中国史

中国の妃たちが恐れた冷宮送り 〜【罪を犯した后妃が生涯幽閉された地獄のような場所】

紫禁城

現在の北京にある紫禁城(しきんじょう)は、壮大な歴史的建造物である。

ここはかつての皇帝たちが暮らし、政治を取り行った場所でもある。

北京と藩陽の明・清王朝皇宮の一つとして、ユネスコの世界遺産となっている。
「紫禁城」は、別称で「故宮」と呼ばれ、現在では博物館となっている。

歴代皇帝によって収集され保管されていた、歴史的文化財を保存・展示している。

2011年5月の時点で収蔵品は絵画・陶磁器・文書など180万点である。

北京の故宮博物館は建造物の美しさの目を奪われる。中国ならではの派手な色使いが美しい。
敷地面積は72haあり、世界最大の木造建築群が立ち並んでいる。

この紫禁城は、多くの歴史的出来事や物語の舞台となった。その物語は今もなお語り継がれており、皇帝や宮廷で暮らす女性たちの生活は、ドラマや映画などで幾度も描かれてきた。

しかしながら、宮廷での生活は女性たちにとって必ずしも幸福なものではなかった。

もちろん皇帝から寵愛を受ければ、皇子を産む可能性もあったが、その子が次期皇帝になるかどうかは不確かであった。結果として多くの場合、皇位を巡る争いが勃発したのである。

中国の妃たちが恐れた冷宮送り

画像 : 紫禁城 太和殿 wiki c Dave Proffer

現在の紫禁城の多くの場所は、きれいに整備されて公開されている。煌びやかな宮殿や皇帝たちの住まいは美しく豪華で、多くの観光客を魅了している。

ところが、紫禁城には公開されていない場所がある。それは「冷宮 : らんごん」と呼ばれる場所である。

冷宮とはどんな場所なのか?

冷宮とは皇帝の寵愛を失った女性たちや、罪を犯した者が入れられた場所である。つまり現在の監獄のようなものだ。

そこには歴史上重要な書物や物品などがあったとは考えられず、観光客がそこを見ても何も得られないということなのだろう。

故宮は、明朝清朝の皇宮であり、ほとんどは煌びやかで眩い場所だった。

しかし冷宮だけが日が当たらずジメジメして、風通しが悪い場所だった。人体にも良くなかったであろう。
冷宮に一度入れられると死ぬまで出ることはできず、一生をそこで過ごすことになるのだ。

入れられた者たちの多くは気を病み、精神的な病にかかる者も多くいたという。

中国のドラマでは、かつては豪華な装いをして皇帝の側にいた女性が、冷宮に入れられて廃人の様になってしまう様などが描かれている。

冷宮に入るぐらいなら、自決を選んだものも多くいたと伝わるほど恐ろしい場所だったとされている。

小さな薄暗い部屋に入れられ行動は制限された。食事など必要なものは小さな窓から与えられ、顔を洗う桶や用を足す桶などもその小窓から支給された。
顔を洗える機会も少なく、体を清潔に保つことすらできなかったという。

もちろん話し相手などおらず、孤独な生活を永遠に強いられるのである。

多くの者の命がそこで失われ、亡くなっても丁重に葬られることはなく、死んでもなお酷い扱いを受けた。

中国の妃たちが恐れた冷宮送り

イメージ画像 : 冷宮の生活

冷宮内での特権

ただし冷宮内での扱われ方には例外的な場合もあった。

冷宮に収容される女性たちの中には、特定の条件や事情によって入れられ、他の女性たちとは異なる待遇を受けることもあったという。

例えば、冷宮に入れられた女性が皇帝の子を身ごもっていた場合、その子の安全を確保するために特別な取り扱いを受けることがあった。彼女たちは冷宮内で子供を出産し、その子供が後に皇帝として即位する可能性もあったためである。そのような場合、母子ともに冷宮内で特別な待遇を受け、他の女性たちとは一線を画していた。

また、一部の女性は冷宮に入れられた後に赦免される場合もあった。彼女たちは罪を犯したり、寵愛を失ったりした後、後悔や謝罪の意を示すことで再び皇帝の寵愛を取り戻すことができることもあったのだ。このような場合、冷宮に収容される期間が短くなるか、完全に解放されることもあった。

冷宮は厳しい環境であったにもかかわらず、こうした一部の女性たちは冷宮内での立場を利用し、政治的な影響力を保持したのである。彼女たちは他の女性たちとの関係や皇帝とのつながりを利用して、自身の地位を回復する試みを行ったのだ。

冷宮は一般の観光客には公開されていないため、具体的な詳細や内部の様子については限られた情報しか知られていない。

ただし前述したように、文学やドラマ、映画などの創作物を通じて、冷宮での女性たちの苦悩や悲劇が描かれることは多い。これらの作品は、冷宮の存在やその厳しい環境をよりリアルに伝える一助となっている。

冷宮が公開されない本当の理由とは?

清朝の最後の皇帝、映画・ラストエンペラーで有名な愛新覚羅溥儀は、冷宮についてこう語っている。

「冷宮は皆が思うような恐ろしい場所ではない。皆が過度に恐ろしがっているだけである。冷宮を公開しない理由は、長年放置されたゆえに劣化が進んでいるからだ。中には何も歴史的に貴重なものはなく何百年も放置されて木材の腐敗も進んでいる、しかし経費が足りず修繕すらできなかった。そして、その必要性もないのだ。」

今に至るまで公開されていない理由は、そもそもこの建造物を修復する必要がないことと、観光客の安全を守るためであった。

現在の冷宮は、一塊の腐敗した建物群でしかないようだ。

最後に

冷宮には暗い過去があり、その存在は故宮博物館の一角に埋もれていく運命をたどっている。私たち一般の観光客は興味本位で立ち入るべき場所ではないだろう。

冷宮の存在は、過去の「黒歴史」として残されている。そこには苦悩や悲劇が詰まっているのである。

しかしながら、冷宮の存在は我々に教訓を与えてくれる。過去の過ちや悲劇を繰り返さず、人々が尊厳と平等を尊重する社会を築くことの重要性を教えてくれるのだ。

冷宮は、故宮博物館の片隅で朽ちていく運命であるが、その存在は永遠に記憶されるだろう。

 

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