清朝
中国の長い歴史の中で、数多くの王朝が興っては消えていった。
その封建統治の最後の王朝が清朝である。清朝には300年の歴史がある。
清朝の皇帝を取り巻く女性たちのドラマは数多く製作され、放送されてきた。
皇宮にいた姫たちの美しい衣装や装飾は、一際目を引くものである。
その中でも特徴的な装飾が「甲套 : こうとう」と呼ばれる爪のカバーである。
一種の装飾品であるが、その一つ一つがとても凝ったデザインで、豪華な作りとなっている。
爪の意味
指の爪の長さは、その人物の運気に大きな影響を及ぼすと信じられていた。
長ければ長いほど、幸運が訪れるという。
当時の男性も、爪を長くしている女性は、脆く、優雅で品があると見なしていた。
皇帝も同じで、姫たちのその美しい爪と爪カバーを愛でていたという。そして数多くいる姫たちを見分ける一つの目印にもなっていた。
そして中国には「体は親からもらった大切な贈り物であり、爪であってもむやみやたらに無駄にしてはならない」という考え方があった。
宮廷の姫たちが爪を長くしていたのも、その様な背景があったのである。
長い爪を守るため
姫たちが爪カバーをつけていた理由は、「長い爪を守るため」であった。
小指と薬指の2本の指につけている。
現代の私達からすれば、爪を伸ばしていると大変不便である。何をするにも邪魔になってしょうがない。
ところが皇宮に住む姫たちは不便ではなかった。身の回りの事は女中が行い、自ら手を動かす事はほぼなかったからである。
爪カバーの長さから推測されるに、彼女たちの爪は相当長かったようである。
爪カバーを愛用した事で知られる西太后は、なんと20センチほどもあったという。
専門の女中が毎日とても慎重に西太后の爪をケアしていたそうで、牛乳に浸し、お湯に浸し、西太后が満足するまで続けられた。
豪華な装飾品の一つ
西太后の爪カバーはとても豪華であった。基本的には金でできており、その上にたくさんの宝石が散りばめられていた。
自らの身分の高さを表すため、ただの皇后ではなく強大な権力をもっているということを表したかったのである。
爪を長くしているということは、とても優雅で申し分のない環境で生活しているという事を強調するものだった。
一般市民から見た「不便」は、上層階級の女性にとっての「優雅」を意味していたのである。
身を守るため
爪カバーには他にも重要な使い方があり、ただ美しく身分を表す象徴ではなかった。
自分の身を守るための武器でもあったのである。爪カバーの先端は非常に尖っており、触れると怪我をするほどであった。
優雅な装飾品は攻撃力も兼ね備えており、か弱い姫たちの武器にもなり得たのである。
西太后はなんと、麻酔薬を爪カバーに塗っていたそうである。
小さく美しいその装飾品は、一方で恐ろしい武器にもなったのだ。
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