戦国時代における花形武器と言えば、やはり槍でしょう。
猛将と呼ばれた武将たちの多くは優れた槍の使い手であり、本多忠勝を筆頭に歴史にその名を馳せています。
槍はさまざまな種類があり、中には6mの槍も存在したとされています。
今回は戦国時代の槍に焦点を当て、詳しく掘り下げていきたいと思います。
槍について
槍の構造について
槍は大まかに言えば、『穂』と『柄』の二つに分かれます。ここで言う『穂』とは、槍の先端にあたる刃部分です。
『穂』には様々な形状があり、これによって槍の種類が分類されることがあります。
次に『柄』は、槍を手で持つための部分です。『柄』の形状や長さによっても槍の種類が分類されることがあります。つまり、槍の種類を理解するためには、『穂』と『柄』それぞれの形状や長さがどのようになっているかを理解する必要があるわけです。
槍の歴史について
槍自体は『藤氏家伝』によれば「天武天皇が槍を床に刺した」という記述があることから飛鳥時代には存在し、古くは弥生時代頃から存在したと推測されています。
槍が戦場で一般的に使用されるようになったのは、鎌倉時代末期のおおよそ1300年頃とされています。
この時期は、元寇の影響により戦の様相と戦略が大きく変化し、槍を用いた集団戦術が急速に浸透していったと考えられています。
この流れは戦国時代末期になっても続き、火縄銃が広く使われる中でも「槍」は存在感を保ち続けました。
江戸時代に入ると、槍は大名の格式を象徴する武器として様々な槍術が発展していきます。
槍の種類について
『穂』の形状と種類
槍の刃にあたる『穂』の形状とその種類に焦点を当ててみましょう。一般的な区分としては以下のようになっています。
素槍: 長い柄に直線的な細身の穂を備えた槍で、穂の断面によって正三角形・平三角形・両鎬などがあります。別名で『直槍』とも呼ばれます。
大身槍: 穂が長くなった槍で、柄の形状は通常扱いやすさを考慮して短くなるか太くなります。例として、有名な『天下三名槍』の一つである『御手杵』は、刃長だけでも4尺6寸(約139cm)もあります。
銀杏穂槍: 穂先が鋭くなく鈍角なのが特徴です。
笹穂槍: 穂の形状が笹の葉に似ており、『天下三名槍』の一つである『蜻蛉切』もここに該当します。
菊池槍: 長い柄の先に『短刀』を取り付けた槍で片刃となっています。
椿形槍: 椿の葉っぱの形をした槍です。
正三角槍: 穂の断面が正三角形になっている素槍の一種です。
平三角槍: 穂の断面が平三角形になっている素槍の一種で、数が多いです。
両鎬槍: 穂の断面が両鎬になっている素槍の一種です。
袋槍: 穂の茎(なかご)が筒状になっており、穂の脱着が容易な槍。別名は『かぶせ槍』です。
鎌槍: 穂の側面に『鎌』と呼ばれる枝刃がついている槍で、複数の種類が存在します。相手の脚を切ったり、深く貫くのを防ぐ役割もあります。
片鎌槍: 鎌槍の一種で片方だけに鎌が付いた槍です。
十文字槍: 鎌槍の一種で十字に鎌が付いた槍。別名『両鎌槍』や『十字槍』とも呼ばれます。
牛角十文字槍: 鎌槍の一種で両方の枝刃がわずかに湾曲して牛の角に似た形状です。
下鎌十文字槍: 鎌槍の一種で両方の枝刃がわずかに湾曲し、柄の方に曲がっています。
千鳥十文字槍: 鎌槍の一種で鳥が飛び立つ様子に似ており、『千鳥』という名前がついています。
槍の長さと種類
次に『柄』を含めた槍全体の長さと使い方に注目し、その種類をまとめてみましょう。
物見槍: 約2m前後で、偵察兵が使用する槍。偵察活動中に目立たないよう短く設計されています。
用心槍: 2~2.5mで、護身用の槍。主に家の中で使用されることを想定しており、比較的短い場合が多いです。
馬上槍: 2~2.5mで、騎馬武者が使用する槍。馬の背丈に合わせた長さが求められ、槍の先端にある細い穂は馬上の戦闘に適しています。
士の槍: 2.5~3.5mで、個人用の槍。武将を含む個人が所持する槍であり、多様な形状や長さの槍が存在します。
持槍: 3.5~5mで、足軽向けの槍。柄を長くした槍で、長いものでは5mに達するものもあります。
長柄槍: 4.5~6.5mで、非常に長い槍。織田家では3間半(約6.3m)の長さの槍が使用され、上杉家や北条家では2間半(約4.5m)の長柄槍が使われていました。
これらの槍の種類や長さは、時代や用途によって異なり、戦国時代の多様な戦術や戦闘状況に合わせて様々なバリエーションが生まれました。
6mの槍が存在していたことは驚きです。
本多忠勝の槍として有名な『蜻蛉切』は、柄の長さが約6mあったそうです。しかし、晩年になるとさすがに力が衰えたため、90cmほど短くしたという逸話があります。
最後に
今回は槍の種類について解説しました。
穂の形状によってこれだけのバリエーションがあったことには驚かされますが、戦場で様々な状況に応じて槍が進化してきた証とも言えるでしょう。
参考 : 『藤氏家伝』他
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