中国史

古代中国の枕事情とは 「硬い陶器の枕が流行していた?」

健康と睡眠

健康で過ごしたいなら、適切な睡眠は欠かせない。
質の良い睡眠は、心と体を健康にする。

現代人は不規則な生活や過度のストレスから、良質な睡眠をとることが難しくなってきている。

古代中国の枕事情とは

画像 : 台湾の小学校で伏せ寝する子供達 イメージ

筆者が住んでいる台湾では、お昼寝の習慣がある。

彼らは幼い頃からお昼寝の習慣があり、学校や会社でもお昼寝時間がある。筆者もすっかりお昼寝の習慣がついてしまって、時間が来ると眠らないことには頭が冴えない。

【外国人が驚く台湾人のお昼寝文化とは】 お昼寝の様々な効能
https://kusanomido.com/study/overseas/72949/

快適な睡眠のための枕やマットレスも多く販売されている。それぞれの好みがあるため「高反発」や「低反発」など様々な種類が存在する。

昔の日本では、髷や日本髪を結っていたことから「小さな箱のような枕」を使っていた。なんとも寝心地が悪そうだ。

では、古代中国ではどんな枕を使っていたのだろうか?

陶器の枕

古代中国の「枕」の歴史は古く、殷、商朝の時代から存在していたと多くの学者が指摘している。
そして春秋戦国時代までには、枕は位の高い者だけでなく、百姓や一般人にも日用品として定着していたと考えられている。

古代の枕は、高価なものから安価なものまで様々あり、「翡翠、陶器、漆器、皮、藤、竹、布」などであった。

古代においても現代の高反発・低反発のように、硬さ柔らかさで分かれていたようである。

古代中国の枕事情とは

画像 : 陶器の枕 public domain

陶器の枕は、隋朝の時代に流行り始めた。

埋葬品の一つともされ、使用した主人が亡くなったとき、共に埋葬されていた。

陶器の枕は非常に高価で、隋朝の時代では一般市民には手が届かない代物であった。

一般に流通するようになるのは、唐朝の時代以降である。

陶器の枕の寝心地はいかに!?

古代中国の枕事情とは

画像 : 景徳鎮で作られた美しい枕 public domain

「陶器の枕」は高級そうではあるが、実際に使用すると頭が痛くなりそうだ。

しかし、当時の人たちは陶器の枕を使うことは体に良いと考えていた。特に「目や脳に効果がある」という認識だったようである。

現代の専門家によれば、睡眠時に頭部の温度が過度に高いと眠りにくくなるという。

陶器の枕は夏でもひんやりと頭を冷やしてくれる。
クーラーなどの設備がなかった時代において、陶器や翡翠の枕は頭部の熱を拡散し、快適な眠りを提供したに違いない。

では、寝心地はいかがなものであっただろうか?
当時は髪を長く伸ばしている人が多かった。髪のクッションで多少の硬さは気にならなかったのではないかと推測されている。

唐の時代以降、陶器の枕が流行し始めると、その技術が競われるようになった。

枕は一種の芸術品とされ、名言が書かれたり、美しい装飾が施されるようになった。人々は自分の好みの言葉が書いてある枕を買い、朝起きて一番にその言葉を見て自分を鼓舞し、新しい1日をスタートすることができた。

とはいえ、その寝心地の悪さから、実際のところ多くの人は柔らかい枕を日常的に使用していたと考えられている。だが、その材料は布や皮など朽ちやすいものであったため、現存するものは少ないようだ。

参考 : 中國枕頭的歷史,你知道幾種 | 每日頭條

 

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く
Audible で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 洪武帝について調べてみた【中国最大の下克上と功臣の大粛清】
  2. 「永遠」を求めた始皇帝 ~【始皇帝陵と兵馬俑】
  3. 古代中国の謎民族「毛民」、仙人となった「毛女」……毛にまつわる不…
  4. 隋について調べてみた
  5. 漫画『キングダム』で中国史を学ぼう! 春秋・戦国時代のリアルな…
  6. 始皇帝陵で「ヨガのポーズの人形」が発見される
  7. 『古代中国遺跡から宇宙船のハンドルが発掘?』 謎の三星堆遺跡 「…
  8. 『中国によるレーダー照射』その背景にある東シナ海の歴史と緊張の理…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

『6人の女の城』 シュノンソー城 ~女城主たちの数奇な運命を刻んだ優美な名城

まるでファンタジーかおとぎ話の世界に迷い込んだかのような美しいヨーロッパの古城。そんなお…

奈良の名僧、若き僧侶への嫉妬で地獄行き「なぜあいつばかり…!」

元興寺とは元興寺(がんごうじ)は「古都・奈良の文化財」の一つとして世界文化遺産に登録され…

本当の刑務所について体験し調べてきた【実録】

私は、受刑生活合計15年、刑務所回数6回目のまだまだ刑務所的には新参者です。これで新…

「新5千円札の顔」津田梅子 ~日本の女子高等教育に人生を捧げた津田塾創設者

津田梅子(つだ うめこ)は、「男性と協力して対等に力を発揮できる、自立した女性の育成」を理念とした女…

「パンダが日本から消える?」外交官となった神獣の数奇な歴史 〜パンダ外交150年の歩み

和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドで飼育されているジャイアントパンダ(以下、パンダ)4頭…

アーカイブ

人気記事(日間)

人気記事(月間)

人気記事(全期間)

PAGE TOP