられるだろう……と思ったようですが、せっかく出来た人形は、すぐに崩れたり、水にとけたりして上手く行きません。

「次!」

今度は大地に生える木で人形を創り、強度はあるし水にも強いのですが、いかんせん中が虚ろだったようで魂が宿らず、智慧も信仰心も備わらなかったため、やっぱり失敗です。

「……えぇい、三度目の正直だ!」

と選んだのはトウモロコシの穂。白いのと黒いのと黄色いのをかけ合わせて人形を作ったところ、それが大地の力を宿して満足のいく人間が完成したのでした。

人間を創るなら、トウモロコシに限る?(イメージ)

ちなみに、このトウモロコシの色が混ざりあって肌の色や人種の違いになっていったということです。

昔から「身体は、食べたものでつくられている」と言いますが、人間がトウモロコシを食べられて、土や木を食べられないのは、人間の身体がトウモロコシで出来ているから、と考えられています。

これはトウモロコシがマヤ人にとって主食だったからであり、日本で似たような神話が創られていたら、きっとコメだったことでしょう。

エピローグ

「いやぁ、よかったよかった……」

自分たちと同レベルのクオリティに仕上がった人間たちを見て大いに満足した神々でしたが、誰かがふと気づきました。

「でも、ちょっとマズくね?」

「何が?」

「考えてもみろよ。人間が神々と同レベルだったら、人間が神々を信仰する理由がなくなるぞ?」

「言われてみれば、確かにそうだな」

「それに、彼らに我々と同じ何でも見通せる目を与えておいたら、きっとアラ探しを始めて、争いも絶えなくなることだろう」

「物事は何でも、ちょっと見えにくいくらいの方がいいのではなかろうか?」

「そうだな、あまり頭がよすぎるのも考え物だな。彼らが我々のように自制できるとは限らないしな」

「では、彼らの目をちょっと曇らせてやろう。その方が、彼らも我々を信仰するようになるだろう」

信仰はある?が、視界と知恵の曇った人々(イメージ)

かくして人間たちの目には霞が吹きかけられたので、その視界と知恵は、いつも少し曇っているということです。

※参考文献:
平藤喜久子『世界の神話がマルわかり 世界の神様解剖図鑑』エクスナレッジ、2020年3月
林屋永吉ら訳『マヤ神話 ポポル・ヴフ』中央公論新社、2001年8月

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角田晶生(つのだ あきお)

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フリーライター。日本の歴史文化をメインに、時代の行間に血を通わせる文章を心がけております。(ほか不動産・雑学・伝承民俗など)
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