ナチス・ドイツの新兵器
ナチス・ドイツが様々な分野においてその科学技術を用いた新兵器開発を行っていたことはよく知られています。
実戦投入された兵器だけでも多岐に渡っており以下のような代表敵兵器が挙げられます。
銃器では、小銃のStg44は近代的なアサルトライフル(突撃銃)の元祖と言われ、また拳銃のワルサーP38はダブルアクション機構を備えた9mmパラベラム弾を使用するものとしてよく知られています。
またメッサーシュミットMe262戦闘機は世界初の実用的なジェットエンジン搭載機であり、V-1号は巡航ミサイル、V-2号は大陸間弾道弾の元祖であるなど、枚挙に暇がないほどです。
そんな中にナチス・ドイツがUFO、ここでは空飛ぶ円盤という意味での、それを造っていたという巷説もまことしやかに語られています。
南極大陸の領有権
そうしたナチス・ドイツUFO開発説のベースとなったのは、プロペラ機ながら上下から見ると翼部分が円形をしているAS-6や、尾翼のないブーメラン型をしたホルテンHIX229ジェット機などの実在した新型航空機の存在を拡大解釈したものではないかと考えられます。
これにナチス・ドイツが南極大陸に極秘の軍事基地を建設していたという噂がプラスされて、一気に南極にナチス・ドイツのUFO基地があるという怪しげな伝説にまで飛躍したものと思われます。
1939年1月にナチス・ドイツの一調査団が南極大陸へと上陸したのは事実です。
しかしこの調査団の目的は、その頃イギリスとノルウェー両国が南極大陸を部分的に自国の領土であるという態度を表明していたことに対し、ドイツも同じく領有権の主張を思考しようとした為と考えられています。
ネオナチの戦略
こうした南極大陸の調査の件と、ナチス・ドイツの敗戦後1945年7月にドイツ海軍所属のUボートが南米アルゼンチンに到着したことから、アゼンチンの新聞が「ヒトラーを含むナチス・ドイツのメンバーがUボートで南極大陸の秘密基地に上陸した」という内容が報道されました。
これを全世界の報道期間が取り上げることになって一躍広まったものと見られています。
また一方では、ホロコースト否定論者として一部にその名を知られていたドイツ系カナダ人エルンスト・ツンデルが、いきなりネオナチの主張では世間に受け入れられないので、南極のUFO伝説を利用して世間の耳目を集めようとしたという政治的な側面もありました。
ホロコーストの見直しを企図
エルンスト・ツンデル はドイツ生まれで1958年からカナダに在住し、デザイナー業を行うと同時に1980年に、ホロコーストの死者の数は誇大に喧伝されているという主張を行った人物でした。
ツンデルはカナダで2年勾留され、その後ドイツに強制送還されるとドイツの警察当局からホロコーストを否定した罪に問われ逮捕・起訴されていました。
ツンデルはホロコーストに対する歴史上の「見直し」を唱えるその方面では有名な人物でしたが、ドイツとオーストリアは、ホロコーストの否定やナチス称賛の言動は、法律上からも禁止されている行動となっています。
ネオナチの広告塔
ツンデルを含む大半のホロコースト否定論者は、ホロコーストとはユダヤ人による陰謀であり、ナチス・ドイツを陥れる目的で過大に喧伝されたものと主張しています。ここからホロコーストを否定する主張は、一概に反ユダヤ的な思想に貫かれた考えと対を成すものとなっています。
南極とUFOとナチスが絡んだ不思議な伝説とは、確たる根拠のないネオナチ活動の広告塔という意外な正体を持つ伝説でした。
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