中国史

古代中国の謎の遺跡から発見された「黄金の杖」とは 【三星堆遺跡】

三星堆遺跡と黄金

1986年に、中国の四川省三星堆で発見された三星堆遺跡(さんせいたいいせき)は、未だに解明されない謎が数多くあることから、多くの歴史ファンの好奇心をくすぐっている。

これまでにも本サイトでは三星堆遺跡の謎の出土品について、いくつか解説してきた。

【古代中国の宇宙人遺跡?】 三星堆遺跡と「目が縦」だった謎の王様とは
https://kusanomido.com/study/history/chinese/77475/

「中国で発見された最も古く高い銅像」 青銅大立人とは ~三星堆遺跡
https://kusanomido.com/study/history/chinese/78218/

【古代中国の謎の像】 大立人は一体何を持っていたのか? 「三星堆遺跡」
https://kusanomido.com/study/history/chinese/78224/

三星堆遺跡の出土品の多くは青銅器であるが、黄金の物品も数多く出土している。

今回はその中でも貴重な出土品である「金杖」について解説しよう。

黄金の杖

画像 : 三星堆遺跡黄金杖

三星堆遺跡 黄金杖とは

この「黄金の杖」も、中国政府によって国外に持ち出し禁止の「国家一級文物」に指定されている。

1986年の発掘調査の際に発掘され、年代は西暦前4000年から西暦前3600年であると推定されている。
長さは1.42メートルで重さは500グラムで、木の杖に7ミリの厚さの純金の装飾が施されている。出土した時点で中の木はすでに腐って炭化していた。

この黄金の杖は歴史的価値もさることながら、その高い技術も注目されている。

三星堆遺跡で発見された黄金の物品の素晴らしい点は、黄金が非常に薄く加工されているということだ。この時代にこれほど薄く黄金を加工できる技術があったことが非常に驚くべきことなのである。しかもその薄く加工した黄金の上には、図案が非常に細かく彫られている。

この黄金を薄く作る手法は三星堆文化の独特なもので、漆木器や青銅器などが薄い黄金で包まれて装飾品として仕上げられている。この手法は商王朝時代の影響を受けたと考えられている。

通常、遺跡で黄金の物品といえば、人が身につける装飾品が連想される。これほどの技術を持っていた三星堆文化であれば、製作はお手のものだったはずだ。
ところが耳輪や首飾りなど、人が身につける黄金の装飾品は出土していないのである。

金杖の図案

黄金の杖

画像 : 金杖に施されている図案

金杖の上部46センチあたりから、非常に興味深い図案が刻まれている。

図案は大まかに分けて三つの部分に分かれている。

一番下の部分には二人の人間が彫られており、王冠をかぶっている。その耳は大きく垂れて耳飾りをつけており、少し吊り上がった目は大きく見開いている。この人物は特別な身分だったことが窺い知れる。

その上の2つの部分は同じ図案である。
合計4匹の魚と4匹の鳥が彫られている。魚の目のあたりから突き出た槍は鳥を貫いている様に見えるが、その鳥は鷹だと推測されている。

そして、魚と鳥というモチーフから、一人の人物が浮かび上がったのだ。

図案の意味するところとは?

三星堆遺跡から出土した「金杖」は、宗教や政治の権力を意味しており、杖の主人は大きな権力を持っていた人物に違いない。

そして研究の結果、古蜀国第三代王と言われる「魚鳧(魚鷹)」が、この金杖に関係のある人物であったと推定されている。

※古蜀とは古代の蜀のことであり、詳しくは以下参照
古蜀の最初の王は「目が縦」だった?
https://kusanomido.com/study/history/chinese/77475/#i-2

興味深いことに、この魚と鳥、そして矢の図案は四川省成都の金沙遺跡の出土品にもみられる。この魚と鳥は庶民が用いた図案ではないそうだ。一つの民族や国家のシンボルとして用いられたという。日本でいうところの家紋のような物かもしれない。

この金杖には、魚と鳥のモチーフの図案が2回彫られているということから、二つの社会的なグループを意味していたのではないかとされている。

三星堆遺跡で発掘された黄金の杖は、その技術の素晴らしさだけでなく様々なメッセージを現代へ届けてくれている。

 

アバター

草の実堂編集部

投稿者の記事一覧

草の実学習塾、滝田吉一先生の弟子。
編集、校正、ライティングでは古代中国史専門。『史記』『戦国策』『正史三国志』『漢書』『資治通鑑』など古代中国の史料をもとに史実に沿った記事を執筆。

✅ 草の実堂の記事がデジタルボイスで聴けるようになりました!(随時更新中)

Audible で聴く
Youtube で聴く
Spotify で聴く
Amazon music で聴く

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事

  1. 「中国で発見された最も古く高い銅像」 青銅大立人とは ~三星堆遺…
  2. 今も昔も歯は大事だった 【中国で最も古い歯磨きの歴史】
  3. 楊貴妃の悲劇的な最後【傾国の世界三大美女】
  4. 古代中国では「猫」はどんな存在だったのか? 【黒猫は縁起が良かっ…
  5. 「1ヶ月頭を洗ってはいけない」驚きの中華圏の産後ケア習慣「坐月子…
  6. 『古代中国の女性』なぜ、13歳か14歳で結婚しなければならなかっ…
  7. 西太后 【中国三大悪女】の贅沢すぎる暮らしっぷり
  8. 漫画『キングダム』で中国史を学ぼう! 春秋・戦国時代のリアルな…

カテゴリー

新着記事

おすすめ記事

優駿牝馬(オークス)の歴史を調べてみた

優駿牝馬(3歳オープン 牝馬限定 国際・指定 定量 2400m芝・左)は、日本中央競馬会(J…

お得情報について調べてみた

お得情報も日々更新中。 ANAマイルをためるならポイント老舗サイトのハピタスとちょびリ…

WordPressにアクセスカウンターを設置

今まではFC2のカウンターを使っていたが、WordPress用のプラグインでCount per …

北条早雲(後北条氏)が北条義時(執権北条氏)の末裔説って本当?『系図纂要』を読んでみた【鎌倉殿の13人】

NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で活躍している北条義時(演:小栗旬)。鎌倉幕府の重鎮として次々と政…

【怪奇物作品の先駆者】 仮名草子作家・浅井了意とは何者?その魅力を探る

江戸時代前期に活躍した作家、浅井了意(あさい りょうい)は、日本文学史において重要な位置を占める人物…

アーカイブ

PAGE TOP