日本史

本当は怖い日本昔話 【桃太郎は捨てられて流された子だった?】

日本昔話は日本の民話であり、絵本やアニメでも広く知られている。

人々の生活の中から生まれ、時代が進むとその時代背景の影響を受けながら幾度も改変され現代のかたちに変化していった。そんな日本昔話の元の内容とはどのようなものなのだろうか。

ここでは3つの代表的な作品を紹介する。またそれぞれの話は発祥時期が室町時代〜江戸時代にかけて成立したものと言われている。

桃太郎

本当は怖い日本昔話

画像 : 桃太郎

桃太郎は、日本で有名な昔話の1つである。

その一般的な内容は

「川を流れてきた桃から生まれた桃太郎が、おじいさんとおばあさんに育てられ、成長するとおじいさん達からきび団子をもらい、それを使い犬・猿・キジをお供にし、鬼ヶ島で鬼退治をして財宝を持ち帰る」

という物語だ。

しかし元々の話では、桃太郎は桃から生まれていないのである。

実は明治初期までは「川から拾ってきた桃を食べて若返ったおじいさんとおばあさんの間に生まれたのが桃太郎」というものであった。

古来から桃は貴重な食べ物であり、若返りや不老長寿の効果があると信じられていたため、この伝承に因んだ内容だった。現代の形に変わったのは、1887年に固定教科書に採用されたことがきっかけであった。

当時の内容で広まっていた頃、「どうして若返ったおじいさん達に桃太郎が生まれたのか?」と不思議に思った子供たちの返答に困った教師や大人たちが続出したのである。

このような社会背景が理由にあり、今の話の内容に変更された。

・お供の動物の理由

桃太郎が鬼退治のために連れて行くお供は「犬・猿・キジ」となっているが、なぜこの3匹なのだろうか。

これには2つの説がある。

1. 昔の日本では貧しい地域に生まれて育てることが困難だと判断された子供は、生まれてすぐに川に流して処分してしまう「間引き」という風習があった。川を流れてきた桃太郎は間引きされた子供のことを表しているとされている。お供にした動物の犬・猿・キジはそれぞれ「居ぬ」「去る」「帰じ」と、間引きされた子供の悲しい状態を指した意味が隠されている。お供を連れることで間引きされた尊い命を少しでも供養しようとしたのだ。

2. 鬼は牛の角と虎の皮をまとった姿をしている。これは不吉とされる鬼門を表し、干支でいう「丑寅」の方角になる。この反対側である裏鬼門に桃太郎を置いて、裏鬼門から時計まわりにあるサル・トリ・イヌをお供にしたと考えられている。

有力説は後者とされているが、前者の説は悲しい風習が背景にあったことから語られるようになったとされる。

・もう1つの桃太郎話

桃太郎の話は、実は近親相愛の悲劇を語ったものだという話もある。

こちらの内容は都市伝説のような話だが、その内容はこうである。

桃太郎は成長するにつれて、若返ったおばあさんを愛するようになり、そしておばあさんも桃太郎を愛し相思相愛となってしまう。2人にとって邪魔なおじいさんを消そうとするが、おじいさんは山の神の力によって守られている。そこで2人は犬・猿・キジといった動物の命を奪い、呪術を手にしておじいさんを抹消してしまう。そして2人は末永く愛しあった

という話である。

おじいさんを「鬼」とし、おじいさんを抹消する目的を「鬼退治」と置き換えて考察すると、なんとも残酷な話が隠されている。

さるかに合戦

本当は怖い日本昔話

画像 : 猿と蟹の交換風景 wiki c

さるかに合戦の一般的な内容はこうである。

ずる賢いサルが自分の柿の種とカニのおにぎりを交換しようと持ちかける。サルはおにぎりを平らげ、カニは一生懸命に柿を育てるがやっと実った柿をサルはするすると木を登り勝手に食べてしまう。柿を取ってほしいというカニに、サルはまだ青く固い柿を投げつけ、カニに重傷を負わせる。

カニの子供達とその仲間の栗、蜂、牛のフン、臼が協力してサルをこらしめる。最後はサルがカニに謝り、皆で仲良く柿を食べた。

しかし元の話の内容はもっと残酷なものとされている。

まずサルがカニに重傷を負わせるという場面では、サルが投げた柿によってカニは死んでしまう。そしてその割れた甲羅から生まれた子ガニ達はサルへの復讐を決意する。

カニが殺されたことを知った先述の仲間達は、サルが留守の間に家に忍び込み、サルが帰ってくるとまず火鉢の中から栗が飛び出しサルに火傷を負わせ、次に蜂が薬箱から飛び出ると針で刺した。慌ててサルは外に逃げるが牛のフンで足を滑らせ倒れる、そこに屋根から臼が落ちてきて、サルは身動きが取れなくなる。

臼の衝撃と重さで意識がもうろうとしているサルの前に子ガニ達が現れると、そのハサミでサルの首を切り落としてしまう。

・仇討ちの風潮

このようにしてカニの仇を討つというのが元の話とされる。

古くから日本では、主君や家族に危害を及ぼした者には容赦なく仇討ちをする風潮があり、それが昔話に反映されていると考えられる。

明治時代に入ると仇討ちが禁止とされたため、内容も改変されて残虐性も薄れていった。そして昭和時代に入ると誰も命を落とさないという展開へと変わっていった。

かちかち山

本当は怖い日本昔話

画像 : かちかち山

かちかち山の一般的な内容は、こうである。

老夫婦の畑を荒らし捕まったタヌキが、おじいさんが出かけている間におばあさんをだまして縄を解かせると、おばあさんに大怪我を負わせて山へ逃げる。

帰宅し、事態を知ったおじいさんは仲の良いウサギにこのことを話すと、ウサギはタヌキをこらしめることを決意する。ウサギはタヌキに柴刈りを手伝ってほしいと誘い、タヌキの背負った柴に火打石で「カチカチ」と火をつける。タヌキは背中に火傷を負い苦しむ。

するとウサギは薬を塗ってやると言って、唐辛子入りの味噌を塗りつけてさらにタヌキを苦しめていく。その後ウサギは魚釣りにタヌキを誘うが、ウサギがタヌキ用に用意した大きめの船は泥で出来ており、泥の船に乗ったタヌキは船と共に海に沈んでしまいそうになるが、なんとか命からがら助かる。

そしてタヌキはおばあさんを苦しめた罪を反省する。

しかし元の話はこちらも残酷である。

冒頭でタヌキはおばあさんを杵で殴り殺してしまう。そして殺したおばあさんの肉を使って婆汁を作る。さらにタヌキはおばあさんに化けると、帰宅した何も知らないおじいさんに婆汁を食べさせた後で正体をばらし、「流しの下の骨を見てみろ!」と嘲笑い山へ逃げてしまう。そして先述したようにウサギはタヌキをこらしめるのだが、最後の海に船が沈んでいく場面では、タヌキは必死にウサギに命乞いをするのだが、ウサギは櫂でタヌキを何度も殴り、とうとうタヌキは溺れ死んでしまう。

このように昔話で正義が悪を成敗するという「勧善懲悪」を題材にした昔話は、元は残虐性が高かった。そのため改変され、さらに時代の影響も受けながら現代の話の内容へと変化していったのである。

ハッピーエンドだと思っている話でも、元の内容はあまり知らない方が良いものなのかもしれない。

 

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