森鴎外(もりおうがい)といえば明治時代を代表する大文豪です。
「文壇の神様」というあだ名もあり、夏目漱石と並んで二大文豪として多くの人々に愛されています。
鴎外は官僚でありながら、作家としても数々の名作を世に送り出してきた稀に見るインテリ中のインテリでした。
そんなスーパーエリートの鴎外の子供たちは、ちょっとユニークな名前を持っています。
森鴎外の経歴
まずは鴎外の生い立ちをさらっと見ておきましょう。
森鴎外は岩見の国(現在の島根県)で、藩医の子どもとして生まれました。
代々藩主のお抱え医師の家でしたが、お爺さんとお父さんは婿養子だったので、森家にとっては何十年ぶりかの男子誕生ということになります。
古風な家で久しぶりの長男ということもあり、幼いころから非常に大切に育てられました。
常に特別扱いをされ続け、普通の子どもならワガママなお坊ちゃんになりそうな環境でしたが、鴎外はそうなりませんでした。
鴎外は幼いころから論語や孟子、オランダ語、ドイツ語を学ぶなど非常に優秀で、将来を期待された神童でした。
外国語の単語は必ず起源まで調べて覚えていたと言われています。
学業ではなんと13歳で東京医学校(現在の東大医学部)に合格しています。
あまりに若すぎたので、このとき年齢を15歳と偽って入学したとされています。
ちなみに最年少で進学したため、男色(男性の同性愛のこと。当時流行していた)の対象として狙われやすく、身を守るために常に懐に短刀を忍ばせていたという逸話もあります。
東京大学医学部を卒業後は、陸軍軍医となり4年間ドイツへ留学。そのときの体験をもとに帰国後に短編小説「舞姫」を発表し、賞賛を受けました。
その傍ら軍人としても出世を重ね、陸軍医務局長(軍医のトップ)にまで上りつめるなど、まさにエリート中のエリートだったのです。
作家、官僚、医者という3つの肩書を持つ傑物でした。
子煩悩パパ・森鴎外の子供たちの一風変わった名前とは?
そんな学業、仕事でエリート街道を邁進し続けた鴎外は、私生活では2回結婚しています。
最初の妻、登志子(としこ)は男爵の家から嫁ぎ、何かと家柄を自慢するタイプでした。登志子の実家から付いてきた召使は鴎外を「殿様」、鴎外の弟たちを「若殿様」と呼んだそうです。
鴎外はそうした格式ばった生活に耐えられず、一年ほどで離婚。
再婚相手の志げ(しげ)は評判の美人で、彼女も再婚でした。
志げは後に「鴎外との新婚生活が最も楽しかった」と回想しています。
そうして2回の結婚によって3男2女の5人の子どもが生まれ、子煩悩だった鴎外は特別な愛情を注いだといわれています。
読書中であっても娘が傍に寄ってくると、必ず相手をしたそうです。
いつも葉巻を持っていましたが、娘を抱き上げたり膝に乗せたりするときは、灰が娘の上に落ちないよう、そっと葉巻を置いたというエピソードもあります。
そんな鴎外が愛した子どもたちは、なんと全員が今でいうキラキラネーム。
長男 於菟(おと)
長女 茉莉(まり)
次女 杏奴(あんぬ)
次男 不律(ふりつ)
三男 類(るい)
茉莉(まり)や類(るい)は今でこそ普通の名前ですが、於菟(おと)はさすがにフリガナが無いと読めない学校の先生泣かせの名前です。
ちなみに鴎外は4年間ドイツに留学して帰国しましたが、後にエリーゼという女性が鴎外を追いかけて来日しています。ですがこの子供たちはエリーゼの子どもではありません。
つまり純日本人でありながら、びっくりするほど国際色豊かな名前だったのです。
当時にしてはかなり奇抜な命名であったことは間違いありません。鴎外はキラキラネームの先駆け的存在といっても良いでしょう。
なぜキラキラネームだったのか?
鴎外はドイツ留学中、自分の名前をちゃんと発音してもらえなかった経験から、子供は国際的な名前にしようと考えたそうです。
自分のことも「パッパ」と呼ばせていたと言われています。
ちなみに鴎外の「子供たちが国際社会でも通用するように」という思いは孫にも引き継がれています。
孫たちの名前は真章 (まくす)、富 (とむ)、礼於 (れお)、樊須 (はんす)、常治 (じょうじ)…
孫の代までしっかりキラキラしているのです。
また、森鴎外の子孫にあたる小堀 鷗一郎(こぼり おういちろう)氏は、東京大学医学部卒業後、東京大学医学部付属病院第一外科・国立国際医療研究センターに外科医として勤務したお医者さんです。
他にも鷗外の子孫は、医者や学者など理系文系問わず様々な分野で活躍されている方が多いでのす。
おわりに
森鴎外と聞くと、歴史上の文豪のイメージが強いので「少しとっついにくい…」と感じた人もいるかもしれません。
しかし、子煩悩であったことや子供の命名などの逸話を知ると、より親しみやすく感じられたのではないでしょうか。
今後、森鴎外の作品を読むときは、また違った感動や興奮、驚きを感じられるかもしれません。
参考 : 小堀鷗一郎医師ご紹介|地域医療センター|堀ノ内病院 (horinouchi-hp.com)
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