曹操がいない世界線
以前『三國志』シリーズに登場するifシナリオを紹介したが、曹操が赤壁の戦いで命を落とす「華容道の変」がもし本当に起こっていたら歴史は変わったのであろうか?
ゲームである事を抜きにしても気になるところである。
今回は、劉備、孫権、曹丕、曹彰、曹植の5人から誰が一番天下に近いか、ゲームのシナリオを参考に考察してみる。
シナリオあらすじ
曹孟徳、赤壁に死す。赤壁の敗戦ののち、曹操は華容道にて関羽と相見えることなく落命した。
その混乱に乗じて、孫権と劉備と馬騰はそれぞれ進軍し曹操の旧領を得ることに成功。さらに曹操の遺児たちによる後継者争いが勃発し、平穏を取り戻しつつあった中原は、再び戦火に包まれる。
誰も見たことのない戦いの火蓋は切られた。(華容道の変)
赤壁での大戦において曹操が思いがけず落命し、その後継を巡って曹丕、曹彰、曹植、曹熊が争い始めた。これを好機と見た群雄は各地で勢力を拡大し、天下は再び混迷を深めていく。
乱世の奸雄の死は何をもたらすのか。(曹家分裂)
考察ルール
考察に入る前に、ルールを説明する。
1.各勢力の領地、武将の所属は『三國志14』の『曹家分裂』に準拠する
「華容道の変が起きたら」というテーマのため、本来なら13のシナリオ通りに進めるべきだが、考察の参考にするため、ほぼ同じ内容のシナリオで、かつ難易度が可視化された14の『曹家分裂』の勢力図を基に考察する
例を挙げると、徐庶は劉備の元に戻っているが、龐統は孫権に仕えている。
また、魏と呉の間で激戦を繰り広げた合肥は呉が奪っており、孫権は大きなアドバンテージを得ている。
2.勢力の勝敗は難易度とデータを基にしたランキング形式
NPCのオートバトルにして○○が最後に勝ったという事にしたら考察にならないので、領地、人材、資源(金、兵糧、兵数)を参考に考察して、天下に近い勢力をランキング形式で決める。
3.正史を基準に考察
武将のステータスも参考にはするが、演義を基準で考えると徐庶&孔明の軍師二枚看板に関羽、張飛、趙雲を持った劉備が兵力差を簡単に覆すチート勢力になってしまうため、正史の活躍や力関係を基準に考察する。
4.曹熊は除外
曹操の遺児として曹熊も登場するが、領地が1ヶ所のみであまりに勢力が弱すぎるため除外する。
天下に一番近いのは?
5位…曹彰
曹丕の弟、曹植の兄として名前が残る曹彰だが、後継者争いに加わらなかった事もあってどうにも天下人のイメージがない。(曹操の印綬を狙っていた事を示唆する記述もあるが、自身は武将として戦場で活躍する事を目標にしていたので、天下統一以前の問題である)
広い領地を継いだのはいいが、人材面の不足は否めない。
個人として天下を狙うのは厳しいと判断して最下位にしたが、武将として兄か弟のどちらかに着いてサポート役に徹すれば大きな戦力になっていたので、天下争いのキーパーソンとして無視出来ない存在である。
4位…曹植
曹彰との差はほとんどないが、武将の質を優先して曹植を選んだ。
正史では最後まで曹丕と後継者争いを繰り広げた曹植だが、自身が文官タイプで、めぼしい武将も合肥を奪われた張遼、李典、楽進しかいないのが厳しい。(曹彰は自身が武力面で最強と更に人材面に乏しい)
また、呉と何度も戦った重要拠点の合肥を孫権に奪われているため防衛面でも不安があるのが痛い。
曹丕に武力を警戒されていた曹彰を取り込んで連合軍になれば第2勢力に躍り出るチャンスはあるが、数だけ多い烏合の衆となってしまう恐れもあるので過度の期待は禁物だ。
3位…劉備
やはりというかベスト3には三国を建国した3人が残ったが、3位は劉備だ。
兵力が僅か31000とノミネートした5人の中で最も少なく、荊州南部を孫権に抑えられているため南部を攻めて戦力を拡大させる手段を失い、実質的な領土拡大が蜀を攻めるしかないのが痛い。(しかも、南と東から呉が睨みを利かせているため下手に動くと背後を突かれかねない)
ゲームであれば兵力を覆すチート武将達の力で孫権や曹丕とも戦う事が出来るが、現実は甘くはないだろう。
これだけ見たら曹植の下で4位でもいいのだが、不利な状況から蜀を建国した実績と、徐庶も加わった新生劉備軍の底力は無視出来ないので劉備が3位にランクインとなった。
2位…孫権
残るは曹丕と孫権だが、2位は孫権を選んだ。
赤壁の勝利に加え曹操死亡、更には合肥も奪取と追い風しかないように見えるが、実際に孫権が北伐を行ったらゲームのように簡単に進むだろうか。
筆者の考えを述べると、呉との国境を守りきった張遼、李典、楽進は、世界線が違っても呉の侵攻を許さなかったと思う。
合肥が魏と呉の重要拠点である事は間違いないが、合肥を失ったら魏は崩壊するのか、呉は魏の侵攻を許すのか、戦争はそんな簡単なものではない。
仮に曹植を滅ぼして残党を吸収したとしても曹丕とようやく肩を並べる戦力になった程度で、最大勢力である曹丕の壁は厚い。
と、少々厳しい評価になったが、戦力や領地、資源を見ても文句なしのナンバー2で、戦い方によっては十分天下を狙える。
劉備の項でも書いたが、この世界線の孫権は荊州の南部を抑えているため劉備の戦力強化、及び領地の拡大を防いでいるのが大きい。
孫権にとって現実的かつ最高のシナリオは南下して韓玄から魏延と黄忠を配下にして、その勢いのまま蜀を手に入れる事だろう。
周瑜が死の直前まで描いていた天下二分の計の青写真を実現させて、曹丕と天下を二分する大勢力となり、劉備と共闘すれば曹丕打倒も夢ではない。
1位…曹丕
曹操の死によって魏はバラバラになってしまったが、その混乱の中でも最も多くの武将と領地を抑えた曹丕が、天下へのポールポジションを握っている事に変わりはない。
劉備、孫権、馬騰、曹彰、曹植と四方を敵に囲まれており、苦戦が免れないのは確かだが、曹操から引き継いだ精鋭がそれで潰れるとも思えない。
許昌、洛陽、長安、鄴といった大都市を抑えているため収入や人材にも困らず、官渡で絶体絶命のピンチを迎えていた曹操よりも難易度は低い。
なお、このシナリオの前提として曹丕は曹彰、曹植と争っているが、彼らは兄弟喧嘩の末に滅亡した袁家の末路を実際に見ているので、兄弟共倒れになるより最後は仲直りして曹丕を中心に纏まると考える。
勿論、曹丕が曹操の領地と配下を最初から受け継いでいれば劉備も孫権も太刀打ち出来ない一強状態だったのだが、戦力が半減した初期状態でも天下を狙える遺産を残した曹操の人材コレクターぶりを思い知った。
歴史が残した別の世界線
今回は、華容道の変が起きたらというifの考察を行った。
自分の中では曹操の遺産を最大限に活かした曹丕が最も天下に近いという結論になったが、ifの考察に正解はないため、仲間割れが深刻化して袁家と同じ道を辿る世界線も十分に有り得る。(裏話をすると終始兄弟喧嘩を繰り返して孫権が得をするという世界線も考えたが、安易で面白くなさすぎたのでボツにした)
歴史が伝える事実として劉備、曹丕、孫権の誰も天下統一出来ていないが、曹丕が兄弟を纏めて、魏の建国を前倒しして、長生きしたら歴史が変わった可能性はある。
誰が天下統一出来たかという考察や議論に正解はないが、テーマとして非常に興味深いものである。
曹操のいない世界線は想像と考察一つでパワーバランスが変わるほど絶妙な力関係で、人の数だけ説が生まれるため、皆さんも自分なりの考察で誰が天下に近かったか楽しんでいただきたい。
この記事へのコメントはありません。