中国史

四川料理はなぜ辛いのか? 「激辛料理 麻辣兎頭(ウサギの頭の唐辛子煮)とは」

辛いもの好きの中国人

中国人の大半は辛い料理が大好きだ。

唐辛子を必ず料理の下味として使う。唐辛子を自分で育てて乾燥させて粉にしたり、そのまま切ったりして料理に使う。

だが、中国の全ての地方で辛いものが好まれているわけではない。
筆者が住んでいた山東省では辛いものもあったが、塩辛いものや山椒の効いた麻辣の味が好まれていた。

南の地域では甘辛いものが好まれたりしている。

辛い料理のイメージが最も強いのは、四川省(しせんしょう)ではないだろうか。

四川料理は、その辛さと独特の風味で知られており、多くの人が四川省と聞けば辛い料理を連想するであろう。

四川料理の辛さは、唐辛子や花椒(ファージャオ)などのスパイスを多用することによって実現される。

辛さだけでなく豊富な香辛料と調味料を組み合わせることで、複雑な味わいを持つことが特徴的だ。

四川料理はなぜ辛いのか?

イメージ画像 : 四川料理

四川料理と聞くと、油がいっぱいの真っ赤な料理や、ラーメンを思い浮かべる人も多いかもしれない。

筆者は以前、四川出身の大学生と友達になった。

彼女の話によると「唐辛子を使っていない赤くない料理は食べた気がしない」という。辛くないとご飯を食べる意味がないとまで言うのである。四川では唐辛子の辛さも、山椒の実の痺れるような辛さも両方好まれている。

四川料理の写真を見ると、どれも本当に真っ赤なものばかりである。

私たち日本人の唐辛子の感覚は「調味料として少し入れて辛みを加える」程度であるが、四川料理は「唐辛子自体を食べる」といった感覚で、料理の上にどっさりと乗っている。

時々ひと切れ食べて、「辛い!」という感覚とはちょっと違うようだ。

四川料理

四川料理はなぜ辛いのか?

画像 : 麻辣兎頭(ウサギの頭の唐辛子煮)

四川料理には「麻辣兔頭(マーラートゥートウ)」という一品が存在する。

この料理は、唐辛子と山椒の実で絡められた「うさぎの頭」を炒めたものである。

豆板醤を使用しており、とろみのある辛いタレが特徴的な美味しい料理となっている。唐辛子と山椒の実がたっぷりと入った熱々の油の中にうさぎの頭を入れて炒めるのだが、その辛さは一級品と言えるだろう。

メディアが麻辣兔頭を紹介する際にも「辛いものが苦手な方は絶対に注文しないように」とよく警告されている。

一口食べると、その辛さが一気に胃まで届き、辛さのために汗が吹き出ることもある。その香りは食欲をそそり、食べる者を魅了するのだ。

しかしその見た目のインパクトから、食べることを躊躇する人も多いという。

ちなみに四川料理で一番辛いのは「切魚頭」という料理である。

厚めに切った唐辛子がたっぷり使われた料理で、魚の臭みは一切なく、その香りを嗅いだだけで、ゴクリと唾を飲みこむほどだそうだ。

ただ、四川の中でも辛いと言われるほどの料理なので、上級者以外はやめておくのが賢明である。

なぜ四川料理は辛いのか?

四川料理はなぜ辛いのか?

画像 : 代表的な四川料理 麻婆豆腐 wiki c

一般的には辛いものを過剰に摂取すると、刺激が強すぎて胃腸に負担がかかるため、控える人が多い。

では、四川の人々はなぜこんなに辛いものを食べても大丈夫なのだろうか?そして四川料理はなぜこれほどまでに辛くなったのであろうか?

実は、四川の地理と環境が関係していると言われている。

四川は盆地であり、一年を通して雨が多く湿度が高い地域で、曇りの日が多いのである。

このような気候や環境の影響で、四川の人々は辛いものを好んで食べるようになったのだとか。

なぜなら、唐辛子や辛い調味料を摂取すると、身体は汗をかき、血液の循環が促進され、体内の湿気が外部に放出されるという効果があることに気付いたからだ。

そのため辛い料理を食べることが習慣となり、人々は競って辛い料理を作り始めた。そして代々受け継がれた遺伝子によって、現代の四川の人々は辛いものを食べることができる体質を持つようになったという。このような背景から、四川料理は辛さが際立っているのである。

四川が古代において交通の便があまり良くなかったことも要因とされている。

塩を四川に運ぶことは大変困難であり、薄味の料理はあまり好まれなかったため、他の調味料で味を引き立てる必要があったのである。

そこで、乾燥させれば保存が容易な唐辛子が好んで料理に使用されるようになった。

ちなみに、四川の女性は唐辛子をよく摂取することから、韓国の女性のように美肌でスタイルが良いと言われている。

唐辛子は新陳代謝を促進する効果があり、美容に良いとされている。

 

アバター

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. アバター
    • 名無しさん
    • 2023年 6月 03日 6:13pm

    唐辛子は新大陸が原産です。大航海時代までアジアにはありませんでした。古代においては、唐辛子ではなく花椒等が使われていたと思われます。

    2
    0
  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. グランピング おすすめスポット 4選
  2. 白起 ~春秋戦国時代伝説の不敗将軍【捕虜40万を生き埋めにした人…
  3. 『古代中国』 戦国時代の「古代墓」「剣や戦車」が大量に発見される…
  4. 古代中国の美人メイクとは 「地雷メイク、美白、フェイクエクボが流…
  5. 【犠牲者436人超】史上最恐の人喰いトラ vs 伝説のハンター「…
  6. 古代中国の神の木? 三星堆遺跡の「青銅神樹」とは
  7. 秦の始皇帝は水洗トイレを使っていた? 【発掘された世界最古の水洗…
  8. 2019年の「ミュンヘン安全保障会議」を振り返る 〜米国vs中国…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

今川氏真 「生まれる時代を間違えた」 なぜ暗愚な人物とされたのか?

今川氏真は、かつて「海道一の弓取り」と讃えられた大名・今川義元の跡目を継ぎながら、一代にして…

【芸妓からアメリカの大富豪の妻へ】モルガンお雪 ~明治のシンデレラの生涯

明治時代、アメリカの大富豪モルガン財閥創始者の甥と結婚し、海を渡り、波瀾万丈な生涯を送った祇…

『豊臣秀頼の本当の父親は誰?』通説通り秀吉の実子だったのか?その謎に迫る(その2)

豊臣秀吉の後継者・秀頼は、時代が安土桃山から江戸に移行する激動期に、その出自と地位ゆえに悲劇…

【光る君へ】 敦明親王(阿佐辰美)の悲劇… 道長の野望により前途を絶たれる

三条天皇の第一皇子敦明親王(あつあきらしんのう)阿佐 辰美(あさ・たつみ)三条天皇の…

【 米軍・SWAT・FBI 】アメリカの突入作戦について調べてみた

※M4カービンと盾を携行したFBIのSWAT隊員犯人が人質をとり立てこもる事件の現場にお…

アーカイブ

PAGE TOP